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昼は潔癖、夜は淫魔 のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

40 チャプター

31話. 通町の嫉妬と鉄槌

大奥様の嵐のような急襲が去った後、久世家の屋敷はようやく平穏を取り戻した。息子の悲痛極まる懇願と、胸元の痛々しい古傷を自らの目で確かめた母は、深いため息をつき、蓮花の滞在を渋々ながら黙認することにしたのだ。しかし、魔物の暴走を完全に鎮めるためには、特殊な滋陰の薬草の調達が急務であった。「若様、丹田の火気を完全に冷ますには、『千年紫河車』と『雪山白蓮』という希少な生薬がどうしても必要です。日本橋・通町の裏通りの大店へ行って買い求めてまいります」「ならぬ。そなたが独りで町へ出るなど危険すぎる。柳沢の密偵どもがそなたを狙っておるというのに……」道真が眉根を寄せて手首を掴んだが、蓮花はからりと笑ってみせた。「ただの町娘の身なりで深編笠を目深に被れば、誰も気づきはしませぬ。患っておられる若様がお出ましになる方がよほど危のうございますよ。五両分の銀だけ持たせてくださいまし」結局、蓮花は道真の制止を振り切って日本橋の通町へと向かった。しかし道真は奥書斎に座して書物を広げても、まるで文字が頭に入ってこなかった。脳裏には蓮花の華奢な後ろ姿と、竹林で不気味に響いた密偵の口笛の音ばかりが渦巻いていた。あの白い横顔と、悪戯っぽく笑っていた瞳が焼きつき、胸が焦げ付くように落ち着かず、血の気が引いていく。『ええい、じっとしてなどおられぬ!』道真は装束を脱ぎ捨て、地味な藍色の羽織袴に着替え、大きな編笠を目深に被って、独り町へと駆け出した。正午の通町は、行き交う商人や町人たちでごった返していた。道真は人混みの中から、浅葱色の小袖をまとい、薬草の包みを抱えた蓮花の姿を一目で捉えた。彼女が薬種問屋を出て、川沿いの橋を渡ろうとした、まさにその時だった。「おい、そこの別嬪さん! 編笠の奥から見える顎の線が、たまらなく色っぽいねえ」絹の着物を着崩した、素行の悪そうな三人の無頼漢が、蓮花の前に立ちふさがった。脂ぎった顔の頭目がニヤつきながら、蓮花の笠の紐に指をかけた。「薬の包みを見るに薬部屋の娘のようだが、辰巳の芸者よりも色気があるじゃねえか。俺たちと一杯、熱い酒でも引っ掛けにいかねえかい?」「そこを退いてくださいまし。急ぎの用があるのです」蓮花が冷ややかに言い放ち、すり抜けようとした瞬間、男の手が蓮花の細い手首をぐいと乱暴に掴み取った。「おや、つれないねえ。お侍の旦那の相手を
last update最終更新日 : 2026-10-13
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32話. 野外の東屋での密やかな逢瀬

人影が完全に途絶えた、上野の山裾の荒れ果てた高台の東屋。初秋の紅葉が赤く色づき、東屋の周囲を屏風のように取り囲んでいた。道真は蓮花を東屋の奥深く、太い柱の裏手へと乱暴に押し込むと、肩で荒い息を吐き出した。「はぁっ……はっ……くっ!」男の顔色は真っ赤に上気し、羽織袴の前裾は今にも張り裂けんばかりに凶悪にそそり立っていた。通りで無頼漢どもが蓮花の手首を掴んだ瞬間に噴き上がった、猛烈な怒りと嫉妬。その激しい感情が、丹田に封じられていた換陽の術の魔気を呼び覚まし、白昼の野外で最悪の発作を引き起こしてしまったのだ。「わ、若様……息が上がっていらっしゃいます! 落ち着いてくださいまし!」「落ち着いて……いられると思うか! 奴らが……そなたの手首を掴んで離さぬゆえ……っ! 