2週にわたる緊急の挙式4件が終わった、日曜の夜。紗月は最後の納品確認書を受け取った。ファイルごとに、表紙の日付も場所も違っていた。最初の週末の2件は支払い記録まで整理できたが、今日終えた2件は業者の返答待ちだった。真帆と杏奈は先に帰った。紗月は各担当者が明日確認する項目だけを残し、書類を片付けた。今日使わなかった花の費用を1件確認し直しているうちに、思ったより遅くなっていた。午後11時、ファクスの受信音が鳴った。次々出てくる紙を見て、紗月は立ち上がった。発信元の番号は空欄だった。写真を印刷したように、片隅が暗い。【一ノ瀬紗月社長。公表された4億円だけを見ていてはいけません】その後ろに、挙式時間と取引先、金額の書かれた表が続いていた。ヴェールワンのロゴはない。元の帳簿の一部を撮って送ったものなのかどうかも、定かではなかった。紗月はペンを置いた。まず受信時刻と枚数を確認する。原本には何も書き込まず、別にコピーを取った。表には見覚えのあるホテルの名前があった。キャンセルされた挙式枠を先に供給してもらったという記載と、担当者の名前も見える。【榊圭吾/グランド・キリュウ・ホテル 元ウェディング事業部統括責任者/優先配分関連 5,000万円】【三枝隆史/藤堂レジャー 東京クラブ/キャンセル枠供給関連 3,000万円】紗月は名前を声に出さなかった。紙に書かれているからといって、実際に支払われたと確認できたわけではない。ただ、詩乃の挙式のキャンセル精算で見た日付に似た項目もあり、捨ててしまうこともできなかった。最後のページの下に、短い文があった。【追加の資料については、改めて連絡します。私の身元を先に明かさないでください。T.O.】紗月はイニシャルの横を、しばらく見つめた。連絡先はない。返事をどこへ送ればいいのかも書いていなかった。ファクスの最下段を見直す。切れた行に、別の日付が半分だけ残っている。詩乃との会話も、一部が欠けただけで別の意味に変えられた。今は、この表の前後に何があるのかさえわからない。ファイル名に受信日を入れ、弁護士へ送る説明に
Last Updated : 2026-10-24 Read more