とうとう、9回目がやってきた。花織から「今すぐ来てほしい」という電話がかかってきただけで、正樹は玲奈を人通りの少ない郊外に置いていこうとした。「悪い、玲奈。ちょっと急用ができたんだ。ここで降りてもらって、タクシー拾って帰ってくれる?」悪びれる様子もなく、正樹はそう言った。外では、激しい雨が降り続いている。そして、玲奈はまだ生理中。彼女が何か答えるより前に、正樹は傘を取り出し、その手に押しつける。一刻も早く花織のもとへ行きたい。その気持ちが、隠しきれないほど顔に出ていた。「家に着いたら、連絡してくれ」それだけ言うと、正樹は玲奈を車から降ろした。そしてカーナビに花織の家の住所を入力する。それを見た玲奈は、胸の奥がずきりと痛んだ。正樹が運転するスポーツカーは雨の中を走り去っていく。斜めに降りつける雨が、あっという間に玲奈のスカートの裾を濡らした。冷たい夜風が容赦なく頬を打ち、身体の芯まで凍えそうになる。タクシーを捕まえることができず、玲奈は、ただひとり歩き続けた。雨の中を歩けば歩くほど、靴擦れがひどくなっていく。気づけば、足元は血で赤く染まっていた。数時間後、玲奈はようやく、家の近くへたどり着いた。生理ナプキンの交換ができず、スカートにも血が滲んでいたことに気づく。玲奈は痛む下腹部を押さえながら、その場に崩れ落ちた。息をするだけでも苦しい。雨のせいで視界が滲む。その向こうから、ひとりの女性が傘を差して歩いてくる。花織だった。玲奈の前まで来ると、花織は満足そうに微笑んだ。「あら、辛そうね。私の賭けを受けたこと、後悔してるんじゃない?まあ、玲奈のことだもの。きっと、どこかで期待してたんでしょ?長い間正樹と一緒に暮らしてきたんだから、少しくらいは自分のことを気遣ってくれるんじゃないかって。でも、残念だったわね。正樹にとって、一番大切なのはいつだって私よ。あなたが私に敵うはずなんて、ないもの」玲奈はふらつきながら、ゆっくりと立ち上がった。だが、その真っ青な顔に、悲しみも怒りもなかった。「……これで9回目だね。あなたの勝ちだよ。約束どおり、私は正樹と離婚する」それだけ告げると、玲奈はふらつく足で歩き出した。雨が降り続く中、家へ向かって歩いていく。その道すがら、過去のことが、次々と胸の
Read more