下腹部が張り裂けそうなのだ!」道真は胸を掻きむしり、東屋の柱にすがりついて膝を折った。蓮花は道真の目に溜まった涙と、やり場のない恨めしげな瞳を見て、呆れながらも思わず笑みがこぼれた。道真は言葉に詰まり、顔を背けた。蓮花の手首に残る赤い指の跡が目についてならなかった。彼女を責める筋合いでないことは百も承知であったが、遅れて追いかけた己の不甲斐なさが、声を荒げさせてしまうのだ。「……そなたが傷つけられたのかと思ったのだ」蓮花はため息をつき、道真の顔を真っ直ぐに見つめ返した。「私は平気です。若様こそ、息を整えなさいまし。私の心配をなさってこうして倒れられては、私の方が驚いてしまいますよ!」「うるさい……! 早く……早く手を……あぁっ!」道真の太ももが痙攣するようにガタガタと震えた。股間の巨大な怪物が、煮えたぎる脈動で羽織の布地を引き裂かんばかりにのたうっている。蓮花は躊躇うことなく道真の羽織をめくり上げ、袴の紐を一気に解き放った。スルリ……。外気に晒された巨根の姿は、冷ややかな秋風の中にあっても、白い湯気をもうもうと噴き上げるほどに凶暴だった。亀頭の先端から透明で粘りつく熱液がドクリと溢れ出し、板敷きの上へぽたぽたと落ちていく。蓮花は着物の裾をたくし上げ、道真の太ももの間に膝をついて腰を下ろした。「武士の面目を命より大切になさるお方が、四方吹きさらしの野外の東屋で袴をお脱ぎになるとは、実に滑稽な見ものでございますね」「き、貴様……よくも私を侮辱……ひっ、あぁっ!」蓮花のひんやりと滑ら
last update最終更新日 : 2026-10-13
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33話. 泣き虫の若殿の寝言と恋心

上野の山裾の荒れ果てた東屋での息詰まる野外接治を終え、久世家の本邸の奥座敷へと戻ってきた。夕闇が濃く垂れ込めた部屋の中は、昼間の張り詰めた緊張感が嘘のように静まり返っていた。絹の夜具の上に倒れ込むように横たわった久世道真は、深い眠りに落ちて規則正しく寝息を立てていた。昼の町で蓮花を奪われまいとして爆発した激しい嫉妬、そして四方吹きさらしの東屋で体面を捨て去ってぶちまけた激しい射精の反動で、男の気力は完全に底をついていた。蓮花は盥にぬるま湯を汲んできて、手拭いを浸した。そっと道真の傍らに寄り添った蓮花は、汗に濡れた男の額と白玉のような頬を、丁寧に拭い始めた。スルスル……。手拭いが触れるたび、道真の長い睫毛がかすかに震えた。普段、城では幕閣の役人たちを冷徹な一喝で震え上がらせていた礼参奉行。他人が見れば針を刺しても血の一滴すら出ぬ氷のような武士であったが、蓮花の腕の中に抱かれれば、涙で顔を濡らして助けてくれと縋りつく泣き虫の小僧になってしまう。蓮花はフッと微笑を漏らし、眠る男の筋の通った鼻梁と固く結ばれた唇をじっと見つめた。普段、口うるさく経典を突きつけて小言を並べ立てていたあの堅物のお奉行様と同一人物とは思えぬほど、無防備に緩んだ寝顔は、妙に痛々しく、たまらなく愛おしかった。女の手技に翻弄され、背徳感に身悶えしていたあの切ない眼差しが、胸の奥に消えぬ焼き印のように残っていた。初めて深川の裏長屋の庵を訪ねてきた時は、ただ大金を巻き上げられる都合のいい客としか思っていなかった。百両、三十両という大金に目が眩み、彼の股間にぶら下がる怪物を握りしめては面白がっていたのだ。しかし、己の父親が無実の罪を着せられて廃人にされたという告白を聞いた時、己のすべての名誉と命をかけて復権を誓ってくれた男だった。母の前でも体面など犬に食わせよとばかりに額を床に叩きつけ、自分を助けてくれと泣き叫んでくれた、あの愚直なまでの真情。胸の奥がツンと痛み、蓮花の頬に淡い紅が差した。「本当に、融通の利かないお方ね……」蓮花が低く呟き、道真の乱れた前髪を払ってやろうとした、まさにその瞬間だった。ガシッ。眠りの中にあった道真が虚空へと手を伸ばし、蓮花の手首を咄嗟に掴み取った。「若様……?」道真は目を開けぬまま、蓮花の指の隙間に自らの長い指を絡め合わせ、固く指を組んだ。男の眉間が、ひ
