Semua Bab 元夫の結婚式を、私が担当することになりました: Bab 131 - Bab 140

170 Bab

第131話 海の見える食卓

「パパ、これは焦がしちゃだめだよ」「焦がさない。タイマーをかけた」「さっきのソーセージは、はじけたじゃん」「あれは、中身が詰まりすぎていたんだ」「また言い訳」野菜の籠を持ってペンションのテラスへ出た紗月は、思わず笑った。蓮司が湊に注意されながら、トングを握っている。網の上では、海老の殻が赤くなっていた。金曜の仕事を終えてから出発したので、着いたときには海は暗かった。車でうとうとしていた湊も、荷物を下ろすと目を覚ました。明日、恐竜を見に行くまで寝ないと言い張ったくせに、席についてからは欠伸ばかりしている。「炭を少し横へ寄せたらどうですか。火が強すぎますよ」「監督が2人いるな」「言うことを聞かないと、トングは没収です」蓮司が、トングを胸元へ引き寄せた。湊が声を立てて笑い、海老を1匹指さした。紗月は熱い殻をむき、冷ましてから子供の皿に置いた。「パパのも、むいてあげて」「パパには手があるでしょう」「パパの手は、トングを持ってるでしょ」待っていたとばかりに、蓮司が紗月を見た。呆れて笑いながら、もう1匹むく。皿に置こうとすると、彼が身をかがめて、そのまま食べた。「子供の前で、何をするんですか」「その子供が、やってと言ったんだろ」湊はもう、別の海老を選んでいた。紗月は蓮司の袖の塩粒を取った。2人の指輪が、かすかに触れ合った。最後の貝を皿へ移しかけた蓮司が、紗月の前の荷物リストを見た。水着も、海遊びのおもちゃもない。湊の選んだ恐竜と本、それに着替えがすべてだった。「思ったより、荷物が少ないな」「明日帰ったら、洗濯物は増えますよ」「それは俺がやる」「色物と白いものは、分けてくださいね」蓮司は笑って、わかったと答えた。洗濯の話ばかりだと湊が本を持って中へ入る。紗月が追って立とうとすると、蓮司が空の皿を受け取った。「本は俺が読むよ。座っていて」紗月は皿から手を離し、背もたれに体を預けた。蓮司が湊についていくと、テーブルの下へ伸ばした足首
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-17
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第132話 250万円の花嫁

「足りない予算は、私が出せばいいんです。それを、嫌だと言うんですよ」高倉典子(たかくら のりこ)は、紗月が座る前に話し始めた。美咲の予算ノートは、すでに新郎の高倉祐介(たかくら ゆうすけ)のほうへ押しやられていた。「500人は呼ばないと。祐介の父が、どれほど顔が広いと思っているんですか。草むらに何人か座らせておしまいなんて、誰が責任を取るんです?」「お義母さん、草むらではなくて、屋内も使えるゲストハウスです」「同じことでしょう。ホテルがあるのに、どうしてわざわざそんな場所へ?」美咲は最後まで説明できず、手を下ろした。祐介が母に茶を勧めた。「母さん、まず話を聞こう。一ノ瀬さんもいらしたんだし」美咲には、少し我慢してという目配せをした。紗月はノートを自分へ引き寄せず、美咲の前へ戻した。「お2人で決めた予算は、250万円でよろしいですか?」「はい。親に頼らずに、やりたいと思っています」美咲が答えると、典子が鞄からカードを出した。「いくらでも出すと言っているのに。1,000万でも2,000万でも、ちゃんとしたところを押さえてください。うちの客だけで、400人は来ますから」祐介は黙ってカードを見た。美咲は膝の上で、指を曲げたり伸ばしたりしていた。紗月はカードではなく、ノートの最初のページを開いた。会場、食事、ドレス、撮影。それぞれの横に、2人が問い合わせた日付がある。消した数字の下には、書き直した跡も残っていた。「この食事代は、何名分ですか?」「200人です。それぞれ100人ずつ呼ぶことにしました」「どうして、あなたが人数を決めるの?」典子の声が高くなった。紗月は彼女へ体を向けた。「お母様のご希望も、別に伺います。まずは、お2人が相談を申し込まれたときの内容を、最後まで聞かせていただきますね」典子は不満そうに腕を組んだ。美咲がノートから小さなメモを外した。招待客へ贈る、短い手紙が書いてあった。「花をたくさん飾らなくてもいいんです。その代わり、食事の席は狭くしたくなくて。遠くか
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第133話 ドレスルームの攻防

