第51話 あなたと結婚するのは、秘密を開けるためじゃない ファミリー・キーパーから届いた文面を、玲司は三度読み直した。『婚姻成立後でなければ、相沢結衣氏へ開示できない文書があるためです』 結衣も隣から画面を見ていたが、何度読んでも気味の悪さは消えなかった。「七年前ですよね」「ああ」「私、七年前は玲司さんの名前すらちゃんと知らなかったと思います」「俺も君を知らない」「なのに、どうして私に?」 篠崎がすぐに答えた。「そこは現在照会中です。文面だけ読むと相沢様個人を指定しているようにも見えますが、先方が現在の婚約者名を当てはめて説明している可能性があります」「つまり」 結衣が少し安心する。「七年前から『相沢結衣に渡せ』って書いてあったわけじゃない?」「その可能性は極めて低いかと」「ですよね」 玲司が横を見る。「残念そうだな」「どこがですか。七年前から知らない人に名前書かれてたら怖いでしょう」「運命的ではある」「玲司さん、たまに妙なところでロマンチストですよね」「俺が?」「自覚ないんですか」「ない」 篠崎が淡々と言った。「私にもございませんでした」「篠崎」「失礼しました」 結衣は笑いかけたが、すぐに画面へ視線を戻した。「でも、条件が結婚なら」 言ったところで。 玲司がすぐ反応した。「婚姻日は変えない」 結衣は瞬きをする。「まだ何も言ってません」
Last Updated : 2026-10-22 Read more