last update最終更新日 : 2026-10-13
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34話. 血塗られた藁人形と黒呪術

同じ時刻、江戸の町外れ、愛宕山の山裾に佇む柳沢子明の秘密の別邸。陰惨な風が竹林を引き裂くように吹き抜ける別邸の地下暗室には、生臭い血の匂いと腐った硫黄の悪臭が充満していた。暗室の真ん中には朱砂で怪異な魔法陣が描かれ、人骨で作られた燭台の上で青白い鬼火が揺らめいていた。柳沢子明は脂ぎった顔を歪め、血走った目で白磁の茶碗を握る手を小刻みに震わせながら、暗闇の中を苛立たしげに行き来していた。城内で久世道真の冷徹な眼差しと向き合うたび、首筋を撫でていたあの冷たい恐怖。己が五年前に破滅させた江田泰秀の冤罪事件が白日の下に晒された瞬間、一族郎党が打ち首獄門に処されるという危機感が、彼の喉元を締め上げていた。「道士よ、どうなったのだ? 昼間、上野の山裾で確かに見たと申したな?」彼の向かい、黒い道服をまとい、髑髏の仮面を被った黒幕の陰陽師・黒雲道士(こくうんどうし)が、陰惨に舌先をチロチロと這わせた。「間違いございませぬ、柳沢様。久世道真の屋敷に潜り込んだあの娘は、ただの鍼医ではありませぬ。伝説にのみ語り継がれる極陰(きょくいん)の体質を持つ、陰陽の治療者でございました」「極陰の体質だと?!」「左様。久世道真の換陽の術の火魔を、口と手で余すことなく吸い出して浄化しておりました。あの娘がそばに侍る限り、いかに強力な陽気を注ぎ込もうとも、久世道真は狂人となることなく平然と生き延びるでしょう」柳沢の顔が、凶悪な殺意に歪んだ。「小癪な若造め……! 江田の娘まで己の懐に囲い込み、拙者の喉元を締め上げようとするとは! このままでは目付所と評定所が拙者の首を獲りに来る!」柳沢は茶碗を床に投げつけて粉砕し、怒鳴り散らした。「手段を選ぶな! あの男と娘を、今夜のうちに血を吐いて絶命させる秘策はないのか!」黒雲道士が奇妙な怪声を上げ、懐から黒い小箱をひとつ取り出した。蓋が開かれると露わになったのは、掌ほどの藁人形であった。人形の胴体には久世道真の生まれた年・月・日・刻が血の文字で記され、頭部には道真の抜け落ちた髪の毛と、羽織の袖から引き千切った絹布の切れ端が固く結びつけられていた。「西域の黒魔術の中でも、もっとも残酷な『血火の呪殺(けっかのじゅさつ)』を仕掛ける時がまいりました」黒雲道士は懐から、赤黒く錆びついた七寸の太釘と、人骨の油に漬け込んだ鉄針を取り出した。道士の爪
last update最終更新日 : 2026-10-13
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35話. 黒い魔気と紅い斑点

