後日、光貴がもう一度会いたいと言ってきた。待ち合わせ場所は、かつてよく通ったカフェだった。けれど、同じ店でも、何もかもが変わってしまっていた。彼は尋ねた。「どうすれば、許してもらえる?」私は少し考えて、こう言った。「私の部下たちを業界から締め出したわよね。だったら、落とし前として、あなたが持っている会社の株式と全財産を私に譲ってくれない?」彼は一切の迷いもなく、その場で顧問弁護士に契約書を用意させ、保有する全株式と個人資産を私に譲渡する契約書に署名した。私は鼻で笑って言った。「私に土下座させておいて、雫が私を叩くのも黙って見てたわよね」彼は恐る恐る私の手を握り、その手で自分の頬を思いきり2度叩いた。私が何の反応も示さないのを見て、今度はテーブルの上の果物ナイフに手を伸ばそうとした。私は片眉を上げて彼を見た。「今度は、私があなたの子供を死なせたって責めないの?」光貴は慌てて首を振った。「君が一番大事なんだ!君が嫌なら、あの墓だって掘り返していい!」私はしばらく彼を見つめていた。それから、ふっと笑いを漏らした。「ふっ、滑稽ね……あなたがこれだけのことをしてくれても、私、やっぱりあなたのこと好きになれないみたい」彼の瞳が、すっと暗く沈んだ。私はふと興味が湧いて、尋ねた。「どうして、私のこと好きになったの?私たち、犬猿の仲で、潰し合うような関係だったのに」その話を振られて、彼は何かを思い出したように目を細めた。「ずっと前は、確かにそうだった」私が彼の案件を横取りし、会社を潰しにかかっていた頃、彼は私を見るだけでも苛立っていた。「でも時間が経つにつれて、ふと気づいたんだ。君が勝った後、勝ち誇って俺を見下ろすあの姿が、綺麗だって。ああいう目で見られたかった。俺だけを見てほしいと思った。それで、気づけば、好きになってた」私は頷いた。「へえ。でも、気づいてる?あなたの愛が、私にもたらしたのは吐き気がするほどの絶望だけだったのよ」彼は胸を刺されたように、ふっと目を閉じた。しばらくして、掠れた声で笑いながら言った。「……っ。分かった」彼はテーブル越しに、1通の書類を差し出した。すでに署名済みの、離婚届だった。私は少し驚いたが、首を振った。バッグの中から
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