悦びは、旧い恋のためにあらず二木和光(ふたき かずみつ)とおせち料理の食材を買いにスーパーへ向かう途中、久しぶりに同じ大学出身の竿代敦(さおしろ あつし)と出会った。
和光を見るなり、敦が口にした最初の言葉はこうだ。
「知ってる?小賀坂葵(おがさか あおい)が帰国したんだって」
私は思わず和光の顔を見た。すると、彼も微笑みながら私を見つめている。
「悦子、また変な想像してるか?葵とはもう、とっくの昔に終わったことだ」
彼は顔を上げ、改めて敦に私を紹介した。
「紹介しよう。俺の彼女、夕部悦子(ゆうべ えつこ)だ。彼女も俺たちと同じ大学の出身だけど、学部は別だ」
正直に言うと、私は変な想像はしていなかった。
というのも、和光と葵の別れ方はお世辞にも綺麗とは言えず、さらに葵は皆の目の前で和光をブロックし、縁を切ったのだ。
その後、長い間葵の話題が出るたびに、和光は苦々しい表情を浮かべていた。
二人が昔話に花を咲かせている間、私は隣の棚へ食材を選びに行った。
戻ってくると、ちょうど敦のこんな言葉が耳に入った。
「実はさ、昨日、小賀坂から君の連絡先を教えてほしいって頼まれ……」