第43話 王妃から届いた二通目の手紙銀板から響いた三度の音が消えたあとも、会議室にいた誰もすぐには動かなかった。王都から伸びる黒い糸は、もう見えなくなっている。それでも、扉の外に何者かが立ち、こちらの返事を待っているような圧迫感だけが室内に残っていた。「セランを診療室へ戻せ。刻印の状態を絶えず確認し、本人の許可なく包帯を外すな」ケイルが命じると、二人の兵士が一礼した。セランは退室しかけたところで銀板を振り返ったものの、何も言わずに連れていかれた。昨夜までの彼なら、大司教から呼びかけられたことを恩寵だと受け取っていただろう。今は、あの音が自分を心配する呼びかけなのか、逃亡を防ぐための確認なのかさえ、信じきれなくなっている。ローデンは王都周辺の地図を机へ広げ、国境の監視を増やすべきだと提案した。教会がセランとの繋がりに異変を感じたのであれば、次に何を送ってくるか分からない。使者か、暗殺者か、それとも新たな命令を刻まれた人間かもしれなかった。「検問を強化しすぎれば、こちらが何かを掴んだと教えることになります」エララは地図の北側へ指を置いた。「公開裁問で不正が明らかになった以上、警戒を強めること自体は不自然ではありません。ただし、教会関係者だけを止めれば、セラン司教の証言から大司教へ辿り着いたと気づかれるでしょう。通常の密輸対策として、すべての荷馬車と旅人を同じ基準で調べてください」「時間がかかるぞ」「そのために、通行証を持つ商人と、緊急の医療物資を運ぶ者の確認口を分けます。裁問の影響で薬が不足している地域もありますから、物資の流れまで止めるわけにはいきません」ローデンが頷き、地図へ新しい検問所の印をつけた。ケイルは腕を組んだまま二人のやり取りを聞いていたが、エララが三つ目の指示を口にしかけると、その肩へ手を置いた。「昨夜、眠る前に作戦を立てるのは二つまでと言っていたな」「今は朝です」「屁理屈を覚えたか」「あなたから学びました」「俺は、お前ほど真面目な顔で屁理屈を言わない」ローデンが地
Last Updated : 2026-10-21 Read more