午前7時10分。金曜の朝。私は銭湯の湯船に浸かっていた。なぜ朝から銭湯なのか。昨日、たまたま前を通ったときに、〈朝風呂 6時30分〜〉という張り紙を見つけたから。一度やってみたかった。朝から大きなお風呂。想像しただけで少し贅沢だ。実際、かなりよかった。湯気。高い天井。足を伸ばせる湯船。家のお風呂とは全然違う。「若い人、珍しいね」隣から声がした。70代くらいの女性。タオルを頭に乗せている。「初めて来ました」「朝から?」「はい」「偉いねえ」「何が?」「起きたのが」そこ?向かいにいた別の女性が笑う。「朝風呂来てる時点で、みんな起きてるよ」「私は5時に起きた」「自慢?」「年取ると勝手に起きるの」朝から会話が自由だ。私は肩まで浸かる。湯船の縁に朝日が反射している。壁の富士山の絵は、少し色が薄くなっていた。家ならこの時間、たぶん時計ばかり見ている。ここには時計がない。少なくとも私の視界にはない。それだけで少し得した気分だった。「ああ……」声が出た。「それそれ」最初の女性が言う。「若い人も同じ声出すんだね」「出ます」「安心した」何に安心したんだろう。湯船の端に背中を預ける。頭がぼんやりする。昨日のことが少し浮かぶ。あれ言わなきゃよかったかな。あれ、後回しにしたままだった。今日どうしよう。そんなことを考え始めたとき。
Última actualización : 2026-09-25 Leer más