典子が選んだドレスは、首元までビーズで埋め尽くされていた。運ぶ店員も、両手で重さを支えている。「レンタル料は180万円ですって? これくらいは着ないとね」典子が美咲を見てうなずいた。美咲は、その隣のシルクのドレスから目を離せなかった。「あちらも、着てみたいです」「どうして、そんな地味なものを? 照明が当たれば、ビーズのほうがずっときれいよ」祐介が美咲へ身を寄せた。「母さんが選んだのも、一度着てみよう。着てみて違ったら、そう言えばいいから」美咲は黙って試着室へ入った。紗月は店員に、2着とも同じ照明と角度で写真を撮るよう頼んだ。カメラの高さと、花嫁が立つ位置をそろえてもらう。カーテンが開くと、典子はすぐに手を叩いた。「ほら。ずっと品があるじゃない」美咲は鏡の前で、手の置き場に迷い、裾ばかり触っていた。顔を伏せるたび、胸から続く飾りが顎の下に当たる。紗月が一歩近づいた。「息苦しくありませんか? 少し腕を上げてみましょうか」「ここが、引っ張られます」美咲が肩を示した。担当者が背中の留め具を調整したが、表情は変わらなかった。「入場の間だけ我慢すればいいのよ。きれいな服は、多少不自由なものです」典子が言うと、紗月は椅子を持ってきた。「ご挨拶も、撮影もありますから。座ったときも見てみましょう」美咲は裾を集め、やっと腰を下ろした。首の飾りに押された肌を、指先でこする。ようやく祐介が身を乗り出した。「痛い?」「少し」「どうして、すぐ言わなかったの?」美咲は鏡越しに、彼を見た。「着る前にも、苦しそうだって言いましたよね」祐介が口を閉じた。紗月は担当者に、飾りが当たるところから外すよう頼んだ。「このドレスが悪いのではありません。ただ、美咲さんの求める着心地とは違いますね。もう1着も着て、比べましょう」典子は何か言いかけたが、担当者がカーテンを動かすと黙った。2着目は、日本のデザイナーによる
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第134話 消された席

席を確定する打ち合わせに典子が持ってきた図面は、美咲の選んだ会場のものではなかった。450席のホテルの図面に、赤い印がびっしり入っていた。「新郎側が380席、新婦側は70席。これで、ちょうど収まるわ」真帆が紗月を見た。紗月はホテルの図面をどけず、隣に予約済みのゲストハウスの図面を広げた。「お母様、私たちが準備しているのは、こちらです。200名の予定で」「ですから、こちらへ移すんです。知り合いが、空いている時間を押さえてくれるそうですから」典子が、新婦側とした区画をペンで叩いた。「地方のご親戚を何人か座らせればいいでしょう。職場のお友達は、先に食事の会場へ行ってもらえば」美咲が顔を上げた。「どうして、私の友達は式を見られないんですか?」「席がないんですもの。商店会の方たちを、立たせておくわけにはいかないでしょう」「友達だって、私を見に来てくれるんです」「食事も出さないと言っているわけではないのに、何なの?」美咲は持参した名簿を広げた。同僚の名前の横にあるのは、一緒に働いた年数ではなく、交通手段と連絡先だ。遅く到着する人は後ろの席に、というメモもあった。「遠くから来る友達には、早めに来て一緒に写真を撮ろうって言いました。それなのに、下で食事をして待っていてもらうんですか?」典子が答える前に、美咲は祐介を見た。「両方100人ずつって、決めましたよね。祐介さんも、自分で言ったでしょう?」祐介は名簿を持ち上げ、また置いた。「そうだね。でも、父さんの客が思ったより多くて。もう声をかけた人もいるし」「私の友達には、まだ招待状を渡していないから、取り消していいってことですか?」「そういう意味じゃないんだ。あとで、2人で食事に招けば……」美咲が名簿を折った。紙の音で、祐介の言葉が止まった。「では、祐介さんのお友達を、あとで招きましょう」「美咲」「どうして、先に私の友達を減らすんですか?」紗月は口を挟まなか
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第135話 夫になるということ

