Todos los capítulos de 仮面の告白〜甘美な誘惑に堕ちたわたしたちは、甘い蜜から逃げられない〜: Capítulo 41 - Capítulo 50

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れいな、骨抜かれる③

「涼介、今日は帰って」「え。なんで」お風呂から上がって身支度を整えた後、私は涼介のゲームの手を止めさせようとした。不機嫌になったけど、私がいつもと雰囲気が違うことに気付いて渋々ゲームを止めた。「何で帰んなきゃいけないんだよ。折角来てやってるのに」「頼んでない」「あ?」「ここは私の家。この部屋の家賃も、光熱費も食費も全部、ぜーんぶ!私が払ってるの!」「何だよ金かよ」だるそうにテーブルの上の財布から万札を1枚抜き取って私に差し出す。「これで文句ねえだろ」ぜんっぜん足りないけどね⁈たかだか万札1枚で私が納得すると思ってる涼介に、なんだか苛々してきた。「涼介ってさ……」「何だよ。早くゲームの続きやりたいんだけど」「私のこと舐めてるよね」「は?」涼介が立ち上がった。立ったまま話す私に距離を詰める。「何だよお前。随分と反抗的だな」「反抗的なんかじゃない。正しい主張をしてるの」「何だとこの……っ」頬と肩に鈍い痛みが走った。叩かれた勢いで壁にぶつかったんだ。「お前は俺に尽くしてりゃいいんだよ」「そんなのおかしい。帰って!今すぐ出てって!ここは私の家なの!」「黙れ!」また殴られる。その直後、玄関のドアがドンドンドンッと叩く音がした。「檀さん、またうるさいと苦情が来てますよ。開けてください」弾かれたように玄関に走ろうとする。腕を掴まれて辿り着けない。「痛っ……」「出なくていい」「嫌だ!助けて!助けてください!いやあっ!殴られる!」力の限り玄関に向かって叫んだ。「警察だ!開けなさい!」警察という単語が聞こえた瞬間、涼介の私を掴む腕の力が緩んだ。咄嗟にドアの鍵を外してドアを開けた。そこには制服を着た警察官と……絢斗がいた。「え、絢斗……?」「騒音があるということと、女性が暴力を受けているという通報がありました。間違い無いですね」「は、はい……」どうして絢斗が警察官と一緒にいるの?騒音で通報はわかるけど、涼介から殴られた話なんて私、絢斗にしていないはず。「署までご同行願えますか?」「何で俺が……れいな、お前、その男と」舌打ち混じりに私と絢斗を睨んだ。ぶつぶつ言いつつも、おとなしく靴を履いていた。「僕はただの生徒です。壇先生の腕にあざが見えたから交番で相談してただけですよ」冷たい目で涼介を見下ろす絢斗。
last updateÚltima actualización : 2026-09-28
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れいな、骨抜かれる④

──それでも朝はやって来る。涼介とのことが警察沙汰になり、事情聴取を受けてパトカーに送ってもらって帰宅した頃には日付が変わっていた。でも平日ど真ん中。警察が関わろうがそうでなかろうが、朝になったら出勤しなければならない。事情を話せば休みも許されるのかもしれない。でもその事情を鈴木に聞かれた日には、通常の3倍以上のお説教&嫌味を聞かされるという苦行が待っている。それを喰らうぐらいなら、寝不足に耐えるぐらいするよ私。奇しくもその日は絢斗のいるクラスでの授業があった。授業開始の挨拶をした瞬間、絢斗が私に微笑んだ。メンタル弱ってるときは顔面偏差値高過ぎる人の微笑みを喰らってはいけない。心臓全部持っていかれちゃう。それもいいかもしれない。鈴木の嫌味100%の微笑みの何万倍も、絢斗の微笑みの方がメンタル回復にはもってこいだ。仕事を終わらせて、校門を出たあたりでスマホが震えた。『れいなちゃん、今日もあの家に帰るの?』絢斗とは、あのキスの後に連絡先を交換していた。この時点で私、先生としてアウトなのかもしれない。絢斗とキスして、家帰ったら涼介からDV喰らって通報してもらって事情聴取されて。昨日は忙しかった。『帰るしかないから帰るよ?』『あの彼氏、また来るんじゃないの?危険だよ』『接触禁止令を出してもらったから大丈夫だよ』『俺も行く』『受験生は勉強しなさい』冷たいかな。でも線引きは大事。このまま涼介と別れられたとしても、ずるずると絢斗と付き合うのは違う。そもそも私達、教師と生徒。一発アウト。私の身分が社会的に壊滅しちゃう。『送るだけ。いや、俺れいなちゃんの家で勉強すれば良くね?』『目撃されたら一発アウト。なるべく早く引っ越しするから大丈夫』引っ越し……しなきゃなあ。LINEも電話もブロックした。あとは涼介の知らない部屋に引っ越せばお別れできる。別れましょう、はい別れましょうっていう別れではないけど、涼介に正攻法は通じない。フェイドアウトがきっと一番安全。『昨日の今日だろ。なあ、絶対危ないって』『大丈夫だってば』スマホを閉じる。これ以上議論したって、結論は同じ。受験生である絢斗の時間を、これ以上使わせるわけにはいかない。駅からいつも通りに自転車に乗る。家に着いたらスマホで新しい物件探さなきゃな。私、被害受けた側なのに、どうしてこうも大変な思いをしな
last updateÚltima actualización : 2026-09-28
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れいな、骨抜かれる⑤

