Todos los capítulos de ねえ、5分だけ付き合ってーーMorning Side: Capítulo 11 - Capítulo 20

65 Capítulos

朝風呂は反省禁止です

午前7時10分。金曜の朝。私は銭湯の湯船に浸かっていた。なぜ朝から銭湯なのか。昨日、たまたま前を通ったときに、〈朝風呂 6時30分〜〉という張り紙を見つけたから。一度やってみたかった。朝から大きなお風呂。想像しただけで少し贅沢だ。実際、かなりよかった。湯気。高い天井。足を伸ばせる湯船。家のお風呂とは全然違う。「若い人、珍しいね」隣から声がした。70代くらいの女性。タオルを頭に乗せている。「初めて来ました」「朝から?」「はい」「偉いねえ」「何が?」「起きたのが」そこ?向かいにいた別の女性が笑う。「朝風呂来てる時点で、みんな起きてるよ」「私は5時に起きた」「自慢?」「年取ると勝手に起きるの」朝から会話が自由だ。私は肩まで浸かる。湯船の縁に朝日が反射している。壁の富士山の絵は、少し色が薄くなっていた。家ならこの時間、たぶん時計ばかり見ている。ここには時計がない。少なくとも私の視界にはない。それだけで少し得した気分だった。「ああ……」声が出た。「それそれ」最初の女性が言う。「若い人も同じ声出すんだね」「出ます」「安心した」何に安心したんだろう。湯船の端に背中を預ける。頭がぼんやりする。昨日のことが少し浮かぶ。あれ言わなきゃよかったかな。あれ、後回しにしたままだった。今日どうしよう。そんなことを考え始めたとき。
last updateÚltima actualización : 2026-09-25
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こっち、見てもらえます?

午前8時05分。眼鏡がずれる。それだけで、朝から少し機嫌が悪かった。昨日から、歩くたびに鼻の下へ落ちてくる。指で戻す。また落ちる。駅前の眼鏡店がもう開いていたので、私はそのまま入った。「調整できますか?」店員は30代前半くらいの男性。白いシャツ。細い黒縁の眼鏡。自分も眼鏡だった。「もちろんです。かけたまま少し見せてもらえます?」正面に立つ。彼が私の眼鏡を見る。顔をまっすぐ見られる。こういうの、妙に落ち着かない。「少し右が下がってますね」「分かるんだ」「仕事なので」「自分では全然」「だいたいそうですよ」彼がフレームの端を軽く持つ。「普段、右手で眼鏡上げる癖あります?」「あるかも」「右だけ少し広がってます」「そんなところまでばれるんだ」「眼鏡は結構正直ですよ」自分の癖まで見られたようで、少し落ち着かない。「少し外しますね」眼鏡を取られる。急に世界がぼやけた。「見えます?」「全然」「どれくらい?」「あなたの顔がだいたい顔」彼が笑った。「ひどい」「本当に見えないの」「じゃあ、今のうちに変な顔してもばれないですね」「声でばれる」「確かに」彼は調整台へ向かった。私はぼやけた店内を見る。何もはっきりしない。少し不安。数分後。「一度かけてみましょう」彼が戻ってくる。眼鏡を受け取ろうと手を出す。「そのままで」「え?」「僕がかけます」フレームを両手
last updateÚltima actualización : 2026-09-25
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釣れなくても朝ごはんです

午前8時30分。土曜の朝。私は釣り堀で、魚に完全に無視されていた。開始から20分。浮きは一度も動かない。隣では、小学生くらいの男の子が3匹目を釣った。「また釣れた!」元気な声。ちょっと悔しい。その隣には40代くらいの女性。たぶん母親。「すごいね」私が言うと、男の子がこちらを見る。「お姉さん、0匹?」お姉さん。そこは嬉しい。でも0匹は傷つく。「今からだから」「もう20分いるよ」見てたの?母親が慌てる。「すみません、失礼で」「大丈夫です。事実なので」男の子が私の竿を見る。「餌、大きすぎ」「そうなの?」「魚、食べにくいよ」朝から小学生に指導される。「じゃあどうすれば?」男の子が立ち上がった。「貸して」私の餌を半分くらいにする。「これくらい」「先生みたい」母親が笑う。「家では宿題全然やらない先生ですけどね」「それは言わないで!」平和だ。もう一度竿を入れる。待つ。浮きが少し動いた。「来た!」男の子が叫ぶ。私は慌てて竿を上げる。何もいない。「早いよ」怒られた。「難しい」「動いてもすぐ上げない」「はい先生」母親が隣で笑う。「朝からすみません」「楽しいです」本当に。次。また浮きが動く。今度は待つ。男の子が小声で言う。「まだ」待つ。「ま
last updateÚltima actualización : 2026-09-26
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片耳だけ、貸します

