彰人の初公判は、2か月後に決まった。判決までは、さらに時間がかかる見込みだった。紗月はカレンダーを見たが、その日に特別な印をつけなかった。出廷が必要なら弁護士が知らせてくれる。そのとき予定を調整すればいい。判決が出るまで、人生を止めておくつもりはなかった。月曜の朝、高梨美緒が再びルミエールを訪ねてきた。1か月前、結婚を進めるか決められず、契約しなかった客だった。今回は、恋人は一緒ではなかった。「結婚しないことにしました」美緒は笑おうとして、目を赤くした。「お祝いしてもらいに来る場所に、こんな話をしに来ていいのか、迷って」紗月はティッシュを差し出した。「ご自身の決断を確かめにいらしたのなら、構いません」別れた理由を根掘り葉掘り聞きはしなかった。暴力や強要がなかったか、安全のために必要なことだけを慎重に尋ねた。美緒は、危険が理由ではなく、結婚後の子供と仕事への考えが、最後まで合わなかったのだと話した。「どちらかが間違っているわけではないのに、ずっと先延ばしにしていたんです」「では、キャンセルの連絡についても、お2人で合意済みですか?」「はい。でも親たちは、もう一度会ってみなさいって」紗月は相談記録に、『関係の修復』ではなく『仮予約のキャンセル支援』と書いた。プランナーが、2人をより戻しさせる役目まで負うべきではなかった。「私、臆病ですよね。式場まで調べて、親にも話したのに」「準備した時間が惜しいからといって、結婚しなければいけないわけではありません」「社長は、惜しくないですか? 2回も相談に乗ってくださったのに」「相談料はいただいています」美緒は泣きながら笑った。紗月は、押さえてあった撮影スタジオとドレスショップのキャンセル期限を確認した。契約前の相談段階で入れた仮予約なので、損失は大きくなかった。スタジオの予約金は全額返金できたが、ドレスショップは仮縫いの準備費を差し引く必要があった。紗月は領収書と作
Última atualização : 2026-10-07 Ler mais