苦痛に満ちた綾奈の声を聞き、恭太は手にしたばかりの真新しいスマホをテーブルに置いた。「どうした?どこが痛む?」綾奈の額には、じっとりと冷や汗が滲んでいた。「あの時の毒がまだ体に残っているのかも……お医者様も、後遺症が出るかもしれないって……」途切れ途切れに告げる彼女の目には、また涙が滲んでいた。その言葉に、恭太の眼差しが冷ややかに沈んだ。綾奈はここぞとばかりに身を寄せた。「ねえ、先に病院へ連れて行ってくれない?よくある話だけど、旦那さんと喧嘩するたびに家を飛び出す奥さんっているじゃない。稚菜さんは元々私のことを快く思っていないし、今回もあなたが私を送ってくれたと知ったら……」言いかけて、彼女は絶妙な間で言葉を呑み込んだ。恭太には、その先の意味が痛いほど分かった。「あっ、別に稚菜さんが悪いと言いたいわけじゃないよ?」綾奈は消え入るような声で付け足した。「……ただ、あの日のことを思い出すと恐ろしくて。今の痛みが、あの時と同じで……私、まだ死にたくない……それに、稚菜さんはまだ病院にいるんでしょう?お医者様だって、勝手に動き回らせたりはしないはず」ひどく柔らかい声色。ただ耐え忍ぶような息遣いだけが響き、そこには私情など微塵も交じっていないように聞こえた。恭太は、次第にその言葉へ絡め取られていった。確かに、あの盗撮写真が見つかって以来、稚菜はずっと自分に反発していた。綾奈との関係は何度も説明し尽くしたはずなのに、彼女は最後まで信じようとしなかった。あろうことか、非情にも毒まで盛ったのだ。もし自分が駆けつけるのが遅れていたら、綾奈は命を落としていたかもしれない。そう思うと、恭太の心はどこまでも鉛のように重くなった。稚菜は、本当に分からず屋だ。帰ったらきちんと話し合おうと告げたばかりなのに、自分が病室を出た途端にまた意地を張った。今度もまた根拠のない疑心暗鬼から、連絡を絶ってしまった。結婚して5年。彼女はこの程度の信頼さえ、自分には向けてくれないというのか。考えれば考えるほど苛立ちが募り、恭太はついにスマホを傍らへ放り投げた。稚菜からの返信などもう気にも留めず、そのまま車を出して綾奈を病院へと送り届けた。それから数日、恭太は稚菜に一切連絡を取らなかった。新しい番号を用意し、S
Ler mais