「祐介、立ちなさい。引き受けるところは、ほかにもあります」典子が息子の腕をつかんだ。祐介は立たなかった。大学の友達の名前の横に記された人数を見ていた。初めに、美咲と一緒に決めた人数だった。「母さん、少し待って」「まだ、何を話すの?」祐介が母の手を外した。声は大きくなかったが、同じことを繰り返しもしなかった。「さっき、美咲の友達には、あとで食事をごちそうすればいいと言った。母さんの友達には、そんなこと言えないのに」「うちのお客様と、一緒にするの?」「僕にはよく知らない相手だから、簡単に言えただけなんだ。美咲にとって、大切じゃないからじゃなくて」美咲は彼を見て、目を伏せた。祐介は名前の隣の空白を、指先で押さえた。「昇進試験の勉強をしていたとき、美咲が毎週末、弁当を持ってきてくれたんだ。そのために残業を替わってくれたり、助けてくれたりした人も、この中にいる。僕も世話になったのに、関係のない人みたいに、外せと言ってしまった」典子は不快そうに椅子を引いた。「それで、お父さんのお客様を呼ばないと言うの?」「追加で声をかけた方には、僕から連絡する。最初に決めた200人からは、変えません」「どうやって、全部に電話するつもり?」「するしかないでしょう。美咲が自分のお客様に断るより、僕が連絡するべきだから」紗月は真帆を呼び、変更前後の名簿を持ってきてもらった。祐介は当初の名簿と追加分を分けた。典子の380人の一覧から、先に確認すべき名前へ印をつける。「今日連絡できる方には、僕がかける。父さんに直接相談が必要な方は、夜、会って話すよ」典子の顔が赤くなった。「ここで私だけ恥をかかせれば、気が済むの?」「母さんに恥をかかせたいんじゃない。でも、美咲にだけ我慢させるのはやめる」美咲はペンを置いた。祐介が初めて、自分の言葉で母に説明していた。彼は廊下へ出て、最初の電話をかけた。ガラス越しに、何度か頭を下げる姿が見えた。長い通話ではなかったが、戻ったときには、少し声がかすれていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-18
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第136話 救急外来の前で

紗月は救急外来の入り口で足を止めた。面会してよいか森岡側に確認した職員が、中を示した。森岡はベッドに横たわり、そばに立つリーヴェ・ガーデンの社員が、しわになった書類を持っていた。「朝からずっと、銀行と取引先を回っていたんです。昼食も取らずに」紗月は医療スタッフの説明が終わるまで待った。起き上がろうとする森岡を、社員が背中から支え、横になっているよう頼んだ。「一ノ瀬さん、花が手に入らなければ……」「まずは、お体のことを。納品の話は、社員の方とします」森岡は、社員が持つ手形の返却明細へ目を向けた。3枚、計3,200万円。ヴェールワンが現金で精算すると約束した日は、もう過ぎていた。真帆が廊下へ出て、業者と電話した。明日の早朝に仕入れる花の代金が用意できないという。紗月は持参した発注一覧を開いた。そこへ、卸業者が2人来て、森岡を探した。ひとりがベッドのほうへ向かおうとして、紗月が前に立った。「今、治療中です。お話は外でお願いします」「こっちも、払ってもらえなければ困るんです。明日の朝までに1,500万円、入らないと」数日も待っているのだと、入金の約束が記されたメッセージを見せられた。紗月は話を聞きながら、処置室の入り口から少し離れた場所へ案内した。「どの注文の代金か、見せてください。ルミエールの発注分から確認します」「では、そちらで返してくれるんですか?」「森岡さんの債務を、すべて引き受けるという意味ではありません」病室から離れた休憩スペースに座った。真帆とリーヴェ・ガーデンの社員が、明細を照らし合わせる。美咲の式で使う花と、来週の3件分に印をつけた。他社の注文に混じった費用は、別に分けた。「うちの発注分は、確定した材料費の支払いを早めましょう。仕入れ先と数量を確かめて、直接支払う形で」真帆が急いで電卓を叩いた。「まず、運転資金を確認します。給与と、決まっている支払いには手をつけられません」「そこは除いて計算して。足りなければ、お客様と花の構成を見直す必要があるわ」
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第137話 譲れない一線

