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昼は潔癖、夜は淫魔 のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 20

40 チャプター

11話. 政敵の急襲

翌日の午前、久世家の本邸の奥書斎には、薄氷を踏むかのような張り詰めた緊張感が漂っていた。昨晩、蓮花の冷たい手技によって一度魔気を吐き散らしたおかげで、道真はどうにか身なりを正し、机の前に座ることができていた。蒼白に沈んだ顔色に涼やかな眼差し、乱れのない凛とした背筋は、まさしく江戸随一の清廉な当主の姿そのものであった。しかし、書物を握り締めている指先は、未だ昨晩の凄まじい快楽と脱力感の名残によって、微かに震えていた。筆を執れば手首に残る先走りの蜜の感触が脳裏に蘇り、震える筆先から墨が滲んでしまう。その時、用人の茂平が血相を変えて中庭を横切り、駆け込んできた。「と、殿! 一大事でございます!」道真は書物を置き、眉根を鋭く寄せた。「武家の屋敷で何をそのように取り乱すか。礼を尽くし、詳しく申し述べよ」「柳沢子明(やなぎさわ・しめい)様が、幕府の役人や目付方を引き連れ、玄関先へと乗り込んでまいりました! 殿のご不例をお見舞い申すという名目で、あろうことか奥書斎へ直に押し入ろうとしております!」ドクン。道真は広げていた上申書の上に手のひらを置いた。見舞いであるならば、まず使者を立てて意向を伺うのが筋である。彼は戸口へ向かおうとする用人を手振りで制し、奥の小部屋を振り返った。部屋の奥から微かに聞こえていた衣擦れの音が、そこでピタリと止まった。道真は机の上から手を引いた。指先に墨がついていた。柳沢子明。とうとう己に仕掛けた換陽の術の呪いが功を奏し、淫乱な狂人に成り果てたかどうか、自分の目で直接確かめに乗り込んできたに違いなかった。さらに背筋を凍らせたのは、今まさに奥の小部屋で、蓮花が道真の着替えを整えながら滞在しているという事実であった。「若様、煎じ終えた薬湯の滓は裏庭へ捨てましょうか……あら?」外の騒ぎを聞きつけた蓮花が戸を開けて出てこようとした瞬間、道真は雷のような速さで駆け寄り、彼女の口元を掌で強く塞いだ。「んむ……?!」「静かにせよ……! 政敵どもが乗り込んできたのだ。ここでそなたが見つかれば、我ら二人とも破廉恥罪で打ち首だぞ!」道真は蓮花を乱暴に引き寄せ、書斎の片隅に置かれた吉祥図を描いた大きな屏風の裏、狭い隙間へと無理やり押し込んだ。「息を殺しておれ。咳ひとつでもしてみろ、我が手で先に首を刎ねるぞ」道真の囁き声が震える唇の間から漏れ出
last update最終更新日 : 2026-10-13
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12話. 屏風の裏の危険な悪戯

柳沢の重々しい足音が一歩、また一歩と近づくたび、道真の背筋を冷や汗が伝い落ちた。屏風の裏手には、蓮花が息を殺して身を縮めている。屏風が払われ、若い娘の鍼医の存在とともに、昨晩の精液がこびりついた敷布でも発見されれば、即座に改易と取り調べを免れぬのは明白だった。道真は慌てて席を立ち、柳沢の前に立ちはだかった。机の角を回り込んだ道真は、屏風を背にして立った。これ以上近づくには、道真を突き飛ばさねばならぬ距離だった。柳沢は足を止めたが、視線は依然として道真の肩越しへと向けられていた。「柳沢殿! 他人の私邸の書斎を、罪人の家宅捜索のように嗅ぎ回るのは武士の礼法に反する。用件がお済みなら、速やかにお引き取り願おう」道真が冷たく突き放したが、柳沢は卑劣な笑みを浮かべ、退こうとはしなかった。