江戸・山の手、久世家の屋敷の奥座敷。部屋の空気が一段と冷え込んだかと思うと、行灯の炎が一斉に青白い光を放ってプルプルと震え出した。「ぐあああっ――ッ!」苦しげに身悶えていた道真の口から、引き裂かれるような断末魔が迸り出た。男は寝床の上を転がり回り、自らの胸元を爪で狂ったように掻きむしった。「わ、若様?! いかがなされたのです!」驚いた蓮花が道真の肩を必死に掴もうとしたが、道真の肌から噴き出す殺人的な高熱に掌が火傷しそうになり、悲鳴を上げて手を引いた。男の全身は、まるで真っ赤に焼けた鉄の塊のように白い湯気を噴き上げていた。道真の白玉のようだった肌は血の色に染まり、額やこめかみには張り裂けんばかりの太い血管が異様に浮き上がってドクンドクンと脈打っていた。「あ、熱い……! 胸が……内臓が焼け焦げていく……っ、ぐあああっ!」道真の顔色は土気色を通り越して灰白色へと変わり、切れ長の瞳は血走るどころか目玉が飛び出さんばかりに充血していた。さらに恐ろしい異変が、男の生肌の上に巻き起こっていた。左の鎖骨の下の古傷のあたりから、腐った血を思わせる黒赤い斑点が、まるで生きた百足のようにうなじと顎の下へ向けて、凄まじい勢いで這い上がっていたのだ。ジュウッ、パチパチッ――!斑点が触れる肌が黒く焦げつき、肉の焼ける異様な悪臭が立ち込めた。かつて名医であった父・江田泰秀が厳重に警告していた宮中最高の禁忌の邪術、人の気血を黒魔術で汚染し、自らの肉を腐らせて死に至らしめる「血火の呪殺」の凄惨な兆候だった。単なる陰陽の乱れではない。命を奪うための純粋な呪詛の猛毒だった。蓮花は斑点が広がる部位を確かめた。以前も熱が上がれば肌が赤くなったが、今の色合いはまるで違っていた。さっきまで眠る顔を拭っていた手拭いが、手のひらの中でぐしゃりと握り潰された。その短い合間に何が変わったのかを見極めねばならなかった。蓮花は道真の名を呼び、瞳の動きを確かめた。それと同時に、道真の羽織と下着の内側で、魔物が制御不能となって暴れ狂い始めた。バキッ、バリリッ――!丈夫な絹の肌着が悲鳴を上げ、粉々に引き裂かれた。露わになった巨根の姿に、蓮花は息を呑んで後ずさりした。昼間までは赤く硬かった代物が、今や黒鉄(くろがね)のように黒々と変色していたのだ。太さは大人の男のふくらはぎほどに肥大化し、青黒い血管
last update最終更新日 : 2026-10-13
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36話. 理性の崩壊と合治の決断

息が喉元まで詰まった。道真の強靭な握力が、蓮花の首をへし折らんばかりに締め上げていた。男の瞳は血の色に染まって焦点を失い、唇の間からは獣のような唸り声とともに、黒い血泡が垂れ流されていた。「グルルル……引き裂け……殺せ……焼き尽くせ……!」人間の言葉ではなかった。黒魔術の殺気に魂を呑み込まれた、淫魔の咆哮だった。道真の黒々と燃え盛る巨大な魔物が、蓮花の小袖の裾を容赦なく踏み荒らし、太ももの間へとめり込もうとしていた。このままでは蓮花の首がへし折られるか、あるいは化け物のような剛直に下腹部を貫かれて無残に命を落とす、絶体絶命の瞬間。しかし蓮花は暴れる代わりに、震える手を持ち上げ、道真の血に汚れた頬を優しく包み込んだ。「若様……」涙をいっぱいに湛えた蓮花の澄んだ声が、静寂を切り裂いた。「久世道真様……正気を取り戻してくださいまし。私の父の無実を明らかにし、私を守り抜くと誓ってくださった、あの気高い若様はどこへ行かれたのです……!」その切なる呼びかけが、道真の魂の底へと届いたのだろうか。一瞬、殺気にギラついていた道真の血走った瞳が、大きく激しく揺らめいた。「れ……れん……か……?」道真の喉の奥から、絞り出すように掠れた声が漏れ出た。首を締め上げていた男の指先が小刻みに震え、力なくほどけて落ちていった。その一瞬、奇跡のように道真の理性が水面へと浮上したのだ。道真は自らの血まみれの手を見下ろし、生まれたての小鹿のように震えながら声を上げて泣いた。「わ、私が……何という真似を……ごほっ! ぐあああっ!」道真は自らの頭を掻きむしり、畳に額を打ちつけた。男の鼻と唇から、赤黒い血が噴水のように噴き出した。