金曜の午後、美咲の式場のロビーに、お祝いのスタンド花が届いた。ひとつやふたつではない。入り口から並べても、まだ置ききれなかった。「中へ入れて。バージンロードの両側に置けばいいでしょう」典子が作業員を急かした。杏奈が荷物を載せた台車を止めた。「お母様、大きなスタンド花は、中へ入れないお約束です。ここに置くと、お客様の通り道がふさがってしまいます」「うちのお客様が贈ったものを、外へ置くの?」典子が花についた札を持ち上げた。商店会や取引先の名前が、大きく記されている。30基あまりを全部入れたら、受付までの道も狭くなる。「処分するのではありません。まず外の保管場所へ移して、贈ってくださった方のお名前は別にまとめます」「若いあなたに何がわかるの。責任者を呼んで」典子が通り抜けようとして、杏奈の肩を押した。杏奈がよろけて台車をつかんだ、そのとき、祐介がロビーへ入ってきた。「母さん、人を押さないで」「祐介、あなたの結婚祝いの花を、全部外へ出せと言うのよ」祐介は、まず杏奈の様子を確かめた。大丈夫だという返事を聞いてから、母を見た。「贈らないように、僕から連絡すべきだったのに、漏れていました。まずは移動をお願いします」作業員のひとりが、典子の顔色をうかがった。祐介は自分の名前と連絡先を渡した。「僕が責任を持って対応します。こちらの通路は空けてください」典子の顔が赤くなった。「スタッフの前で、母親を無視するの?」「スタッフの方に、約束を破るよう求めるほうが困らせるよ。僕がサインした内容でしょう」祐介は携帯電話で、花を贈らないよう頼んだ案内を見せた。職場や同窓会にも、同じものを送っている。「僕の友達の花も、入れないことになっています。贈ろうとしてくれた人には、別の形でお祝いしてほしいと伝えた」「あなたの友達と違って、この方たちは、お父さんの仕事を助けてくださるのよ」「だから、僕から電話します。会場が狭く、中へ置けないと。母さんのせいだとは言わないから」典子は答
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第138話 いちばん自分らしい花嫁

美咲は控室の鏡の前で、最後にドレスのウエストを確かめた。大きく息を吸っても、首は苦しくない。紗月にブーケを渡されると、笑った。「昨日より、手が冷たいです。緊張しないと思っていたのに」「緊張していても、歩けますよ。急ぎすぎないようにだけ」ドアの外で、友達が名前を呼んだ。美咲は立ち上がり、自分でドアを開けた。花を持ってきた友達が、ドレスを見て少し言葉を失い、それから携帯電話を出した。「本当に、美咲に似合ってる」美咲がカメラに笑いかけた。紗月は椅子を少しずらし、友達も一緒に座れるようにした。地下の食事会場で待つはずだった人たちが、花嫁の隣に集まった。会場には両側100席ずつ、席が用意されていた。親戚と友達が交じっていても、名前と関係が書かれた案内のおかげで、長く迷う人はいない。杏奈は遅れて来た招待客を空いた通路へ導き、ドアを閉めた。典子は前列で、手袋の先を整えていた。隣の知人が、入り口を振り返った。「花がごちゃごちゃしていなくて、いいですね。花嫁さんのお顔も、よく見えそう」典子は答えず、椅子の上の小さなカードを取った。美咲が書いたお礼の言葉がある。捨てずに、鞄へ入れた。午前11時30分。司会が花嫁の入場を告げた。美咲は父の腕につかまった。ドアが開く直前、父が聞いた。「ゆっくりで、いいんだよな?」「うん。私も、速くは歩けないから」2人で笑った。音楽が流れ、美咲は一歩踏み出した。シルクの裾が足に合わせて動く。うつむかなくても歩けるから、客席が見えた。同僚が小さく手を振った。大学の友達は、もう目元を拭いている。美咲はそちらへ笑いかけてから、前に立つ祐介を見た。祐介は、迎えに出るタイミングを少し逃した。紗月の合図で、遅れて動いた。その姿に、美咲は笑いをこらえられなかった。「私を見ていて、忘れたんですか?」「うん」祐介は答え、父に挨拶した。受け取った美咲の手が冷たく、ブーケの下でそっと包んだ。誓いは、2人が自分で書いた短い言葉だった。祐介は紙を持ち、美咲を見た。
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第139話 帰宅後のワイン