「檀さん、そちらの男性は」「れいなちゃんの保護者です」保護者って……ある意味保護してくれてるのは間違いないんだけど。「失礼を承知で申し上げますが、今回は男女のトラブルですよね。そちらの男性が檀さんといるのを目撃された場合、激昂する恐れがあります」「俺が守るから大丈夫です」田中さんは私の顔を見た。私は首を微かに振った。「檀さんが警察を呼ぶに値すると判断されたから私はここに来ています。そうですね……あなたはそこのロミオで待機していてもらえませんか?追い払ったら檀さんから連絡してもらえれば」田中さんが目で示した先に、駅前の喫茶ロミオがあった。涼介に顔が割れてる絢斗は、涼介と対面しない方が絶対にいい。「でも俺……!」「ね、絢斗。お願い」「パトカーで連れて行きますので。大丈夫、信じてください」パトカー?今ここから見える範囲にパトカーはいない。きょろきょろと見渡す私に、田中さんが「もう一人の警察官が待機しているんです。パトカーが見えたら逃げてしまう恐れがあるので」と説明してくれた。「わかりました。れいなちゃんを、お願いします」深々と頭を下げる絢斗。涼介は私の為に、こんな風に頭を下げてくれたことがあっただろうか。涼介の確保はあっという間だった。前日の深夜に接近禁止令が出たのに、全くもって無視していた涼介は任意同行を求められた。カッとなりやすい涼介はやはり激昂し、田中さんに掴みかかったところを公務執行妨害の現行犯で逮捕された。連れて行かれたのは涼介だけだった。私に対する事情聴取は私の部屋に行くまでの道すがらに田中さんに話した内容で良しとされたらしい。『終わったよ。彼氏、さっきの刑事さんに掴みかかって公務執行妨害やらかして連れてかれた』『終わって良かった。そっち行っていい?』『帰った方がいいよ。受験生じゃん』待っててもらったのに。電車乗り継いでここまで来てもらったのに。冷たいかな。でも、ここで絢斗に甘えるわけにいかない。『それは無理。もう着いたし』──え?着いた?顔を上げてドアの方を見たのと同時にインターホンが鳴った。覗き窓から見たら最強レベルのイケメン……つまり絢斗がそこに立っていた。「え、絢斗?どうして」「れいなちゃん……良かった」ドアを開けて絢斗の顔を見上げた。不安と安堵がごちゃ混ぜになったような、泣いてしまうんじゃないかって
last updateÚltima actualización : 2026-09-29
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れいな、骨抜かれる⑥/ほのか、苦笑い/第三稿

