「理事、正気ですか。各自の自慰でタイミングを合わせろ、と?」絵奈は呆れて乾いた笑いをこぼした。だが泰輝は笑わない。巻物の同じ箇所に指を置き、絵奈の答えを待った。「じゃあ本当に俺と肌を重ね、体を合わせたいのか、神崎」「絶対に違います」「なら選択肢はこれだけだ。神経がここまで同期しているなら、各自自分の体を刺激しても、タイミングさえ噛み合えば脳は同じ絶頂として認識する」泰輝はためらいなく、修復室奥の男女更衣室を指した。絵奈は二つの扉を交互に見た。壁があるからといって信号まで遮られるわけではない。他に方法がないのか問い返したかったが、目の前の秘文は同じ条件しか示さない。ドアノブを握ったまま、しばらく手に力を込めた。薄い間仕切り一枚を隔てた更衣室の距離はおよそ三メートル。十メートルの安全圏の内側でありながら、視覚的には完全に遮断された空間だった。「各自、自分の部屋へ入れ。通話はスピーカーにして、タイマーの音を一緒に聞く。三分以内に射精と絶頂のカウントを合わせる」「はあ……本当に頭がおかしくなりそう」絵奈は頭を掻きむしり、女子更衣室へ入った。カチリと鍵が落ちると、狭い空間に張り詰めた沈黙と、ひどい羞恥が満ちる。壁の向こうで泰輝がベルトを外す重い革の音が、鳥肌が立つほど鮮明に聞こえた。――カチッ。「ストップウォッチを作動した。三分の兆候を始める」スピーカー越しに落ちてくる、低く沈んだ声。絵奈は震える手でスーツスカートをまくり、すでに湿って張りつくシルクのショーツの中へ指を入れた。「はあ……うっ……!」自分の指がいちばん敏感な核に触れた瞬間、壁の向こうの泰輝の口からも、荒い息が喉で詰まる音が漏れた。「くッ……神崎、指の動きが荒すぎる……ゆっくりしろ……」「理事こそ……んぅっ! 手の力を抜いてください……」感覚の完全な同期。絵奈が柔い一点を愛撫する感触は、泰輝の掌の中で跳ねるものへそのまま伝わり、泰輝が自分を強く絞って擦り上げる鈍い摩擦は、絵奈の内壁を容赦なく締めた。――するり、ぬっち。荒い呼吸と粘つく摩擦音が狭い更衣室を満たす。触っているのは自分の体なのに、頭へ流れ込む感覚は完全に他人の野蛮な手つきだった。スピーカー越しの絵奈の浅い息は、泰輝の理性を崖へ追い込む。普段、眼鏡の向こうで冷たく光る目、隙のないスーツの裏に隠れていた女の声が、
Last Updated : 2026-09-26 Read more