「久世殿がそのように過敏になられると、かえって疑念が深まるというもの。もしや公にはできぬような化け物か、それとも女でも隠しておられるのか?」柳沢が道真の肩越しに手を伸ばし、吉祥の屏風の端を掴もうとした、まさにその刹那だった。スルスル……。屏風の隙間から、柔らかく小さな手がヌッと現れた。道真の背後、羽織の裾の割れ目を密かにかき分けて滑り込んできたのは、他ならぬ蓮花の容赦なき手先だった。指先がまず下着の結び目を探り当て、すでに張りつめている剛直の側面をすっと撫で上げた。『こ、この狂った妖女めが、何を……っ!』道真は驚愕に目を見開いた。蓮花は手慣れた手つきで道真の下着の紐を引き解くと、極限まで緊張していた魔物の柱を、掌で鷲掴みにした。冷たく小さな手では熱い根元を包みきれず、残りの部分を親指と手のひらの肉で強く押し込んだ。「んんっ……!」道真の喉の奥から、張り裂けんばかりの喘ぎ声がほとばしり出そうになった。男は下唇を血が滲むほど強く噛み締め、必死に呻きを呑み込んだ。柳沢が目を細め、不審そうに尋ねた。「久世殿? 顔色がやけに赤いようだが。息が上がった者のように、全身を小刻みに震わせておられるではないか」「な、何でもない……持病の悪寒がぶり返したゆえ……っ、くっ!」屏風の裏で、蓮花が意地悪そうに微笑みながら、親指で膨張し続ける亀頭の先端をじっと捩じるように撫で回した。窪みを擦り上げる指先が、滲み出た先走りの蜜をまとってぬるりと滑る。冷ややかな極陰の手が触れた途端、魔物は待って
last update最終更新日 : 2026-10-13
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13話. 手技の限界

柳沢の急襲による騒動から三日が過ぎた。江戸・山の手、久世家の屋敷の夜は、以前にも増して深く湿った熱気に圧し潰されていた。生い茂る竹林に囲まれた西の離れの行灯は、子の刻を過ぎても消える気配がなかった。障子の桟を細かく震わせながら漏れ出る荒い吐息は、日を追うごとに痛々しいほどに哀れさを増していた。「はぁっ、あぁ……くっ! 蓮花……な、何故鎮まらぬのだ……頼む……っ」絹の敷布を敷いた小上がりに横たわった道真の白玉のような頬を、大粒の涙が絶え間なく流れ落ちていた。端正に結い上げていたはずの髷は解け、乱れた黒髪が汗に濡れて額にへばりつき、羽織は引き裂かれたように脱ぎ捨てられて床に転がっていた。蓮花は汗にぐっしょりと濡れた両の手のひらで、魔物の根元を幾度も荒々しく扱き上げていたが、彼女の白い額にびっしりと浮かんだ玉の汗が、事態の深刻さを物語っていた。手首が震えていた。すでに三度も精を吐き出させたというのに、剛直は彼女の掌の中でいささかも衰えを見せず、猛り狂っていた。ぬちり、じゅぷ、じゅるる……。三度目の射精を終えた直後であった。小上がりの敷布と板間には、道真がぶちまけた白濁した精液が水たまりのように広がっていた。常の男であれば精気を使い果たして気絶しているところだが、股間の魔物は萎れるどころか、いささかの衰えも見せなかった。それどころか、太く浮き出た血管を怒張させ、吐き出したばかりの粘つく先走りを潤滑油にして、さらに凶暴に脈打っていた。丹田の奥底から沸き立つ魔界の火気は、男の下腹部の皮を引き裂かんばかりに張りつめていた。「若様。この淫魔の魔物、私の手技に完全に耐性がついてしまったようです」蓮花が荒い息を吐きながら手を離すと、冷たい空気に触れた巨根は、飢えた猛獣のように虚空へ向かって跳ね上がった。指先が触れただけで震えていた以前とは異なり、もはや掌の圧力などでは物足りぬとばかりに激しくのたうつ。道真の腰が、凄まじい膨張痛にガタガタと震えた。「た、耐性だと……? 一体何を……わけの分からぬことを申すのだ……ひっ、あぁっ!」「単に手で揉みしだき、搾り上げるだけの第一段階『外治(げち)』では、骨の髄まで染み渡った魔界の陽気を吸い出しきれないということです。この怪物が、さらに深く強い刺激を求めています」蓮花の鋭い診断は、決して誇張ではなかった。道真の白玉のようだ