我慢?我慢、とは……?あ、これね。私の太ももに硬くなった絢斗が当たっていた。 「でも、私、絢斗とそうなったら捕まっちゃうよ。淫行扱いされちゃう」 「俺からだったら問題無いでしょ」 「でも絢斗未成年」 「もうちょっとで18」 くすくす笑いながら、唇を重ねたり離したりしながら、私を包む力が強くなってきた。リップ音と荒い息が混ざり合って、もう止められない。 腕を絢斗の首に絡める。それを合図に、絢斗の手のひらが私の膨らみを包んだ。先端が硬くなっていく。理性がとめどなく溶けていく。 「ね、部屋、入って」 「もう俺、止められないよ?」 「止めなくていいの。ね、早く襲って?」 靴を脱いで部屋の奥のベッドに絢斗を連れて行くはずだったのに。ゆっくりと押し倒された私の身体は床のラグに縫い付けられた。 言葉はいらなかった。互いの息づかいと衣擦れと夜の帳が、この世界を包んでいた。服を脱いだ絢斗の身体は程良く筋肉がついていた。 「れいなちゃん……綺麗だ」 「……そんなに、見ないで」 月明かりに照らされた、私と絢斗。私達を遮るものは何も無い。絢斗から与えられる快楽に身を任せていた私を、更なる刺激が脳天を貫いた。 「はあっ……けん、と……」 「れいな……俺、幸せ」はいアウトー!それ淫行じゃん。捕まるじゃん。どうしよう……。未成年側から襲ったなら淫行にはならないらしいとは、さっきスマホで検索した情報にはあったけど。いいのかこれ記事にして。でもいいか。私が責任取るんじゃないし。このふたりに会えって言ってきたのは編集部なんだし。このふたりの関係がどんなのかわかってる上でインタビューの場を設けてるんだから問題無いよね?やだよ?私ネット上で消されるの。炎上、ダメ、絶対。何だかんだ刺激的……。編集部も美味しい人達連れてくるなあ。世の中って私が知らないだけで結構こんな話多いわけ?私が知らないだけ?何というか波瀾万丈な世の中。いかに自分がぬくぬく生きてきたかがよくわかる。さあ、ここまでをどう書こうかな。まだまだ美味しそうな続きがありそうな雰囲気ムンムンだけど、記事にまとまらなさそうだから一旦ここで切ろう。またPV上がるかな?今回は教師と生徒、禁断の愛。ヒモ彼氏からのDVというおまけ付き。新卒だからって、いびってくるお局様もいらっしゃったか。ひゃあ。檀さんよく耐え
last updateÚltima actualización : 2026-09-29
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100%の幸せって?/あなたを守る、強さが欲しい。①

ふっふっふ……。今回のPV数も上々。いいね、私。才能あるんじゃない?インタビュアーとして、ライターとして、そろそろ売れっ子を名乗ってもいいんじゃないこれ。桐生くんに清い話を聞かされたときには「あ。今回お蔵入り決定……」とか思ったけど。そうでもなかった。あのふたりがちゃんとやることやってて良かった。いや倫理的にはたぶん良くないんだけど。たぶん。私の仕事的にはこの展開であった現実がありがたい。麻子さんと岳さんの恋は、最後には悲恋になってしまった。麻子さんが岳さんの子を秘密裏に出産して以降、彼女がどうなったかはわからない。岳さんも今はどうしているのか。やはり不倫の最後は幸せではないのだろう。旦那さんという犠牲者がいるなら、100%の幸せを築くっていうのは、無理があるのだろう。今回のふたりはどうだろう。檀さんは結婚しているわけではない。独身だ。お相手であるところの桐生くんは高校生。でも3年生。一年間ふたりがうまいこと隠し通せれば、来年の春にはふたりは自由の身。檀さんは職場にオープンには出来ないけど、万が一目撃されても後ろ指を差されることは無いだろう。たぶん。お局様が大人しくしてれば、だ。仮面の告白だけれども。でも幸せになれそうなふたりなら、どうにかして幸せになって欲しいって考えるのは勝手だろうか。「ほのか、また記事出したんだ」スマホ片手に健次郎がリビングにやってきてソファの私の隣に座った。今日もうちの旦那様は美空と博樹のダブル寝かしつけという難易度高めのミッションを無事にやり終えたようだ。「もうチェック済み?早いね」「奥さんの記事をYahoo!で見つけるって新鮮だよ」「ふふふ。あなたのヨメ、優秀でしょ」「ああ、優秀だ。……なあ、こんな話聞いてると、もう刺激はいらなくなっちゃうもの?」「どういうこと?」珍しく健次郎が口ごもる。言いたいことをズバズバ言うこの人がこうなるなんて、明日は雪かな。「その……関係持つ話も聞くんだろ?」「そうだよ」どうしたんだろう。なんでこの人が照れてるんだろう。「結構赤裸々に、聞かされるの?」「赤裸々な人とそうでない人がいるよ。前の不倫カップルの女性はそれはそれは赤裸々に……」麻子さんはものすごく具体的に話す人だった。インタビュアーなのに途中からやってられない気分になってお酒飲みたくなった記憶がある。「今回も
last updateÚltima actualización : 2026-09-30
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あなたを守る、強さが欲しい②

