仮面の告白〜甘美な誘惑に堕ちたわたしたちは、甘い蜜から逃げられない〜

仮面の告白〜甘美な誘惑に堕ちたわたしたちは、甘い蜜から逃げられない〜

last updateLast Updated : 2026-10-18
By:  藍沢咲良Completed
Language: Japanese
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主婦の里崎ほのかは、夫の健次郎にライター業を反対されたことを根に持ち、彼に内緒でゴシップ記事を書く「こたつライター」として活動している。いつか夫を見返すほどの収入を得ることを目標とする彼女のもとに、ある日、不倫当事者へのインタビューという仕事が舞い込む。最初の取材相手は、大学生の八神岳と、彼が恋に落ちた人妻の谷口麻子。2人の赤裸々な告白をもとに、禁断の恋の記事を書き上げる──。ドロドロな大人のラブストーリー。

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インタビュー、開始!
高級ホテルのラウンジ。夫と式を挙げたホテルもいいホテルだったけど、ここもその類の場所だ。最後にこういうところ来たのいつだっけ……?結婚記念日の食事だったっけ。 窓のから日本庭園が見える。その向こうにはビル。都会の谷間のオアシスを見ながら優雅にお茶をする、そんな場所に美空をベビーカーに乗せたままやってきた、場違いな主婦が私。 今日の取材対象は不倫の当事者。……一歳の美空に聞かせる内容でないのは間違いない。幸いにも現在美空はとっても眠そう。このまま寝ててくれればインタビューにも集中できるし、不倫話を聞かせずに済む。 ベージュのジャケットに黒いインナー、グレーのパンツのガタイの良い男性と目が合った。会釈され、今日の取材対象だと気付く。 「八神さん、でしょうか」 近づく私にその男性がうなずく。 「はじめまして。株式会社ミライノートのライターをしております、里崎と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。」 「よろしくお願いします」 名刺を差し出した。彼は受け取るだけ。大学生と聞いている。当然、名刺は持っていないわけだ。 「お座りください。すみません、娘も同行させておりますが、よろしいでしょうか?」 いいですよ、と薄く微笑んで八神さんはラウンジのソファに着席した。八神さん、着席しちゃったか。不倫話を聴くには、ここはオープン過ぎる。近くを歩いていたスタッフと目が合った。「里崎で予約してあるのですが。個室を……」「里崎様ですね。確認致しますので少々お待ちください」スタッフがイヤホンで何やら連絡を取っている。少し待った後、奥から別のスタッフがやってきた。「里崎様、ご案内致します。そちらのお客様も……?」「はい、連れです」立ち上がった八神さんと連れ立って個室に入る。うん、ここならどれだけ衝撃的な不倫話が始まっても、どんとこい、だ。個室代は出版社から経費で出してくれる。ありがたい。自腹だったら原稿料とトントンになっていたかもしれない。このホテルのラウンジで個室を予約するには、アフタヌーンティーの注文が必須だ。取材に便乗してアフタヌーンティーが食べられるなんて。優雅な仕事。もしかして楽勝?八神さんのコーヒーと私のアールグレイ、見たことある感じの3段のセットがテーブルに届いた。さあ、ここからだ。「召し上がってください。食べながらお話伺います
last updateLast Updated : 2026-08-31
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八神 岳(やがみ がく)、回想す①