last update最終更新日 : 2026-10-13
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14話. 接治(口唇・唾液治療)の心得

「せ、接治だと……? それは一体、どのような治療法なのだ?」道真が荒い息を吐きながら、怯えた眼差しで問い返した。蓮花は身につけていた浅葱色の小袖の帯にそっと手をかけ、小上がりの上へと身を乗り出した。彼女の肌の匂いに混じる、ほのかな薬草の香りが道真の鼻腔をくすぐった。帯が解ける寸前の緩みが、男の目に飛び込んできた。近づいた女の息遣いに、道真の心臓がドキンと跳ねた。暗がりの中で輝く蓮花の瞳は、もはや無邪気な町娘のものではなかった。高貴な武士を手玉に取って弄ぶ妖婦の目であり、病人を救おうとする冷徹な医者の目であった。「接治とは、単に肌を擦り合わせるだけのものではありませぬ。私の極陰の体質が宿す冷気を、若様の血脈の隅々へと直に注ぎ込む高度な医術にございます」「外治が手で表面の火気を搾り出すものであったとするなら、接治はお互いの肌を隙間なく密着させ、唾液を交わし合って気血を全身へと循環させる法です」「な、何だと……?! は、肌を合わせ……唾液を交わすだと?!」道真の両目が、落雷に打たれたように白く見開かれた。蓮花に出会う前は、生涯女の指先にすら触れたことのなかった潔癖な武士、久世道真である。賤しい鍼医の娘と口づけを交わし、体を擦り付け合って唾液を啜り合わねばならぬなどという話は、彼にとって先祖代々の教えと家名の一切を焼き捨てるに等しい屈辱であった。「男女七歳にして席を同じうせずというではないか! 夫婦の契りも交わさぬ生娘と、そのような破廉恥極まる淫らな真似が……断じて、断じてできるものか!」「まあまあ、堅物のお奉行様。いま胸元に広がった赤い斑点が、喉仏のあたりまで這い上がってきておりますのに、まだ孔子だ孟子だとお題目を並べ立てるおつもりですか?」蓮花は呆れたように舌打ちし、道真の胸元に浮き出た赤い火斑を、指先でじっと押し込んだ。「あっ……! ひぐっ!」ほんのわずかに触れられただけだというのに、赤く焼けた鉄串で突き刺されたような激痛が全身を貫いた。道真の唇から引き裂かれるような悲鳴が上がった。それと同時に、股間の巨根が斑点に呼応するかのように、ドクンと大きく跳ね上がった。「ごらんなさい。魔気はすでに心臓のすぐそばまで侵入しております。今夜、接治を行って極陰の唾液で胸の奥を冷まさねば、明日の朝、久世家の使用人たちは血を吐いて手足がねじ曲がり、息絶えた若様
last update最終更新日 : 2026-10-13
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15話. 初めての唾液の交歓