 名門校って、自分で言うのは草だけど、でもステータスになっているのは間違いない。ああ笑えよ。笑うがいい。でもな、俺は守りたい人のためなら、自分の持つ全ての武器は使うんだよ。使えるもんは全部使う。全てを差し出して、俺はれいなちゃんを守る。警察に相談して良かった。実際れいなちゃんは本当に暴力を受けていた上に、その彼氏のせいで苦情まで来ていた。これは俺だけでは何もできなかった。彼氏に間男扱いされて、俺も一緒に殴られた上に、何か名誉を傷つけられていたことだろう。女に手を上げるような姑息な男はそれぐらい簡単にする。俺の人生で、今回ほど警察に感謝したことは無い。その翌日、彼氏はれいなちゃんの家に訪問していた。咄嗟に彼女が通報していなかったら危なかっただろう。昨日の今日で、接触禁止令をガン無視する元彼。やば過ぎるだろう。心配でれいなちゃんのところに行こうとしていた俺は、れいなちゃんに偶然会えた。でもその元彼退治には連れて行ってもらえなかった。理由は簡単だ。誰も言わないけど、俺が足手まといになるからだ。もうすぐ18で成人扱いしてもらえる割には、現実の俺は無力だ。好きな女ひとり、自力で守り切ることすらできない。今の俺にできることって何だろう。腕力だけでは彼女を守れない。結局のところ、またステータスか。偏差値高い大学行って、それを武器に就職してからじゃないと、俺はれいなちゃんを守る男としてエントリーすらできない。「ねぇ絢斗ぉ。私数学わかんないから教えてよお」ツレの女がつるんでるやつだから仕方ない。この香水のせいで俺の集中力阻害されてるけど、今この瞬間だけだ。我慢だな。「どこ」この女と話してる時間すら惜しい。塾に行くまでの間に問題集のこの部分は終わらせておきたい。あ、ちょっと。アップはやめてもらえませんか。厚化粧のアップは勘弁してください。しかし化粧はケバいけど勉強するんだこいつ。でもそうか。ある程度勉強する人間じゃないと、そもそもこの高校に入れていない。「えっとお。たくさんあるからあ。放課後、図書室で教えて?」「放課後無理。塾の講義時間ギリだから」ていうかお前も無理。香水も無理。化粧濃いのも無理。なのに、れいなちゃんの香水は好きなんだよな。れいなちゃんの化粧も嫌じゃない。何なんだろな。俺が惚れてるから?こないだ、元彼を警察とともに追い払った──俺は全く役に立た
last updateÚltima actualización : 2026-09-30
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あなたを守る、強さが欲しい③

れいなちゃんの元彼は大人しくしているようだ。スマホの全ての連絡手段をブロックしたと、れいなちゃんは言っていた。彼女の新居も当然ヤツには伝えていない。その上接近禁止令。うん、完璧。これでれいなちゃんが元彼のせいで苦しむことは無くなった。授業中に騒いでいた奴らは俺が目を光らせているから問題無い。本当は鈴木も何とかしたい。でも俺、鈴木と全く接点が無い。下手に近づいて、れいなちゃんと何かあるって勘づかれたらまずい。許されるなら、れいなちゃんをあのアパートの部屋に閉じ込めて、全てのストレスから彼女を守りたい。しかしそれを、世の中では軟禁と言われてしまう。そして俺にそんな力はまだ無い。俺に力があれば。腕力だけじゃだめだ。財力、権力も、れいなちゃんを守るために必要ならば身につけてやる。じゃあどうする?腕力には筋トレ?筋肉は裏切らないからな。筋肉を限界まで追い込むって快感以外の何ものでも無い。それをれいなちゃんに話すと変な顔をされる。「この子、何言ってんの?」って顔に書いてある。財力と権力。ああ、考えたくないけど、結論として出したくないけど。どう考えても、今の俺に出来る財力と権力の身につけ方って勉強なんだよな。はい、頑張ります。れいなちゃんを守れる、れいなちゃんに相応しい男になる。それが俺の、最近の全てに対するモチベーションだ。「ねえ、絢斗お。ここ、わかんないんだけどお」また来た。今日何回目だよ。何なら今日数学ありませんけど。聞くなら理系のやつに聞けよ。ここが文系クラスだとこいつはわかってないんだろうか。「解説読めよ」「だってえ。解説短いんだもん」「俺忙しいから理系のやつに聞いて」「理系の子の説明わかんないんだもん」やべえ。こいつ、本当に入試受けたんだよな?あ、内部進学組か。この翠嶺高校は、高校からの外部進学は偏差値が高いので有名だが、中等部からの進学組は、落ちこぼれていても高等部に進学可能だ。裏で親が追加課金しないといけないという噂だが。律樹《りつき》に視線を送る。目が合う。まばたきを数回する。伝われ。俺が助けを求めてるって、伝われ。まじ助けて律樹。俺をこのケバ嬢から解放してくれ頼むから。「白石さん」ケバ嬢が律樹の方を振り返る。振り向いた瞬間の、傷んだ長い髪からくっさい香水が臭った。香水ってさ、においって本来匂いだよな。でもこのケバ嬢から出
last updateÚltima actualización : 2026-10-01
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あなたを守る、強さが欲しい④