──柔らかく笑う人だ。それが、彼女の第一印象だった。 喫茶ロミオ。俺のバイト先。ホールに立ったり、キッチンで作ったり、忙しい職場だ。職場って言葉、ちょっと格好いいよな?今の俺、格好良かった? こんな俺の調子に乗った言葉にも、麻子さんは笑ってくれる。麻子さんは俺の女神だ。いけない、麻子さんとの馴れ初めか。 麻子さんは、ロミオの常連だった。毎週水曜と金曜の16時頃、1時間だけお茶をする。スマホをいじっているときもあれば、新聞や雑誌を読んでいることもある。かと思えば、何やら勉強しているときもある。問題集と睨めっこしていたから、何かしらのの試験を受ける予定でいるらしい。 大学の講義は午前中であることが多い。だから俺がシフト入っていると、いつもあの長い、腰まである綺麗な茶色い髪と涼やかな目元を拝むことができる。あの人、細身かと思ってたら出るとこ出ていて……ごめんなさい、男の本能で見てました。無理ですよ、見ないとか。 あんなに綺麗な人が、この世に存在するなんて。それも、俺の目の前に現れるなんて。奇跡ってあるんだな。なのに、何でだよ。何で、あの人の左手の薬指に、指輪なんてはまってるんだよ。 あの人の指にはな、俺が近い将来贈るであろう指輪の方が、絶対に似合うんだよ!店員は気安くお客に声は掛けられない。でも、麻子さんに俺はどうしても声を掛けたかった。声を掛けたいなんてもんじゃない。はっきりと、俺は、麻子さんが欲しかった。性欲?そんな下品なものではない。運命、だよ。運命。俺、麻子さんの微笑みを見た瞬間に「ああ、この人だ」って悟っちゃったわけ。その辺のどうでもいい女達なんて、足元にも及ばない。比べるなんて、失礼過ぎる。俺は考えた。あの女神を手に入れる方法を。うんと考えた。結局、正攻法しか思い付かなかった。女神を手に入れるのに汚い方法なんて思いつくわけがない。正々堂々、貰いに行く。しかし、だ。俺はただの学生。卒業間近ではなく、まだ3年生。麻子さんをかっさらったって養うなんて出来ない。何せ俺、まだまだ親から仕送りを貰っている身分だからな。それでも欲しい。あの笑顔が、微笑みが、俺のものだって言い切りたい。それにはまず、声を掛けないと……。どうする?天気の話か?天気って、どうでもいいな……。今日も彼女はアイスカフェオレを注文した。いつも同じドリンクだ。ドリンクチケ
last updateLast Updated : 2026-08-31
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八神 岳(やがみ がく)、回想す②
店のすぐ前の駐車場にはいなかった。店の左隣の駐車場だろうか? 「麻子さん!」 車に乗り込もうとしていたその人はまだ振り向かない。 「麻子さん、待って!」 静かに振り向いた。ああ、この振り向いた瞬間、動画に撮りたい。麻子さんが俺に振り返ったこの瞬間、永久保存する価値確定。 「スマホ!忘れてます」 もっと引き延ばせればいいのに。他に気の利いた言葉が出てこなかった。俺が名前を呼んだからか怪訝そうな顔をしていた麻子さんは俺の手にあるスマホを見た途端、かすかに目を見開いた。 「どうぞ」 スマホを手渡す。両手で受け取るこの人は、前から感じていたが品がある。彼女が両手で受け取ってくれたおかげで、俺は彼女の手に面積多めに触れることに成功した。キモい?許して。本当は触りたくてしょうがないのをぐっと我慢しているのだから。 「ありがとう。あの、私の、名前……?」 どうして知ってるの?と聞きたそうに首を傾げた。え、可愛い。首傾げるとか。反則。優勝。参りました。ノックアウトです。 「白雪さんから教えてもらいました」 この理由ならキモくないよな?自然だよな? 「ああ、桃歌ちゃんね。だからか」 「あの、白雪さんとは……?」 「従姉妹なの。歳、離れてるけど」 「そんな。麻子さん、十分若いです」 俺が惚れてしまう程には。麻子さんには十分過ぎるほどの若々しさと色気があった。その声、俺の耳元で囁いてくれないかな。「控えめに言って、お前、キモいわ」「ばっさり切り過ぎだろ……」中学からの悪ガキ仲間、翔太《しょうた》は俺をばっさり切るとビールのジョッキをあおった。同じく悪ガキ仲間の大翔《ひろと》の実家のラーメン屋のテーブル席で俺たちは月に一回集まっていた。向かいの席には相変わらず派手な髪色の海斗《かいと》と無口な裏番の蓮《れん》が、この店の名物、デカ盛りチャーハンをほうばっていた。「んで岳、もう連絡先交換したわけ?」「そんな蓮みたいな神技できねえよ」冷やし中華が俺の前に運ばれてきた。大翔の母ちゃんの腕は今日もたくましい。唐揚げデカ盛りと大盛りの冷やし中華を同時に運んでブレないって、どんな筋肉してんだよ。麻子さんの腕とは違うな。ほっそりしたあの腕、あの手首。俺が掴んだら折れてしまわないか。そっと掴んであげないとな。「おーい。岳が妄想モード入ってるぞー」今日も