蓮花のひんやりと滑らかな素肌が、道真の燃え盛る上半身の上へと隙間なく重ね合わされた。肌と肌が触れ合った瞬間、ビリビリとした摩擦熱とともに、全身を貫く巨大な雷撃が二人の背筋を裂いた。薄い肌着越しに押しつけられた女の柔らかな胸が、道真の硬い胸筋を押し潰し、息が詰まる。「はぁっ……あ……っ!」道真の口から、熱い吐息混じりの呻きが漏れ出た。女の豊かで柔らかい乳房が、己の逞しい胸板を圧迫してくる未知の快感に、武士の高潔な理性は瞬く間に灰となって吹き飛んだ。蓮花は震える道真の顎を細い指先で掴み、ぐっと自分の方へと向けさせた。「唇をお開けなさい、若様。私の極陰の冷気を、肺腑の奥深くまで吸い込まねば火魔は鎮まりませぬ」「れ、蓮花……頼む……んむっ!」道真が言葉を紡ぎ終える前に、蓮花の赤く湿った唇が、男の渇ききった唇を乱暴に貪り食らった。下唇をじゅるりと吸い上げ、舌先で強引に歯列をこじ開ける。んんっ、じゅるり……。冷たく甘い女の唾液が、道真の熱い口内へと怒涛の勢いで雪崩れ込んできた。道真の目が驚愕に見開かれた。しかし押し返そうとした舌は、蓮花の巧みで執拗な舌使いに絡め取られるや否や、抗う術を失い、貪り合うように淫らな踊りを始めた。溢れ出た唾液がつぅと顎を伝い落ちる。ぬちり、じゅるる、くちゅ……。湿った水音が、夜更けの静まり返った離れの中に濃密に響き渡った。蓮花の冷たい舌が道真の上顎の敏感な粘膜を撫で上げるたび、男の白い足指が痙攣するように丸まった。唾液を飲み下すごとに、丹田を焼き尽くしていた炎が一寸ずつ鎮まっていく。「んんっ……じゅぷ……はぁっ……!」丹田から燃え上がっていた凶暴な魔気が、女の唾液を通して中和され、全身へと甘美な痺れが広がっていった。道真は自らの爪が蓮花の背に食い込むほど、彼女の細い腰を強く抱きしめた。力を込めた自らの手元を見つめた道真は、指の力をわずかに緩めた。蓮花の背中が息遣いに合わせて上下している。頭の中で千発の花火が一度に炸裂したかのような、めまいを覚えるほどの快楽だった。唾液を啜り合うたび、胸を締め付けていた高熱が冷たい氷水に洗い流されるように丹田へと散っていく。それと同時に、蓮花の小さな手が道真の股間へと密かに伸びた。下着を剥ぎ取られ、猛り狂っていた巨根が、蓮花の内太ももの柔肌に直に触れ、ドクドクと激しく脈打った。先走りの蜜が、
last update最終更新日 : 2026-10-13
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16話. 善書を筆写せよ

接治の猛烈な嵐が吹き去った翌日。午前の政務を終えて屋敷へ戻り、奥書斎に腰を下ろした道真の瞳は、冷ややかに沈み込んでいた。昨晩、離れで一介の鍼医の唇を貪り食らい、彼女の着物の裾に大量の精液をぶちまけてすすり泣いた己の醜態が脳裏を離れず、耐え難い屈辱に苛まれていたのだ。名門武家の誇りと自尊心が足元まで踏みにじられた羞恥に、全身が小刻みに震えた。昼間は江戸随一の清廉な奉行として君臨しながら、夜になれば長屋の娘の唇にすがりつき、獣のように腰を振るという耐え難い矛盾。道真は書斎の机をドカンと拳で叩きつけ、己を叱咤した。「正気を取り戻さねばならぬ。あの小娘はただ金を受け取って治療を施す鍼医にすぎぬのだ。断じて情を通わせたり、心を乱されてはならぬ!」「殿、西の離れの蓮花殿が、大奥様の薬湯の処方の件で、奥書斎の前にお見えでございます」用人の控えめな声に、道真の硬い顎がピシリと強張った。「……中へ通せ」間もなく、小綺麗に身なりを整えた蓮花が、しずしずと書斎の中へと歩み入ってきた。道真を見つめる彼女の澄んだ瞳の奥には、隠しきれぬ悪戯っぽい光が宿っていた。道真はゴホンと咳払いをひとつし、机の上に積み上げておいた分厚い儒教の経典十冊を、蓮花の前にドサリと叩きつけた。「これは何でございますか、若様?」「小学と列女伝、そして善書である」道真は威厳に満ちた厳しい声で冷たく言い放った。「鍼医とはいえ、医術ばかりにかまけておっては人倫と礼法の道を弁えぬもの。毎日正午までに、これらの経典を一文字の狂いもなく正確に筆写して、私に差し出せ」蓮花は呆れたように丸い瞳をしばたたかせた。「私が何故、学問などせねばならぬのです? 