「足りない予算は、私が出せばいいんです。それを、嫌だと言うんですよ」高倉典子(たかくら のりこ)は、紗月が座る前に話し始めた。美咲の予算ノートは、すでに新郎の高倉祐介(たかくら ゆうすけ)のほうへ押しやられていた。「500人は呼ばないと。祐介の父が、どれほど顔が広いと思っているんですか。草むらに何人か座らせておしまいなんて、誰が責任を取るんです?」「お義母さん、草むらではなくて、屋内も使えるゲストハウスです」「同じことでしょう。ホテルがあるのに、どうしてわざわざそんな場所へ?」美咲は最後まで説明できず、手を下ろした。祐介が母に茶を勧めた。「母さん、まず話を聞こう。一ノ瀬さんもいらしたんだし」美咲には、少し我慢してという目配せをした。紗月はノートを自分へ引き寄せず、美咲の前へ戻した。「お2人で決めた予算は、250万円でよろしいですか?」「はい。親に頼らずに、やりたいと思っています」美咲が答えると、典子が鞄からカードを出した。「いくらでも出すと言っているのに。1,000万でも2,000万でも、ちゃんとしたところを押さえてください。うちの客だけで、400人は来ますから」祐介は黙ってカードを見た。美咲は膝の上で、指を曲げたり伸ばしたりしていた。紗月はカードではなく、ノートの最初のページを開いた。会場、食事、ドレス、撮影。それぞれの横に、2人が問い合わせた日付がある。消した数字の下には、書き直した跡も残っていた。「この食事代は、何名分ですか?」「200人です。それぞれ100人ずつ呼ぶことにしました」「どうして、あなたが人数を決めるの?」典子の声が高くなった。紗月は彼女へ体を向けた。「お母様のご希望も、別に伺います。まずは、お2人が相談を申し込まれたときの内容を、最後まで聞かせていただきますね」典子は不満そうに腕を組んだ。美咲がノートから小さなメモを外した。招待客へ贈る、短い手紙が書いてあった。「花をたくさん飾らなくてもいいんです。その代わり、食事の席は狭くしたくなくて。遠くか
Terakhir Diperbarui : 2026-10-17 Baca selengkapnya