土曜日の2時間の面会は、外で過ごすことになった。行き先は、近所の子供科学館。入り口が狭く、週末は混む場所だったが、湊が自分で選んだ。蓮司は約束の10分前に着き、チケットを買おうとして手を止めた。紗月が来る前に、勝手に予定を決めないと約束していた。3人がそろってから、湊が券売機で恐竜展と光の実験室のどちらかを選んだ。長く悩んだ末に押したのは、光の実験室だった。「恐竜じゃなくていいの?」蓮司が聞くと、湊は答えた。「きょうりゅうは、こんどみればいいよ」蓮司は、その言葉を胸にしまった。展示室で湊は、懐中電灯を使って壁に影を作った。蓮司もうさぎをまねてみたが、耳が3本になった。「それ、うさぎじゃない」「何に見える?」「うちゅうじんのニワトリ」湊が笑い、紗月もついにこらえきれず笑った。蓮司は2人を交互に見た。この瞬間を撮りたくなったが、スマートフォンは出さなかった。写真には、許可がいる。湊に撮っていいか聞こうかと思い、やめた。展示に夢中になっているところへ尋ねるだけでも、楽しんでいる時間を途切れさせてしまうかもしれない。覚えておきたいと思ったからといって、毎回記録する必要はなかった。紗月は彼がスマートフォンをしまうのを見たが、何も言わなかった。尋ねずにこらえた行動を1つずつ褒めれば、また評価されるための振る舞いになってしまうかもしれない。見学を終えると、アイスクリームの店へ行った。湊はイチゴ、紗月はコーヒー味。蓮司は何も頼まなかった。「パパも、たべて」「大丈夫だよ」「じゃあ、ぼくの、とけそうだから、もってて」蓮司はアイスのカップを受け取った。そのとき、スマートフォンが鳴った。画面に出たのは、桐生グループの元財務担当役員の名だった。5年前の瑞城コンサルティングの資金の流れを知っているという人物だ。蓮司は出なかった。湊は実験室の土産店へ駆けていった。紗
Last Updated : 2026-09-29 Read more