私の本業は鍼術と……夜な夜な若様の巨大な魔物を鎮めることにございますが」「黙らぬかッ!」道真は雷のように一喝し、耳の付け根までカッと真っ赤に染め上げた。「昼間は厳格なる主従の間柄である! 白昼堂々そのような妖しい破廉恥な戯言を抜かしてみろ、即座に尻叩きの刑に処すぞ!」道真の凛とした威厳に、蓮花は唇を尖らせながら本の山を胸に抱え込んだ。彼女は指先で本の背表紙をなぞり、一番分厚い本を下にして積み直すと、道真を見上げた。「これを書き写すせいで薬を煎じる時間が足りなくなっても、それも私の責任ですか?」道真は言い返そうとして、咳払いでお茶を濁した。「務めを終
last update最終更新日 : 2026-10-13
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17話. 鍼医の不敵な調教

薄暗い西の離れの中、艾の香りに混じる生々しい匂いが部屋を満たしていた。障子の隙間から月明かりが差し込んでいたが、室内の熱気は真昼の火鉢よりも熱く燃え上がっていた。道真は蓮花の足元に両膝をついたまま、涙と脂汗でぐしゃぐしゃになった顔で、荒い喘ぎ声を漏らしていた。上等な羽織は引き裂かれるように脱ぎ捨てられて部屋の隅に転がり、白玉のようだった逞しい胸板は真っ赤に上気して激しく上下していた。夜ごとに燃え盛る魔界の陽気は、もはや蓮花の冷たい唇と指先がなければ、一瞬たりとも鎮まらぬ領域に達していた。蓮花は片手で道真の顎をゆっくりと持ち上げ、艶やかに目を細めた。「若様。昼間、書斎で私に経典を投げつけ、怒鳴り散らしていらしたあの凄まじい気迫は、一体どちらへ売り払ってこられたのです?」「れ、蓮花……頼むから……話を逸らさず……っ! あぁっ、くっ……!」道真は股間を両手で強く抱え込み、爛れた呻きを呑み込んだ。衣服を剥ぎ取られた下半身の上に、怒張した魔物が蓮花の着物の裾に向かって、猛々しく凶暴にそそり立っていた。浮き出た血管に沿ってドクンドクンと脈が跳ねる。その激しい鼓動は、床板を揺らすほどだった。キノコの笠のような亀頭の先からは、透明な先走りの熱液がたらたらと流れ落ち、道真の太ももを熱く濡らしていた。蓮花はあえて手を伸ばさず腕を組み、足元にひれ伏す武士の男を冷ややかに見下ろした。柱が虚空でビクンと跳ねるたび、蓮花の着物の裾がふわりと持ち上がる。「治療にも順序と道理というものがございますよ。昼間は私を下女のように見下し、尻を叩くと脅しておいででしたのに、私がどうして喜んで精魂込めて、若様の陽気を吸い出して差し上げられましょうか?」「な、何を望むのだ……銀を上乗せすればよいのか? 三十両ではない、五十両、いや百両でもくれてやる……っ!」「お金なら契約通り当然いただきますよ。ですが今この部屋で私に必要なのは、冷たい銀の塊などではありませぬ。若様の、心の底からの称賛の言葉でございます」「しょ、称賛だと……?! 私が何故、そなたのような小娘を……っ!」道真がカッとなって武家の誇りを振りかざそうとした瞬間、蓮花は眉ひとつ動かさず、冷淡に背を向けて戸口へと歩き去ろうとした。「ならば今夜の治療はこれにて終わりにいたしましょう。お独りで一晩中、下腹部が破裂する苦しみを存分に味わい
last update最終更新日 : 2026-10-13
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18話. 赤い火斑と恋情