律樹の食べっぷりは本当に気持ちがいい。俺もよく食べる方だけど、律樹の食欲と食べるペースは俺の倍だ。律樹の母ちゃんお手製のお弁当はいつも二つだ。早弁用と昼食用。俺も早弁するときあるけど、基本、店のまかないだ。律樹の弁当もまかないなんだそうだ。律樹の家はデカ盛りの店を経営している。互いに家が飲食店であることがわかってから、特に仲良くなった。「今日も早えな」「普通でしょ。お前、今日は餃子と唐揚げしか食わねえの?」「ちょっとな」「ふーん」律樹は必要以上に干渉しない。楽だ。大抵は、「何があるんだよ」としつこい追及が始まるもんだ。さっぱりしたこいつの性格のおかげで、俺は割と快適に過ごせている。しっかし、お冷《ひや》を入れる手つきが慣れてんな。まだ高校生である俺たちは、お冷ひとつ入れるにも慣れているやつとそうでないやつの差が激しい。お冷も入れられないやつらって、一体どうやって生きてきたんだか。全部親にやってもらってたのだろうか。律樹が特盛ラーメンを食べ終える頃。れいなちゃんが店の入り口を開けた。「こんばんは……」ちょっと恥ずかしそうな顔で、れいなちゃんはいつも入ってくる。いいね。今日も恥じらいひとつ、頂きました。「ん?あれ、壇先生じゃね?」「れいなちゃん!こっち」軽く目を見開いた彼女は、カウンター席の俺の隣に当然のように座った。「えっと……菅原、くんも一緒だったんだ」完全オフの彼女モードから瞬時に先生モードに戻った。戸惑った顔も良かったんだけどな。って俺、れいなちゃんに律樹がいること言ってなかったか。やば。後で絶対怒られるやつ。ほら、れいなちゃんの背後に炎がほんのりと……見える気がしている。「お前、何で壇先生と……」「あー……えっと」バラしていいのか?いやダメだろ。でも律樹だったら黙っててくれると思う。ただカミングアウトした場合の、俺の隣に座るれいなちゃんの戦闘力が53万を超えてそうな気がする。やべえ。スーパーサイヤ人並みの圧を愛しのれいなちゃんから感じる日が来るとは。「付き合ってんの?」「え、いや、その」隣からの圧が更に増えた。れいなちゃんの方を向けない。彼女が今どんな表情してるかなんて、考えただけで恐ろし過ぎる。「先生、大丈夫ですよ。俺、口固いから」実際律樹は言いふらすようなやつではない。警戒心強めの俺が心許して話せる数少ない人間だ
last updateÚltima actualización : 2026-10-01
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敵は近くにいる①