午前10時15分。中古レコード店に入った。特に探しているものはない。ただ、店先から昔好きだった曲が流れてきたから。土曜の朝。予定はない。こういう寄り道ができるだけで少し嬉しい。棚にはレコードがぎっしり。ジャケットを見るだけでも楽しい。奥の棚で、見覚えのある1枚を見つけた。手を伸ばす。同時に、横から別の手も伸びた。「あ」「あ」30代前半くらいの男性。グレーのパーカー。少し寝癖っぽい髪。休日感が強い。「どうぞ」彼が先に手を引いた。「いいんですか?」「僕、持ってるんで」「じゃあなんで取ろうとしたの?」「状態よさそうだったから見たかっただけ」かなり好きらしい。「これ、いいですよね」私が言う。「いいです。3曲目が特に」「私は5曲目」「そこ?」急に否定された。「そこって何」「いや、悪くないけど」「じゃあいいでしょ」「3曲目のほうが」「好みです」朝から知らない人とレコードの曲順で揉める。少し面白い。店の奥に試聴機があった。彼が言う。「聴いてみます?」「これ?」「店員さんに聞いてみましょう」許可をもらい、レコードをセットしてもらう。問題が1つ。ヘッドホンが1つしかない。「どうします?」私が聞く。彼がヘッドホンを見る。「片耳ずつ?」「それできる?」「たぶん」大型のヘッドホンを、2人で左右から使う。私は右耳。彼は左耳。
last updateÚltima actualización : 2026-09-26
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今日は自分を撮る日

午前10時。セルフ写真館に来た。誰かと記念写真を撮るわけではない。1人。完全に1人。受付の女性に、「お1人ですか?」と聞かれたとき、少しだけ勇気がいった。「はい」でも女性は普通に、「いいですね」と言った。30代前半くらい。黒いTシャツ。髪はひとつにまとめている。「1人で来る人、結構多いですよ」「何撮るんですか?」「自分」そのままだった。撮影ブースは白い壁。大きな鏡。カメラ。手元のリモコンで自分でシャッターを切る。「20分、好きに撮ってください」「ポーズ分からない」「最初はみんなそうです」「おすすめは?」女性が少し考える。「最初の5分は、かっこつけてください」「最初?」「そのうち疲れるから」現実的。1人になる。最初の数分は、妙に静かだった。スタッフもいない。カメラマンもいない。誰かに「もっと笑って」と言われることもない。逆に、それが難しい。自分で自分を撮るだけなのに、どこを見ればいいのか分からない。鏡を見る。何をすればいい?とりあえず笑う。パシャ。確認。固い。もう1回。顎を引く。パシャ。怖い。少し横を向く。パシャ。誰?5分で疲れた。さっきの女性、正しかった。椅子に座る。足を組む。やめる。髪を触る。変。「無理」誰もいないのに声が出る。リモコンを持ったまま、鏡の自分を見る。いつも写真を撮るときは、誰かにどう見えるかを考える。笑ったほうがいい。顔を小さく見せたい。目を開けたい。でも今日は、誰にも見せる予定がない。急にどうでもよくなる。私は靴を脱いだ。椅子の上で少し横向きに座る。パシャ。次。真顔。パシャ。変な顔。パシャ。だんだん楽しくなる。最後の5分。受付の女性がドアを少し開けた。「どうです?」「最初の5分全部消したい」「でしょう?」笑われた。「今のほうがいい顔してます」「そう?」「うん。そのまま撮れば?」「今?」「今」私は笑った。「急に言われても」その瞬間。彼女が外からリモコンを押した。パシャ。「え!」「今のいい」「勝手に!」もう1回笑う。パシャ。今度は自分で押した。撮影終了。ブースを出ると、受付の女性が紙コップの水をくれた。「お疲れさまでした」「写真撮っただけなのに、な
last updateÚltima actualización : 2026-09-27
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階段、狭いので気をつけて