唾液を啜り合い、全身の陽気を余すことなく吐き出し尽くした夜明け前。道真は蓮花の膝を枕にして横たわり、静かに上下する女の胸元をぼんやりと見上げていた。障子の桟の隙間から、青白い朝霧と冷たい朝風が忍び込んできていた。道真の白玉のような胸元に禍々しく広がっていた赤い火魔の斑点は、蓮花との濃密な接治を終えた後、目に見えて薄らいでいた。蓮花は押し寄せる睡魔に目を閉じながら、道真の汗に濡れた額を、無造作に、けれど優しくトントンとあやしていた。その小さな指先から伝わってくる、冷たくも微かな温もり。道真はふと、心臓の奥がツンと締め付けられるような未知の感覚に、生唾をごくりと呑み込んだ。『この感情は……一体、何なのだ』単に換陽の術の呪いを解くための医術の処置であり、毎月三十両分の銀で結ばれた主従の契約にすぎなかった。そうやって己の心に幾重ものかんぬきを差し、警戒し続けてきたというのに、蓮花の腕に抱かれている瞬間だけは、世のいかなる安息所よりも平穏で甘美だった。他者には決して悟られてはならぬ醜悪な恥部であり化物であるというのに、ただ蓮花の手技の前にだけは、赤子のように飼いならされてしまう己の姿が、見慣れぬと同時にたまらなく愛おしかった。道真は、己の胸を圧迫していた重苦しい武士の甲冑が、彼女の温もりの中でゆっくりと溶け落ちていくのを悟った。城の血生臭い派閥争いと、名門の息の詰まるような体面の中で、道真がありのままの脆い素顔を晒せる唯一の場所は、ただこの小さな離れだけであった。道真は震える手を恐る恐る持ち上げ、蓮花の白い頬に張りついた細い後れ毛を、そっと耳の裏へと撫で流してやった。柔らかな肌に指先が触れた瞬間、道真の息遣いが細かく震えた。蓮花がパチリと瞼を持ち上げた。「若様? まだお休みになっておられなかったのですか? まさかあの怪物が、また頭をもたげたのですか?」蓮花が眠たげに目を擦りながら、掛け布の下の道真の下半身を覗き込むと、道真は慌てて手を引っ込め、耳の付け根まで顔を真っ赤にした。「ち、違う。ただ……そなたの髪が乱れていたゆえ……」「あらまあ。潔癖症で有名な堅物のお奉行様が、賤しい鍼医の髪まで手ずから整えてくださるなんて、明日の朝は西からお日様が昇りそうですね」蓮花の意地悪なからかいに、道真の心臓はドキンと跳ねた。武家の当主が、一介の町娘の美貌に心を乱され
last update最終更新日 : 2026-10-13
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19話. 城内宴席の毒酒

五日後、江戸城・本丸の大広間前の庭では、異国の特使節団を歓迎する盛大な祝宴が催されていた。雅楽の調べが秋の空高く響き渡り、幕閣の重臣や大名たちが格式に従って居並び、美酒を酌み交わしていた。礼参奉行・久世道真は、外交儀礼と宴席の式次第を総括する主務役として、格式高き藍色の装束を端正に着こなし、上席にしずしずと座していた。青白くも涼やかな美貌と、一分の隙もない完璧な立ち振る舞いに、気難しいと噂される異国の使節団すら惜しみない賛辞を口にしていた。しかし、道真の斜め向かいに座る柳沢子明の瞳は、毒蛇のように陰険にギラついていた。『久世の若造め……換陽の術にかかり、とっくに発情した狂人に成り果てて牢屋に叩き込まれているはずのものが、何故あのように平然としておるのだ』己の密かな邪術が失敗に終わったことを悟った柳沢は、卑劣に口元を歪め、傍らに控える腹心の役人に目配せを送った。間もなく、柳沢みずからが重々しい白磁の酒瓶と銀の杯を手に、道真の席の前へと大股に歩み寄ってきた。「久世殿! 使節団の歓待の儀礼を見事に全うされたこと、大慶に存ずる。拙者より特別に、西域より献上された貴重な陽気滋養の銘酒を一杯、進呈いたそう」道真は眉根を寄せ、冷ややかに杯を遮った。「過分なお言葉にございます、柳沢殿。しかし拙者は元より下戸であり、まだ宴席の儀礼文書の確認が山積みゆえ、酒は辞退仕る」「ハハハ! 