境界駅リュミエラ。空へ浮かぶホームへ、冷たい星風が流れていた。黒鉄の列車は、静かに停車したまま。蒸気だけが、白く空へ溶けていく。誰も喋らなかった。さっきまでの戦闘で崩れたホームを、全員が黙って見ている。壊れた時計塔。裂けた空中線路。黒い染みが残る床。だが。侵食だけが、消えていなかった。ホームの端。床の隙間。柱の影。あちこちで、黒い何かが脈打っている。フィルニアが、露骨に嫌そうな顔をした。「まだ生きてんのかよ……」タマも舌打ちする。「気配が減ってねぇ」女性駅員が、静かに答えた。「境界へ入り込んだ侵食は、完全には消えません」「どこかに“根”が残ります」ミーコが、駅の奥を見る。「根なら、まだ近い」その時だった。カン――……鐘の音。今度は、すぐ近くだった。全員が振り向く。ホームの一番奥。暗闇の中へ、古い改札が立っていた。最初は無かった。誰も気付かなかった。まるで。今、現れたみたいに。木製の古い改札。煤けた看板。そこへ。薄く文字が浮かんでいる。『零番線』ユキが、小さく息を呑んだ。「……あそこ」女性駅員の顔色が変わる。「そんな……」タマが聞く。「知ってんのか?」駅員は、改札を見つめたまま答えた。「存在しない場所です」「本来、開いてはいけない」その瞬間。零番線の奥で、灯りが点いた。赤だった。暗闇の中へ、ぽつんと浮かぶ赤灯。それが。ゆっくり増えていく。一つ。二つ。三つ。全部、列車の窓だった。だが。音が無い。普通の列車なら、振動が来る。金属音が鳴る。なのに。何も聞こえない。静かすぎた。そして。暗闇から、列車が現れる。黒い。異様に細長い列車だった。窓が多い。多すぎる。無数の窓。無数の赤灯。その全部で。“誰か”が揺れていた。フィルニアが、槍を構える。「気色悪ぃな……」列車は、零番線へ静かに停車した。その瞬間。ホームに異変が起きた。誰も居なかったベンチへ。人影が現れ始めた。老人。獣人。旅人。子供。商人。次々。何も無かった場所へ、突然座っている。だが。全員。顔が無い。真っ黒だった。ミツコが、小さく眉を寄せる。「急に増えたねぇ……」その時。列車の扉が
Última actualización : 2026-09-22 Leer más