last updateLast Updated : 2026-08-31
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八神 岳(やがみ がく)、回想す③
「以上でよろしいでしょうか。失礼します」 テンプレしか出てこない、語彙力皆無の俺。ああ、伝票をテーブルの端に置いたら麻子さんから遠く離れたカウンターに戻らないといけない。誰でもいい、教えてくれ。どうしたら店員と客って恋愛が始まるんだ? 麻子さんの無言の微笑みを受けて、すごすごと俺はカウンターに戻った。そういえば、栗原さんと店長って、それぞれお客さんと付き合ったり結婚したりなんだっけ?速水から聞いたことあるぞ。 レジ横に置いてある、ロミオのショップガードが目に留まった。ダメで元々か。やってみる価値はある。やらなきゃ何も始まらない。 ショップカードを1枚手に取り、裏に俺のLINEのIDをボールペンで書く。念の為電話番号も書いてみる。ショップカードの裏が白くて助かった。 「八神、何書いてんの?」  今日のバイトのホールは俺と速水だけ。速水が俺の大事なショップカードを覗き込んだ。 「ちょっと、な」 目を逸らした俺の表情をじろじろと観察した速水は、無言で理解した旨を顔に表した。いちいちスマートだなこいつ。だからリア充なのか。爆発してしまえ。そういえば、こいつの彼女の白雪さんって胸大きいよな。あの胸揉んでんのか。尻も触ってんのか。全裸見て触ってんのか。うん、やっぱ爆発してしまえばいい。「ありがとうございまーす」麻子さんが立ち上がると同時にレジに向かう。レジに向かおうとした速水の前を無理に通ってレジ前に立つ。速水は一瞬眉をひそめたが、察したらしく何も言わずにテーブルの下げに向かってくれた。爆発しろなんて思ってすまん。直接言ってないから許して?「コーヒーチケットですね。ありがとうございます。レシートは?」「いいです」レシートと一緒に渡したいんだよ!うう、ここは……もう、無理矢理渡すか。「こちら、よろしければどうぞ」強引にショップカードを差し出す。頼む!受け取ってくれ!「は、はあ……」よし!受け取ってくれた!困惑気味でも麻子さんは美しい。明らかに困らせてるのは承知の上。でもな、俺の連絡先をわたすのが大事なんだ。例え彼女が人妻でも。左手の薬指に光るものがあっても。「ありがとうございましたー!」営業スマイルで強引に乗り切る。どうか、そのショップカード、捨てないで。せめて裏に俺の連絡先があると、気付いてくれ。ドアが閉まる。ドア越しに、麻子さんがカ
last updateLast Updated : 2026-09-07
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麻子の言い分①
す、進まない……!話が、全っ然!進まない。 馴れ初めから話してくれないと理解できないから馴れ初めは必須なのは間違い無いんだけど。八神さんがお相手の麻子さんに声を掛けるまでの色々って、多分記事だと『バイト先の常連(人妻)に彼は勇気を出して連絡先を渡した』で終わってしまう。 もう30分経過している。ここの個室はあと60分しか使えない。救いは美空がまだ寝ていることだ。お願い!まだこのまま寝てて? そうか、不倫の当事者インタビューって、もっとサクサク進むと思ってたけど、結局のところノロケ話聞かされてる状態なのね。