五臓六腑を焼き尽くす黒魔術の火魔が、心臓を丸ごと呑み込もうとしていた。「に、逃げろ……蓮花……頼む……っ!」道真は血の涙を流しながら、蓮花を戸の外へと押し出そうとした。「私がそなたを……殺してしまう……! 獣となって、そなたの体を八つ裂きにしてしまうのだ……早く逃げろ……頼むから、私を見捨ててくれ……っ!」己が激痛に苛まれ死に瀕しているその瞬間すら、ただ蓮花が傷つきはしないかと恐れ、血を吐きながら逃げろと絶叫する男。その凄絶な叫びを耳にしながら、蓮花の目から熱い涙がボロボロとこぼれ落ちた。もはや退く場所など、どこにも残されていなかった。外治で手を
last update最終更新日 : 2026-10-13
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37話. 最後の秘術、合治の決断

奥座敷の奥、行灯の炎が消えゆく薄暗がりの中で、張り詰めた静寂が流れていた。床に脱ぎ捨てられた蓮花の着物の向こうに、月明かりを吸い込んだ女の白い肢体が眩いばかりに浮かび上がっていた。豊かな乳房と引き締まった腰、そして白い太ももの間からかすかに立ち上る、極陰の冷たい霊気。その純潔で神聖な姿を前に、血の涙を流して喘いでいた久世道真の心臓が、止まりそうなほど激しく跳ねた。「れ、蓮花……そなた、何を……!」道真は張り裂けそうな下腹部の激痛の中にあっても、ガタガタと震える手を伸ばし、床に落ちていた己の羽織を引き寄せて蓮花の身体を覆い隠そうとした。男の白玉のようだった手の甲は血管が破れて血泡で汚れ、唇は血まみれになって激しく震えていた。「ならぬ……着物を着ろ……早く着るのだ……!」「若様、状況をよくお考えなさい」蓮花は道真が差し出した羽織を容赦なく払い退け、男の太ももの間に膝をついて擦り寄った。女の冷たい膝が、道真の煮えたぎる太ももの生肌に触れた瞬間、ジュウと音を立てて白い湯気が立ち上った。氷河と溶岩が正面から衝突したかのような凄まじい気の激突に、道真の背筋が総毛立った。男は目の前がグルグルと回るめまいの中でも、蓮花の白くか細い肌から視線を逸らすことができなかった。武家の規範の中で生涯、罪深いものと見なしてきた女の裸身が、今この瞬間には、己の命を救い出してくれる唯一の神聖な菩薩のように輝いて見えた。「若様の胸に刻まれた、あの腐った斑点をごらんなさい。『血火の呪殺』の魔気は、すでに心臓のすぐそばまで入り込んでおります。手で揉みしだいたり、唇を重ねる接治ごときでは、あの凶暴な火魔をほんのひとときも鎮められませぬ」蓮花の澄んだ揺るぎなき瞳が、道真の血走った目を真っ直ぐに見据えた。「体内に溢れ返るあの恐るべき淫魔の陽気を、私の体の一番深い場所へと丸ごと受け入れ、溶かし去るしかありませぬ。ただ『合治(ごうち)』だけが、若様を生かすことができるのです」「ならぬ……それだけは、断じてならぬ!」道真が血の涙を流しながら首を横に振った。自害をも覚悟した、凄絶な絶叫だった。「私の股間に埋め込まれたこの化け物を見よ! これが本当に、人の体に入るような代物か!」道真は自らの股間を指差し、大粒の涙をポロポロとこぼした。黒鉄のように黒々と変色した魔物は大人の男の腕よりも太く、凶
last update最終更新日 : 2026-10-13
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38話. 夜具の上の涙と思いやり