「今日の打ち上げは、ここまで。明日休みの人には、仕事の電話をしないでくださいね」真帆がグラスを置くと、杏奈が両手を上げた。「それ、私に言っています?」「昨日も退勤してから、照明の写真を送ったでしょう」「あれは本当に、きれいだったから送ったんです」紗月は笑ってメニューを閉じた。土曜の午後8時から集まった席だった。美咲の式の精算も機材の返却も済ませ、社員たちの話す速さが、いつもより増している。リーヴェ・ガーデンの社員は先に立ち、森岡へ現場の写真を送ると言った。紗月は納品の確認を終え、精算の予定も改めて伝えた。社員は社長にも支払日を伝えると、メモを持った。9時を少し過ぎた頃、蓮司からメッセージが来た。【前に着いた。急がなくていいよ】紗月がコートを取ると、杏奈が残念そうな顔をした。「社長、もう1杯だけ」「私はもういいわ。その代わり、食事を追加して。タクシー代も精算してね」外では、蓮司が車の横に立っていた。湊は後部座席でベルトをしたまま、こくりこくりと船をこいでいる。紗月が窓からのぞくと、蓮司が笑った。「ママを迎えに行くと言ってついてきたのに、途中で眠った」「家で待っていてくれてもよかったのに」「一緒に行きたいって。俺も、早く顔を見たかったし」彼がマフラーを巻いてくれた。酒の匂いがするかと思い、紗月は少し顔をそらした。「そんなに飲んではいませんよ」「聞いていないけど」「つい、自分から言ってしまいますね」蓮司は結び目を直し、口元を上げた。「楽しかったなら、それでいい」乗り込む前に、紗月は彼のコートを引いて、短く口づけた。蓮司が一瞬、黙る。湊が身じろぎし、2人で同時に窓を見た。「行きましょう。起きたら、帰ってからまた本を読まないといけませんよ」***湊をベッドに寝かせた蓮司が、リビングへ戻ってきた。シャツの袖をまくりながら、テーブルのワインボトルを見た。「まだ、もう1杯いける?」「
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-19
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第140話 ヴェールワンの襲来

月曜の朝、最初にルミエールのロビーへ来たのは、花嫁だった。受付が予約の名前を聞くと、彼女は先に契約書を出した。「こちらへ行くように言われたんです。今週末、式なので」紫色のロゴが入った、ヴェールワンの契約書だった。あとから来た男性は振込明細を、協力業者の社員は未払いの一覧を手にしていた。紗月が下りたときには、受付の前に人が重なって立っていた。「800万円、払ったんですよ。今さら予約がないって。こちらでやってくれるんですよね?」「こっちは花代も、まだなんです。誰に請求すればいいんですか?」真帆が横へ来た。ヴェールワンが送ったという案内文を持っていた。【ルミエールとの事業承継合意に基づき、未実施の挙式および精算業務は、ルミエールが担当する予定です】紗月は最後まで読んだ。自分が署名した覚えのない合意だった。提案書を送ってほしいと頼んだだけの話が、いつの間にか契約を引き継ぐという告知に変わっていた。「ヴェールワンには、つながる?」「相談オフィスは閉まっていて、代表番号も出ません。業者の方は、連絡を絶ったようだと。ただ、廃業したかまでは確認できていません」紗月は、まず自動ドアの前の人たちを、奥の空いた場所へ案内した。入り口をふさいで言い争えば、入ってくる人とぶつかる。「代表の一ノ瀬紗月です。最初に、お伝えしなければならないことがあります。ルミエールは、ヴェールワンの事業や債務を引き継ぐ契約を結んでいません」前にいた花嫁の顔が、こわばった。「ここでも、違うんですか? また、間違ったところへ来たんですか?」彼女が携帯電話を見下ろした。同じ番号へかけた履歴で、画面が埋まっていた。紗月は取り上げず、一緒に画面を見た。「まず、その案内がどう届いたのか、確認します。今ここで、すべての式を引き継ぐとはお約束できません。ただ、どの予約が実際に残っているか、確かめる方法を探します」「探している間に、週末が過ぎたら?」新郎が口を挟んだ。紗月はその質問を流さなかった。「今週の方は、優先してご相談できるよう、
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