時間は有限だから、何とかして現在に至るまでのドロドロを聞き出さないと。 「あの、お相手の麻子さんってご結婚されてるんですよね?」 八神さんの表情が曇った。え、泣きそうなんですけど。泣かれても困るのですが。 「はい……。僕が、もっと早く出会ってあげられなかったせいで。俺じゃない男に麻子さんが抱かれるなんて。耐えられません。麻子さんだって絶対、嫌なはず……」 泣き始めた。ほんとやめて。私はあなたの不倫の愚痴を聞きにきたわけでは……じゃないか。不倫話の中には愚痴も含まれるのか。 「あの、麻子さんから直接お話を伺うことは出来ますか?」「──離れてあげなきゃいけないって、本当はわかってるんですけどね」谷口麻子さん。28歳。なんと私と同い年。マジっすか。そりゃアラサーって人生のステージ色々あるけどさ。子無し専業主婦で大学生の彼氏がいるってもう、私のIQでは追いつかないのかもしれない。八神さんの話だけでは記事が全く書けない予感が的中した。あの日予定の時間になったところでタイミングよく美空が起きてしまった。麻子さんについて熱く語っていたはずの彼は、愚図る美空を一生懸命にあやしてくれた。うん、ありがたい。ありがたいよ?八神さん、きっといいパパになるよ?でもね。私があの日欲しかったのは記事になるネタであって、男子学生がちっちゃい子をあやすという微笑ましい姿じゃなかったんです。編集部に交渉して、麻子さんにもインタビューできるよう、経費をもぎ取った。八神さんを通じて麻子さんと約束を取り付けた今、先日と同じホテルのラウンジの個室に舞い戻った。「可愛いですね。えっと……。インタビューでも、連れてくるんですね」「すみません。そういう条件での仕事をさせてもらってお
last updateLast Updated : 2026-09-08
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麻子の言い分②
──可愛いな。 顔を紅く染めて必死にショップカードを渡してきたその彼は、私に対する好意がだだ漏れだった。 私が結婚してなかったらね。結婚する前だったらね。ちょっとぐらい考えてあげられなくもない好青年だった。 結婚して5年。自然に任せているはずなんだけど、なかなか赤ちゃんは私のお腹に来てくれない。 正直、焦ってない。私、まだ20代だし。急がなくてもいいじゃん?まだまだ優雅な専業主婦ライフを味わってたって……嘘です。私、本当は専業主婦しんどいです。専業主婦を楽しめたの、最初の1週間だけ。 夫は、仕事が好きな私に、家にいることを求めた。 姑は今も現役看護師で、夫が子どもの頃から忙しい人だった。いつか生まれるであろう我が子とは、家で一緒に過ごしてほしいそうだ。 私の母も仕事が忙しい人だった。朝起きたらおにぎりが置かれてて、母はとっくに出勤してた。母には直接言ってないけど、寂しい子ども時代を送った私には、夫の言いたいことはよく分かった。 結婚して3年ぐらい経った頃。姑が「婦人科で相談してみてはどうか」と口を挟んできた。当時私、26歳。冗談じゃない。どうして姑にそんなセンシティブなこと言われなきゃいけないの?それ以来、姑には可能な限り近付いていない。姑とは距離を置いていたのに。夫はあろうことか、我が家の合鍵を渡していた。夫の実家は2駅離れた場所に位置しているはずなのに、姑はどんどん我が家に訪問するようになった。まるで、「ここも私の家なのよ」と言わんばかりの態度だ。平日の日中でも平気で来る。平日の日中なんて、夫は仕事中なんですけど。当然、私が相手をすることとなる。最初はいい嫁を演じないといけないと思っていたから耐えていた。しかし毎週水曜日と金曜日についてはゲリラ的にアポ無しで来るようになった。月・火・木は習い事があるそうだ。ヨガとフラメンコとウクレレ。何そのラインナップ。忙しい看護師サマじゃ無かったんですか?聞けば午前と午後の診療の間に行ってるそうだ。じゃあ我が家に来る暇なんて無いよね?何でわざわざ電車にまで乗ってわざわざ来るのよ。来なくていいし。ちょっと出掛けて、帰宅した時に我が家の掃除をしていたときにはゾッとした。寝室のゴミ箱のビニール袋の交換までされたと気づいたときには拒否反応が出た。姑に「寝室に入らないで」と夫が伝えたはずなのに、それでも入って
