鳥羽のミキモト真珠島。目の前で白い磯着の海女さんが実際に海に潜る。すごいな。あんなに息が続くものなのか。パリ万博に出品された帯留『矢車』は帯留としてだけじゃなく、パーツを組み替えてブローチ・指輪・かんざし等、12通りに使えるという化け物ジュエリーらしい。先祖代々受け継いで使えばいいのに。ダイヤさんみたいに。「深月みたいに本気のジュエリーを普段使いできる人は少ないのよ」「私平気だけどな」ダイヤさん、自分を“本気のジュエリー“って言っちゃうのね。まごう事なき本気のジュエリーだけど。ミキモトのブランドショップ。……うん、いいお値段するね。「深月」「うん?」「どれが好き?」「さっきの『矢車』……すごいよね。あれこそ使えばいいのにね」竹取物語で出てきた蓬莱の玉の枝みたい、と呟いてふらふらとショップをまわる。ショーケースに並ぶ一粒パールのピアス。これなら冠婚葬祭でも仕事でも普段でも使える。可愛いのに万能。……って!結構なお値段するじゃん!ミキモトだから?うん、観賞用だね。あとで似たようなやつ買おうかな。ミキモトじゃないところで。「深月、こういうの好き?」「うん。いろんなところでつけられそう」「買おうか」「へ?」「旅の記念」「え、ちょ……結構なお値段……ちょ、慎一郎さん!」あっという間にスタッフを呼んでラッピングをしてもらっている。もうカード切ってる。ひええ。「はい」「ありがとう。嬉しいけど、こんな高価なもの」「深月に着けて欲しいんだよ」旅行から戻ってきた。道中で晩御飯も済ませて、互いの荷物ほどきが落ち着いたら慎一郎さんは私の部屋に来ると思ってた。「明日の仕事の準備があるんだ。ちょっと慎重にやりたい件だから」と来なかった。仕事って言われたら何も言えない。明けて今日。昨日の真珠のピアス、着けてみた。今日も慎一郎さんはクロセ製薬に行くって言ってたから、着けたところ、見せられるかもしれない。早く来ないかな。いつもは私の家に泊まっていたから、出勤する時も会社の近くまでランクルで一緒に来ていた。でも今日は朝早かったみたいで。久しぶりにひとりで電車に乗った。「おはようございまーす」第一営業課がざわめいている。いつも朝は落ち着いているのに。何かあった……?「深月」商品開発部に異動してまもない環が顔を出した。まだ就業開始時間にはあと30分
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-04 Mehr lesen