俺たちの秘密を知っている人がいる。それが自分の信頼出来る人であるっていうのは安心感がすごい。茶化さず騒がずリークしない。自分だけで抱えるのはやっぱりしんどかった。れいなちゃんの隣に立つには、彼女を守れる強い男でないといけない。ひとりで強い男を目指すのもかっこいいけど、でも仲間がいた方が心強い。れいなちゃんはどうだろう。俺たちのことを話せる、口の固い友達はいるんだろうか。れいなちゃんにもいるといいな。俺だけ仲間がいるのってなんかずるいからな。律樹は一瞬店の外に出ると、スマホ片手に戻ってきた。親に連絡でもしていたのだろう。「俺、先帰るわ。絢斗は先生送ってくんだろ?」「ああ。ボディガードだからな」「そのボディガードが一番危険な奴だけどな」「うるせえ」「あのさ、絢斗」「ん?」ふざけた会話をしていたのに、急な真顔。どうした律樹。「俺が店出てから10分くらいは、まだ出ない方がいい」「え、どういう」「いいから」じゃ、とだけ言い残して、律樹は帰った。「じゃあ、私たちも」と続こうとする彼女を何とか留めなければ。理由はわからないが。「ごめん、れいなちゃん。店の奥に忘れ物したから、ちょっと待ってて?」「忘れ物?うん、わかった」忘れ物なんてしていない。どういうことだ、律樹。明日、詳しく教えてもらわないとだな。「え……?」「昨日は俺が追い払ってやったけど、お前ら、本気で気をつけた方がいいぞ」昨日の律樹の忠告。10分くらい経ってから店出ろってやつ。理由を聞いて愕然としたのと同時に腑《はらわた》が煮え繰り返った。満珍軒の近くでケバ嬢──名字なんだったっけ?白井だっけ?──がウロウロしていたらしい。「白石の家ってあの周辺じゃないだろ?むしろお前の家とは逆方向」「……ああ、白石ね。白井じゃなくて」「お前なあ……もうちょっと自覚しろよ」律樹の話だと、こういうことだ。白石は昨日俺と律樹の跡ををつけていた。満珍軒に入ったところまで見て、自分も入ろうかどうか迷っていたら檀先生が入っていくのを見て、入るのをためらった。それで俺が店から出てくるまでウロウロしていたと。「満珍軒がお前の家だってことはバレてないらしい。飲食店で良かったな。檀先生が店に入ったことも、とりあえず不自然じゃないしな」「そうかそれで昨日、あのLINE……」律樹が出てから10分後に出ろ
last updateÚltima actualización : 2026-10-02
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敵は近くにいる②

下駄箱で、それまで一緒に歩いていた律樹が女子に呼び止められた。名前は知らないが、律樹の好きそうな正統派美少女。律樹は進路委員をやっていて、その用事っぽい。「俺、先行ってるわ」「ああ。後から行く」後から行くと言いつつ、律樹の視線はその美少女に注がれている。わかりやすい奴め。「俺、ちょっと急いでるから。また明日な」「あ、ああ……」申し訳なさそうだけど、嬉しそうなのがバレてんだよ。正直者め。外靴に履き替えて外に出た。背後から、鼻にかかった、たるい声が聞こえた。いや、聞こえていない。きっと気のせいだ。振り返るな。振り返ってはいけない。「ねえ、絢斗お。待ってよお」振り返らない。俺、こいつの相手をする暇は無い。「ねーえ?」鞄を持っていない方の手……というより腕か。腕にケバ嬢は俺に無断で抱きついてきた。うわー……。やめて欲しい。「離せよ」「やだー。絢斗、こうでもしないと振り返らないんだもん」無理に俺の腕をケバ嬢のあるのか無いのかわからないぐらいの小さな胸に押し付けようとしている。「やめろって!」強引にケバ嬢の腕を剥がす。「えーやだいたーい」強くはやっていない。騒がれたら面倒だから、痛くない程度にしている。こいつに騒がれたら俺が悪者にされる。冤罪、ダメ絶対。無表情を全力で作る。いや、頑張らなくても勝手に無表情になる。「やだじゃねえよ。俺が嫌だ」「えーこわーい。ねー絢斗、一緒に帰ろう?」帰ろう?じゃねえよな。強制的に一緒に帰らせようとしてるよな。そうはいかない。このケバ嬢の甘ったるい声は俺には通用しないと、遺伝子レベルで理解させる必要がある。しかしどうやって?着信がある振りして逃げるのは簡単だ。でもそれはただの延命措置にしかならない。どうするか。……思いつかない。仕方が無い。「……ん、ちょ、待って」「え?何、電話?」「ああ……お、どうした?……ああ、そうだけど……」着信なんて来てない。渾身の演技中だ。俺、俳優目指せるかも?「あー……それはまずいな。ああ、そう……ごめ、ちょっと待って」「白井、俺、急用。戻んないと。先行って」「え、私待ってる。てか私、しらいし……」「時間かかるから。……ああごめん、こっちのこと……」電話の演技は限界があるんだよ。早く消えてくれ!なかなか消えないケバ嬢を置いて、来た道を戻る。勿論大股で
last updateÚltima actualización : 2026-10-02
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