last updateLast Updated : 2026-09-08
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麻子の言い分③
退職して以来、私の脳は暇だった。現役で働いていた頃は、あんなに頭を回転させまくっていたのに。このままでは私の脳は錆びついてしまう。脳トレとかクロスワードパズルじゃ私の脳は満たされない。夫は仕事で疲れて帰ってくる。当然だ。私も働いていた頃は、家に着いたら電池をオフにしていた。もう何年も、電池をオフにした夫としかまともな会話をしていない。周りの友達よりも早く結婚が決まった私は、密かに誇らしかった。20代前半なんてね、彼氏がいることが当然のステータス。なかなか縁に恵まれなかった私は、マウントしたいあんづの格好の餌食だった。一緒によく会う佳央理はそのあんづの攻撃から身を守る為か、街コンに行ってはすぐに彼氏を作り、でもすぐに別れていた。長く続かないにも原因がありそうだけど、あえてそこは追求しない。ほっといてもあんづが追求してるから。何故だろう?あんづよりも早く結婚決まって、あんづの顔を無表情にさせたときは「勝った……!」って思ったのに。今じゃ仕事に恋愛にじたばたしているあんづと佳央理の生活が羨ましくてしょうがない。あんづや佳央理だけじゃなく、他のコミュニティの友達だって、日中は忙しい。仕事してるもんね。土日の時間は貴重なのだろうと思うと、おいそれと気軽に誘えない。結婚前はコンサルをしていた。当時香港で勤務してて、毎日本当に忙しかったけど楽しかった。収入も20代にしては高かったと思う。でも退職した。妊活する為だ。まだ若いし、自然に妊娠できるだろうし、退職する必要性なんて私は感じなかった。夫に懇願され、仕方なく退職した。私の退職劇の裏では姑が糸を引いていることには気付いていた。姑の「婦人科で診てもらえ」発言まで、夫が私の仕事に口出しするなんてことは無かったからだ。婦人科になんて絶対に行かない。現時点で妊娠してないのは、私たちの赤ちゃんが「今じゃない」って言ってるだけだ。姑の望むタイミングなんかに合わせるものか。さて、どうする?このショップカード。予想通り、カードの裏にはLINEのIDと電話番号が記載されていた。恐らくあの子の連絡先だ。顔真っ赤にして渡してきたんだ。そうでなければ、辻褄が合わない。私は結婚している身だ。夫じゃない人と個人的にやり取りをするのってどうなんだろう?働いてるときは同僚や上司と必要なときに連絡取っていたから問題無いだ
last updateLast Updated : 2026-09-09
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麻子の言い分④
見られて困ることなんて無かった。昨日までは。スマホを紛失したら大変なことになる、と映画を観て戦慄した私は、夫の了承を得て指紋認証もするようになった。それが今、こんな風に役立つなんて。おかげで今私は、安心してスマホを置いてお風呂に入れる。頭皮用スクラブでマッサージしてから髪のケアを始める。トリートメントまでたどり着いたら、一度蒸しタオル……にしたいけど、現実的じゃないからお湯で濡らしたタオルで一度髪をまとめる。今度はスクラブで全身を磨く。専業主婦になってから時間があり過ぎて、美容の情報をどんどん集めた。生活に困ってない上にブランド物に大して興味の無い私は、お金に困る事はなく、必要なものをすぐに手に入れられた。ネット通販って素晴らしい。風呂場の姿見で自分の全裸を確認する。我ながら形の良いバストだと思う。そこそこ大きさがあって、ワンピースを着ると胸の部分に布を取られてデザインが若干変わってしまうのが地味に困る。よっぽどぶかぶかの服を着ない限り、バストラインは常に目立つ。