ホール(会場)の反対側にザンダーの姿を認めたエリセオは、まるで蜘蛛の糸でも見つけたかのように顔を破顔させた。彼は即座に立ち上がった。「ザンダー! 私だ! エリセオ・サルセドだ! タナーの未来の義父の!」ザンダーは彼がそれ以上余計な口を叩く前に言葉を遮った。「アルダマ様をお探しですのなら、どなたかに案内させましょう。ですが、只今大切なゲストの方々をおもてなししている最中でございますので。騒ぎを起こすような真似はお控えいただけますか」ザンダーは礼儀正しく言い放った。彼はスタッフに合図を送り、タナーを呼びに行かせようとした。だがその時、エリセオはサクラから言われた言葉を突如として思い出したのだった。今夜のイベントの真の主役であり、注目の的となっているのはエロワーズなのだと。「いや、待ってくれ!」彼は思わず口走った。「タナーに用があるんじゃないんだ。エロワーズに会いに行きたいんだよ!」「エロワーズさんに?」ザンダーは眉をひそめた。「エロワーズ・グティエレスだ、モンリアル博士のアシスタントのね。私は彼女の叔父なんだよ。どうしても彼女と話さなければならない緊急の用件があってね」エリセオがエロワーズの叔父であることを知るやいなや、ザンダーの態度は一変した。今夜の特別ゲストの叔父を、無下にお追い返すわけにはいかなかったからだ。それに、彼自身すでにエロワーズに強い好感を抱いていた。もし二人の関係がこのままさらに親密なものへと発展していけば、エリセオもまた将来的に重要な人脈(コネクション)となる可能性があった。ザンダーの表情が和らいだ。「グティエレス先生にご面会にいらしたのでしたら、どうぞお入りください」大広間へと足を踏み入れた瞬間、エリセオの目に留まったのは、洗練された黒のイブニングドレスに身を包み、ジュースグラスを手に数名の名士たちと快適に歓談するエロワーズの姿だった。彼女は力みのない優雅さをもって振る舞い、会場全体の注目の的となっていた。近づくにつれ、エロワーズを取り囲む女性たちが彼女に対して惜しみない賛辞を浴びせかけているのがエリセオの耳に届いた。エロワーズはただ微笑みを返し、数々の絶賛に対しても謙虚さとプロフェッショナルな品格を保ちながら、どこまでも冷静に応答していた。部屋の反対側では、タナーがワイングラスを手に彼女の様子を見つめていた。彼はエ
Last Updated : 2026-10-22 Read more