第11話 最終電車のあとに、存在しない列車が来る その列車は、時刻表には載っていなかった。 駅員も知らない。 運行記録にも残らない。 それでも午前零時四十六分になると、線路の向こうから二つの前照灯が近づいてくる。 東北地方某県。 山と田畑に囲まれた小さな無人駅で、その現象が最初に防犯カメラへ記録されたのは六月十二日の深夜だった。 駅を通過する最後の営業列車は、上りが午後十一時五十八分。下りが翌午前零時七分。 それ以降、始発まで列車は来ない。 ところが午前零時四十六分。 ホームへ一人の少女が現れた。 白いブラウス。 紺色のスカート。 肩まで伸びた黒髪。 年齢は小学校高学年ほど。 少女は改札側から入ってきたのではない。 防犯カメラの映像を何度再生しても、誰もいなかったホームの中央へ、いつの間にか立っている。 左手首には、赤い紐が巻かれていた。 少女は線路の向こうを見ている。 午前零時四十六分三十秒。 映像の奥が明るくなった。 列車が入ってくる。 古い車両だった。 地方ローカル線で何十年も前に使われていたような、二両編成の車両。 防犯カメラには映っている。 しかし、鉄道会社の運行記録には存在しない。 列車は少女の前で止まった。 扉が開く。 少女は乗らない。 ただ車内を見つめている。 一分ほどして扉が閉まり、列車は闇の中へ走り去る。 翌日も同じだった。 その翌日も。 三日続いたとこ
最終更新日 : 2026-09-29 続きを読む