ショップカードをくれた、あの八神くんも、私のバストラインを見ていただろうか。見知らぬおじさんに凝視されるよりは、八神に見せてあげた方がよっぽど気分がいいかもしれない。今度ロミオに行くときは谷間が見える服にしてみようか。私達の寝室はシングルベッドを2台くっつけている。ダブルベッドでも良かったけど、「睡眠にはこだわりたい」と夫が言うから、各自大の字になれる広さを選んだ。新婚の頃は毎晩抱かれていた。いつからか、抱かれるのは週末だけになった。毎晩抱かれるのは身体に負担を感じ始めていたから異論は無かった。それでも妊娠を意識し始めると焦りを感じる。もしかして今日してたら授かってたかもしれない。そんなことを寝る前にうっすら考えるようになった。毎月の生理が怖い。今月もダメでしたよって言われているような気がして苦しい。そこに姑からの圧。それに従うだけの夫。妊活ってこんなに苦しいの?やっぱり、さっきのLINEは間違ってなかった。ちょっとLINEするぐらい問題無いじゃない。彼は私の薬指に光る指輪は確認済みだろうし、無茶なことは言ってこないだろう。ちょっとぐらい、気晴らししたっていいじゃないか。若い男の子が、人妻の私に本気になるなんてことは無い。彼は私に興味はあるのかもしれないけど、こっちも気を
last updateLast Updated : 2026-09-09
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惚気は続く①
──ちょっと待て。 私は不倫についてのインタビューの為にここに来てるんだよね?夜のお悩み相談会じゃないよねここは? そうか。私、インタビュー下手なんだな。八神さんも麻子さんも好き勝手話し放題というのは、この人達の身勝手さなのではない。たぶん。私の話の引き出し方が下手なんだ。うん、きっとそうだ。そう思うことにしておこう。じゃないと私、やってらんない。 私はね、仕事であなた達の不倫話を聞いているだけであってね。あなた達の愚痴をただ聞いてる便利屋ではないんですー! こんな生々しい話、記事になんて出来ない。『Aさんは夫との夜の生活に不満があった』ぐらいしか書けない未来が見える。これではまずい。 「あの、それで。八神さんにLINEを送ったのがおふたりの始まりってことでよろしいでしょうか」 「そうね……厳密には、岳が私にショップカードをくれたところ、かな」 首を傾げて微笑むその姿は、八神さんにとっては、もしかしたら世の男性からは女神に見えるんだろう。ボディラインの目立つワンピースを今日のこのインタビューに着てくるぐらいだから、普段からこんな感じの服装なのかな?インタビュアーが女だって知ってたよね?だってアポ取ったの私だし! ショップカードもLINEの話も聞いたから。お願いだから、もうちょっとサクサク進んでくださいお願いだから! 「ええと、そのLINEをきっかけにやり取りが始まって……」 「そう。私が送った日からなんと毎日よ?どんだけ私に惚れてたのよってね」 峰不二子……じゃない、麻子さんは照れもしないで優雅に微笑んだ。 「毎日LINE、ですか。ご主人は気付かれてないんですか?」 「気付いてないと思うよ?あの人、私のスマホになんて興味無いもの」 一瞬、麻子さんの微笑みに陰りが見えた。ご主人の麻子さんへの興味が薄れているのかな?我が家もそうならないように気をつけ……じゃなくて!インタビューの続き! 「では順調にお付き合いが始まったんですね」 「うーん、順調、って言っていいのかしらね。岳はね、自分から声かけてきたくせに、決定的な言葉は全然言わなかったのよ?後から聞いたらそんな度胸無かったとか言ってたけど。人妻に声掛けといてよく言うわよってね」 釣った魚に餌……ではないか。決定的な言葉を告げないなら、釣り堀に針を入れた
last updateLast Updated : 2026-09-10
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