午前10時40分。日曜の朝。古い洋館の特別公開に来ていた。明治時代に建てられたらしい。木の階段。色ガラスの窓。細い廊下。映画のセットみたいで面白い。案内役は40代前半くらいの男性だった。濃いグレーのジャケット。声は低め。愛想は、あまりない。「この階段は当時のままなので、狭いです。手すり使ってください」必要なことだけ言うタイプ。参加者は6人。順番に2階へ上がる。私は一番後ろ。階段は本当に狭い。しかも少し急。上を見ながら歩いていたら、靴の先が段に引っかかった。「あ」体が少し前へ傾く。すぐ横から低い声。「足元」案内役の男性だった。手を出すわけではない。ただ、私の前へ少し体を入れて止まっている。「大丈夫です」「上見ながら歩かないほうがいいです」「見たいところ多くて」「建物は逃げません」ちょっと冷たい。でも正しい。2階の廊下。細い。反対側から別の参加者が来た。すれ違えない。男性が言う。「こっち寄ってください」壁際に寄る。彼も同じ側へ。距離が近い。肩が触れそう。でも触れない。通り過ぎる人を待つ。数秒。彼のジャケットから、少し木のような香りがした。古い洋館の匂いと混ざっている。「狭いですね」私が小声で言う。「昔の人は今より小さかったので」「私が大きいみたいに聞こえる」彼が初めて少し笑った。「そういう意味じゃないです」「今笑った」「笑ってません」「笑ったよ」「次行きます」逃げた。部屋をいくつか見る。途中、彼は古い窓の金具を指して説明した。「ここ、当時のままです」「壊れないんですね」「壊れます。かなり」「夢がない」「古い建物なので」真顔で言う。でも、そのあと窓枠をそっと撫でる手つきは妙に丁寧だった。本当に好きなんだと思う。無愛想なのに、建物のことを話すときだけ声が少し柔らかくなる。そういう変化は、説明より分かりやすかった。古い暖炉。書斎。寝室。窓から庭が見える。最後は小さなバルコニー。1度に2人まで。私が出ようとすると、彼が言う。「先どうぞ」「案内役は?」「後ろから行きます」バルコニーへ出る。朝の風。庭の木が少し色づき始めている。「きれい」思わず言う。彼も後ろから出てくる。「この時間が一番光が入ります」「だか
last updateÚltima actualización : 2026-09-27
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そのペン、試してみます?

午前7時42分。月曜の朝。駅前の文具店に入った。理由は単純。ボールペンが昨日、急に書けなくなったから。家には他にもある。たぶん3本くらい。でも月曜の朝に限って、なぜか新しい1本が欲しくなった。店内はまだ空いている。棚にはペンがずらり。黒。青。細字。太字。滑らか。速乾。多すぎる。「迷ってます?」声をかけてきたのは、30代くらいの女性店員。丸い眼鏡。胸元には小さな名札。「かなり」「用途は?」「普通に書くだけ」「一番難しいやつですね」「そうなの?」「こだわりない人ほど選択肢多いので」なるほど。店員さんが3本持ってきた。「とりあえず、この3つ試してみます?」試し書き用の紙。私は1本目で、〈おはよう〉と書いた。2本目。〈月曜日〉3本目。〈帰りたい〉店員さんが横から見ている。「朝から最後だけ本音出ましたね」「見ないでください」「試し書きって結構その人出るんですよ」「怖い店だね」「大丈夫です。私は忘れます」絶対覚えてそう。書き比べる。1本目は軽い。2本目は細い。3本目は妙にするする書ける。「これ好き」「それ、人気あります」「人気で選びたくないな」「じゃあ今のなしで」「でも好きなのは変わらない」「じゃあそれでいいじゃないですか」単純。私はそのペンでもう1度書く。〈今日はほどほどに〉
last updateÚltima actualización : 2026-09-28
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もう少し深くかぶって