奥座敷の奥、冷たい夜風が障子を揺らす中、二人の男女は夜具の上に向かい合って座っていた。道真の荒く熱い息遣いと、蓮花の静かな心臓の鼓動が、狭い部屋を満たしていた。道真は蓮花の白玉のような鎖骨と豊かな乳房を目の前にしながらも、恐れ多くて触れることもできず、拳を握っては開き、ガタガタと震えていた。部屋いっぱいに漂う洗い清めた肌のほのかな香りと、女の甘い匂いが男の鼻腔をくすぐった。潔癖症で他人の手に触れることすら嫌っていた堅物だったが、今、目の前に広がる女の純潔な体は、目が眩むほどに美しかった。男の涼やかだった目元は、血走りと涙で濡れそぼっていった。「蓮花……」男の声は湿り気を帯び、黒曜石のような瞳には切ない悲しみが満ちていた。「痛むであろう……骨を削るように、痛むはずだ……」道真は震える指先を持ち上げ、蓮花の頬にかかった後れ毛を、そっと耳の裏へと撫で流してやった。武士の手つきとは思えぬほど、限りなく優しく、切ない手つきだった。「生涯、遊郭の敷居すら跨がなかった私が、初めての女であるそなたに、このようなおぞましい苦痛を与えることになるとは……己がたまらなく憎い」「若様も、くだらぬ心配をなさいますね」蓮花は赤くなった顔を隠そうとわざと鼻を鳴らしたが、男の心からの思いやりに目頭がツンと熱くなった。「これも若様が生涯、操を守り抜かれたからではありませんか。無頼漢のように女遊びをなさっていたら、こんな換陽の術の呪いになどかかりませんでしたよ」「この期に及んで、軽口を叩くか……」道真がフッと湿った笑みをこぼした。笑いは長く続かなかった。道真は再び引き締まった蓮花の表情を見て、言葉を呑み込んだ。「怖くないなどとは言わなくてよい」蓮花が顔を上げた。「なら若様も、平気なふりなどなさらないでください。私の問うことには、ちゃんとお答えくださいね」道真が短く頷いた。その刹那、道真の胸元の心臓のあたりから、再び赤黒い炎が閃き、巨根が暴れ狂った。「くっ……!」道真が呻きを呑み込んで腰を折ると、蓮花は迷うことなく道真のうなじを抱き寄せた。「我慢なさらないで、若様」蓮花の赤く湿った唇が、道真の渇ききった唇へと重ね合わされた。んむっ、じゅるり……。冷たく甘い女の唾液が、道真の焼け焦げそうだった舌と喉の奥へと流れ込んだ。道真は蓮花の細い腰を抱きしめながら、女の口
last update最終更新日 : 2026-10-13
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39話. 自ら踏み出す献身

道真の熱い愛撫に、蓮花の全身が気だるく火照っていった。生涯、冷たい極陰の体質として生きてきて、一度たりとも感じたことのなかった凄まじい熱気だった。蓮花の秘めやかな秘谷(ひこく)の隙間から、澄んだ透明な愛液が露のように滲み出始めていた。冷たい極陰の霊気が凝縮されたその神秘的な露は、猛烈に燃え盛る道真の火魔を吸い取るための、自然な本能の現れであった。部屋の中にはほのかな艾の香りと共に、咲き初めの花蕾から漂うような、甘く湿った陰気の匂いが濃密に立ち込めていた。蓮花は太ももの内側を伝い落ちる熱く冷たい感触に、下腹部を小刻みに震わせた。「はぁ……あぁ……若様、もう……」蓮花は荒い息を吐きながら、道真の広い胸板に手をついてゆっくりと身を起こした。月明かりの下に晒された蓮花の裸身は、聖なる巫女のように神秘的な光を放っていた。道真は夜具の上に仰向けに横たわったまま、血走った目で蓮花を見上げていた。男の股間から黒々とそそり立つ魔物は、もはや人間の限界を遥かに超越して煮えたぎる脈動で部屋の空気すら震わせていた。拳ほどもある亀頭の先のスリットがヒクヒクと蠢き、赤黒い熱液を虚空へとポタポタと滴らせていた。「れ、蓮花……本当に……耐えきれるのか……?」道真の声が羞恥と恐怖で震えていた。道真は答えを急かさなかった。蓮花が顔を上げるのを待ち、唇を固く引き結んだ。