湧き上がる胸の高鳴りが溢れ出さないよう、スカーレットは下唇を小さく噛んだ。ダリアスはこれまでにも結婚について何度か触れ、まるで最初から腹を決めているかのように口にしてはいた。それでも、こうしておばあちゃんであるエレニアの目の前で、本当にプロポーズされるなんて思いもしなかったのだ。ダリアスは少しの迷いもなく、ズボンのポケットへとゆっくり手を伸ばした。次の瞬間、二人の視線が重なる距離で彼女の前に片膝をつき、赤のリングケースを開いてみせた。巨大なダイヤモンドがスカーレットの瞳に飛び込んできた。窓から差し込む陽光を浴びて、それは眩いばかりの煌めきを放っていた。尋ねるまでも無く、数千万円は下らない品であることは明白だった。彼女はごくりと生唾を飲み込み、手持ち無沙汰に指先を彷徨わせた。「スカーレット、ねえ、ダリアスさんの膝が痛くなっちゃうわ。早くお返事してあげなさいな。『はい、喜んで』って言ってあげるのよ」エレニアがお茶目に口を挟んだ。老婦人の唇に笑みが浮かび、その軽やかな声色からは、体調が格段に良くなっていることがはっきりと窺えた。スカーレットはクスッと小さく笑うと、首を横に振ってから、優しく頷いてみせた。「ええ、ダリアス。あなたと結婚するわ」ダリアスの笑みが一気に広がった。彼はケースから指輪を取り出すと、スカーレットの指へとなめらかにはめた。一瞬、彼女の周囲の時間が止まったかのように思えた。まるで彼女のためだけにサイズを測り直したかのように、指輪は吸い付くようにぴったりとフィットした。そして誰の視線をも奪うような美しさで、彼女の指元を華やかに彩っていた。ダリアスはまだ彼女の手を放そうとしなかった。そのまま立ち上がると、ぐっと顔を近づけてきた。言葉など要らないほどの深い愛おしさを湛えた瞳で、まっすぐ彼女を見つめてくる。すべての緊張と歓喜を胸の内に押し込めるかのように、スカーレットは再び下唇を噛んだ。ダリアスが身をかがめ、その唇を優しく奪ってきた時も、彼女は逃げようとはしなかった。彼は彼女の下唇を軽くなぞるように噛むと、さらに深い口づけを交わした。二人のキスは、突如として巻き起こった拍手の音によって遮られた。「ブラボー! まあ、なんてこと! まるで映画のワンシーンみたいだわ!」エレニアはまるで映画館で観劇でもしているかのように、楽しそうに手を叩いて歓声を上げ
Last Updated : 2026-10-09 Read more