白石佳乃の証言は、雅子の書面回答と一致した。5年前、ホテルのカフェに撮影チームを待機させたのは、水原沙織。どんな場面を撮るか指示したのは、桐生雅子。写真の編集と記事の配信費用を払ったのは、瑞城コンサルティングだった。雅子は弁護士の立会いのもと、追加の聴取を受けた。「写真を不倫の証拠に使うつもりでしたか?」「最初からそう考えていたわけではありません」「いつから、その目的で使ったのですか?」雅子は水の入ったコップを指でなぞった。「彰人が写真を見せて、男と2人きりで会ったように見せられると言ったときです」「事実ではないと、わかっていましたか?」「元の写真には、ほかの人たちが写っていると知っていました」「それでも息子さんに見せたのですか?」「はい」「一ノ瀬紗月さんに確認する機会を与えましたか?」「いいえ」質問が続くほど、言い訳のできる余地は狭まった。捜査官は、雅子自身が指示したことと、彰人から聞いたことを分けるよう、繰り返し求めた。撮影は雅子の指示だった。瑞城の口座と偽造合意書は、彰人が提案した。石崎を選んだのも彰人だが、アクセス権限を承認したのは雅子だった。「彰人さんに言われたからやった、ということですか?」「違います」雅子は、ゆっくりと答えた。「私は断れました。それでも、承認しました」そのひと言は、責任を彰人だけに押しつけるものではなかった。蓮司が自分の選択を切り分けて認めたように、雅子もようやく、自分の責任を口にし始めた。雅子は1度も、桐生のためだったとは言わなかった。蓮司が先に求めたわけでも、弁護士が助言したわけでもない。その言葉を付けた途端、自分の選択をまた目的の陰に隠してしまう。それが、やっとわかったようだった。供述の録音が紗月に届いた。彼女はルミエールの事務所で、1人で聞いた。雅子の声は、記憶の中より老いていた。『一ノ瀬紗月さんは
Última atualização : 2026-10-04 Ler mais