普段なら何であれ自分が先に口を開かねば気が済まなかったが、今は彼女の言葉を聞かねばならなかった。蓮花もまた、彼から視線を逸らさなかった。あの狭くか細い生娘の肉体の中へ、このおぞましい凶器をねじ込まねばならぬという罪悪感に、男の目頭が再び赤くなった。蓮花は答える代わりに、華奢な手を伸ばし、煮えたぎる巨根の根元をがっしりと鷲掴みにした。女の冷たい手のひらが触れただけで、道真の全身を雷が貫いた。「く、うぅっ……蓮花……触るな……破裂してしまう……っ!」男は両手で敷布を爪が砕けんばかりに握り締め、腰をガタガタと震わせた。武士の体面も威厳もすべて溶け落ち、ただ蓮花の手つきに救いを乞う無様な姿だった。蓮花は道真の逞しい太ももの上に、慎重に足を押し広げて跨がった。武家の体面と厳格な掟が支配していたこの国で、一介の裏長屋の鍼医が、高貴な奉行の腰の上に全裸で跨がるという奇天烈な光景。しかし二人の瞳の奥には、体面などすでに存在しな
last update最終更新日 : 2026-10-13
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40話. 初めての契りの夜、秘谷の歓喜

ブスッ――!ついに巨大な魔物の丸い亀頭が、蓮花の狭い秘谷の入り口を引き裂かんばかりに押し入った。「あぁあああっ――ッ!」蓮花の口から、引き裂かれるような悲鳴がほとばしり出た。純潔の赤い血が、白く強張った太ももを伝ってツゥと流れ落ち、絹の敷布を赤く染めた。真っ赤に焼けた鉄の杭で下腹部を貫かれたかのような、殺人的な激痛。蓮花の全身が弓なりに反り返り、小刻みに痙攣した。「蓮花――ッ!」道真の目から血の涙がこぼれ落ちた。男は蓮花の華奢な肩を砕けんばかりに抱きしめ、己の唇を強く噛み締めた。己の罪と呪いが、この何の罪もない若い娘を傷つけているという罪悪感に、胸が張り裂けそうだった。「もうやめよう……抜け……私が死ぬ! 私が死ねば済むことだ……っ!」「動……かないでくださいまし……っ! はぁっ……あぁっ……!」道真は蓮花の言葉を聞こうと首を垂れた。普段ならどんな小さな物音にも一喝していた男が、今はひとつの返事を聞き逃すまいと息すら殺していた。「聞いておる……そなたの言うことは、すべて聞いておるぞ」蓮花は彼の肩に置いた手を離さなかった。道真はその手を払いのけも急かしもせず、彼女が顔を上げるのをじっと待った。蓮花は道真の肩に爪を食い込ませながら涙を流した。しかし退きはしなかった。女は震える腰をゆっくりと、ほんの少しずつ、さらに下へと沈め続けた。ミシミシ……。蓮花の狭く冷たい内壁の粘膜が、凶暴な巨根の太い柱を一寸、また一寸と呑み込み始めた。想像すらしたことのなかった、巨大で圧倒的な大きさ。まるで鍛え上げられた鉄の杭が、狭い隙間を力づくで押し広げて入ってくるかのような圧迫感に、蓮花の額にびっしりと脂汗が浮かんだ。しかし肉壁が押し広げられる激痛の合間から、道真の剛直から放たれる熱い脈動が、女の子宮口をドクンドクンと激しく叩き、言葉にできぬ戦慄を呼び覚ました。その瞬間、奇跡が起こった。ジュウウッ――!道真の巨根から噴き出していた黒魔術の殺人的な火魔が、蓮花の体内深くに眠っていた純粋な極陰の霊気と、正面からぶつかり合ったのだ。氷のような女の内壁が煮えたぎる巨根を締め上げ、丹田を焼き尽くしていた呪いの魔気を猛烈に吸い込み始めた。「ひあぁあああ――ッ!」道真の背筋が虚空へと跳ね上がった。男は白目を剥いた。外治や接治とは次元の異なる、魂の底まで溶かしてしまうよ
last update最終更新日 : 2026-10-13
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