演奏が終わった。披露宴会場がライブハウスみたいになっていた。涼しい顔して戻ってくるのは慎一郎さん。「し、慎一郎さん……」「ん?」着席してグラスのシャンパンを飲んでにっと笑う。悪い顔ってこういう顔だ。「ギター弾けたんですね。てか、歌、めっちゃ上手いんですね。で、あの、その……私、聞いてない!」「聞かれてないからな」「バンドやってたなんて知らないから聞かないですよ!何で黙ってたんですか⁈」「聞かれてないからな」「……もう」「どうだった?」高砂で耳元で囁かないで!「かっこよかったです……」自分でサプライズしておいて固まらないでよね。「続きまして。新婦、深月様のご実家では温泉旅行での卓球が恒例のイベントになっているそうです」さっきのドラムセットのある舞台とは反対側に卓球台が入ってきた。床が絨毯だからか、ガラガラと音はしない。スタッフがラケットとボールを持って入場。よし。「ただいまから、花嫁杯、新婦のご親戚の時国様、黒瀬様による卓球大会を開催致します」「え?」「よし」グローブを脱いで立ち上がった私を見て、慎一郎さんがまた固まった。「じゃ、慎一郎さん。私行ってくる」「え?深月?」お色直しはAラインのカラードレス。試着のとき、こっそり卓球の動きができるかどうかを確認していた。靴も低いヒール。うん、戦える。卓球台の前でスタッフからラケットとボール、そしてマイクを受け取った。軽く息を吸う。「──今日こそ祖母を、倒します!」「いいぞ深月!」黒瀬の親族席から声が上がった。「第1試合。対戦相手は黒瀬悠様です。深月様のお母様に審判をしていただきます」「悠兄ぃ。上着脱がなくていいの?」「深月相手に本気出さねえよ」「ふうん。負ける予定ってことでオッケー?」「ぎりぎりのと
Última actualización : 2026-10-14 Leer más