上様が直々に許された祝宴の席でござるぞ! この柳沢の祝い酒を突っ返すとは、使節団への無礼であり、上様への不敬にあたるとは思われぬか!」柳沢が声を張り上げると、周囲の大名たちや異国の使節たちの視線が一斉に道真へと集まった。道真は奥歯をギリリと噛み締めた。居並ぶ百官の眼前で、断る名分を完全に塞がれた王手であった。道真は酒瓶を持つ相手の手よりも、周囲の視線を先に窺った。柳沢は辞退の言葉が出る前に、杯をさらに道真の鼻先へと突き出した。笑顔を浮かべてはいるが、退く気配は微塵もなかった。道真は祝宴の真ん中でその手を払いのけることはできなかった。もしここで杯を拒絶すれば、即座に柳沢の一派から、使節団を愚弄し上様の命に背いたとして弾劾されるのは目に見えていた。道真は冷徹な眼差しで柳沢の狡猾な顔を睨み据え、震える指先で銀の杯を受け取った。周囲の重臣たちのざわめきが波のように耳元をかすめた。柳沢が銀杯に
last update最終更新日 : 2026-10-13
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20話. 書庫の死闘

御前会議の招集を告げる重々しい銅鑼の音が、城内の中庭にけたたましく響き渡った。居並ぶ百官が一斉に衣服を整え、上様がおわす大広間へと列を成して歩みを進め始めた。しかし道真は一歩たりとも踏み出すことができず、城内回廊の朱塗りの柱にすがりつき、生まれたての小鹿のようにガタガタと全身を震わせていた。装束の前裾が、まるで巨大な槍の穂先のように虚空に向かって鋭く突き上がり、ブルブルと痙攣していた。暴走する魔物の凄まじい高熱に絹の袴が焼け焦げそうに熱く、亀頭の先から溢れ出る先走りの熱液が足袋を伝い落ち、履物の内側までぐっしょりと濡らしていた。この無様な姿で大広間に足を踏み入れた瞬間、上様と幕閣の面前で淫らな化け物であることが白日の下に晒され、大逆罪人として八つ裂きの刑に処されるのは明白だった。「久世殿! 何をもたもたしておられる! 御前会議に遅参などすれば、即座に改易でござるぞ!」はるか向こうから、柳沢が嘲るような声を張り上げて道真を急き立てた。道真は目の前が真っ白に明滅する絶望の中で、唇から血が出るほど強く噛み締めた。『終わりだ……久世家百年の栄誉が、今日、我が股間のモノによって断ち切られるのか……』丹田が張り裂けんばかりに膨張し、下腹部を刃物で抉られるような激痛に、大粒の脂汗が顎からぽたぽたと滴り落ちた。一歩足を動かすだけで、袴が引き裂かれてしまいそうな絶体絶命の瞬間だった。城の白壁の角の木陰から、見慣れた浅葱色の小袖の裾がスッと視界をかすめた。蓮花だった。久世家の大奥様のお言いつけを受け、城内の御典医の詰所へ薬草を届けに登城していた蓮花が、柱の陰でよろめく道真のただならぬ様子を見つけ、駆け寄ってきたのだった。道真は最後に残された命の灯火を絞り出すように、近づいてきた蓮花の細い手首を掴み取った。「んむっ……?! 若様?!」蓮花が驚きのあまり悲鳴を上げそうになった刹那、道真は彼女を胸の中に掻き抱き、大広間の脇にある人気のない外れの書庫の扉の中へと飛び込んだ。抱き寄せる勢いで、装束の中の剛直が蓮花の下腹部にズシリと重くめり込んだ。バタン――!埃が白く積もった重々しい板戸が閉ざされ、道真は震える手でかんぬきを差し込んだ。天井高くそびえる書棚が迷路のように入り組んだ薄暗い書庫の片隅、古書の山の隙間に二人は崩れ落ちるように座り込んだ。狭い書棚の隙間に、重々しい
last update最終更新日 : 2026-10-13
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