午前8時。駅ビルの帽子専門店の前で、私は立ち止まった。月曜の朝から帽子。別に必要ではない。ただ、ショーウィンドウに置かれたベージュのキャップが少し気になった。普段なら通り過ぎる。今日は、なぜか店に入った。「試します?」店員は30代前半くらいの男性。黒いシャツ。自分は帽子をかぶっていない。「似合わない気がする」「かぶる前から?」「だいたい似合わないので」「じゃあ確認しましょう」言い方が軽い。彼がキャップを取る。鏡の前でかぶる。見る。「ほら」「何が?」「似合わない」彼が少し笑う。「かぶり方です」「帽子にかぶり方あるの?」「あります」「帽子って、顔の形で決まるんですか?」「それもありますけど、服とか髪型とか、本人が落ち着くかも大事です」「本人が落ち着く?」「似合ってても、ずっと気にして触る帽子はたぶん使わなくなるので」「なるほど」「だから鏡より、かぶったときの顔を見ることもあります」それを聞いてから、逆に顔を見られている気がして少し落ち着かない。彼が私の正面へ立った。「もう少し深く」つばを指で少し下げる。額の近くに手が来る。「これくらい」鏡を見る。さっきよりはいい。「ほんとだ」「でしょう」「でも横が変」「髪出しすぎです」彼が左右の髪を少し整える。直接触れるわけではなく、帽子の縁から髪を逃がす感じ。それでも距離が近い。「ちょっとこっち見てもらえます?」「鏡じゃなく?」「僕」また真正面
last updateÚltima actualización : 2026-09-28
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ボタン1個で捨てないで

午前7時50分。お気に入りのカーディガンのボタンが取れた。しかも、一番上。家で直そうと思えば直せる。針も糸もある。でも、私は裁縫がかなり苦手だ。朝から針に糸を通す自信はない。駅前の洋服お直し店が開いていたので、持ち込んだ。「これ、直せます?」カウンターの向こうには60代くらいの女性。赤い眼鏡。首からメジャー。「ボタン?」「はい」「5分」早い。彼女がカーディガンを受け取る。残った糸を見る。「他のボタンも緩んでるね」「本当?」「ほら」触ると、確かに少しぐらぐらする。「もう買い替えようかな」何気なく言った。女性が顔を上げる。「なんで?」「結構着たし」「穴あいてる?」「ない」「毛玉だらけ?」「そこまでは」「嫌いになった?」「好きです」「じゃあボタン1個で捨てないで」きっぱり。私は少し笑う。「そんなに怒らなくても」「怒ってないよ。もったいないだけ」女性は糸を選び始める。色が何種類もある。私には全部同じベージュに見える。「違うんですか?」「全然違う」「これとこれ?」「違う」「同じに見える」「目が雑」朝から言われた。でも笑ってしまう。彼女は一番近い色を選び、針に糸を通す。「これ、ボタンなくしたらどうするんですか?」「似たの探す。なければ全部替える」「全部?」「1個だけ違うより、全部違うほうが最初からそういう服に見えるでしょ」「
last updateÚltima actualización : 2026-09-29
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それ、取れたら半分ください

午前8時15分。朝のゲームセンターは、意外と静かだった。駅ビルの開店時間に合わせて、ここだけ早く開いているらしい。私は通り抜けるだけのつもりだった。でも、クレーンゲームの中に見つけてしまった。小さな袋入りのチョコレート。しかも、好きな味。「これ、取れるかな」独り言。隣から声がした。「その置き方、難しいですよ」見ると、30代前半くらいの男性。ネイビーのシャツ。片手に100円玉。「詳しい?」「見るのは」「やるのは?」「下手です」正直。「じゃあアドバイスいらない」「ひどい」彼が笑う。私は100円を入れた。アームを動かす。狙う。落とす。チョコは少し動いただけ。「惜しい」彼が言う。「今の惜しい?」「気持ちは」「結果で言って」次。また100円。今度は少し端を狙う。持ち上がる。落ちる。「うわ」2人同時に声が出た。「今の本当に惜しい」「分かってる」悔しい。彼が100円玉を持ち上げる。「僕やっていい?」「どうぞ」「取れたら半分ください」「自分のお金なのに?」「でも狙ってたのあなたなので」よく分からない理屈。「取れたらね」彼が構える。妙に真剣。「上手そうな顔しないで」「集中してるんです」ボタンを押す。アームが下りる。完全に外す。「……」「下手だね」「言い
last updateÚltima actualización : 2026-09-29
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