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愛の言葉、もう届かない

愛の言葉、もう届かない

By:  元気Completed
Language: Japanese
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鹿野洋子(しかの ようこ)は、十年間愛し続けた幼なじみによって心理矯正同意書に署名され、帝京市で最も有名な療養所に送られた。 初日、彼女は実験台に押さえつけられ、髪を剃られた。 三日目、電気ショック療法のベッドで意識を失った。 十日目、見知らぬ男に押し倒され、片面ガラス越しに、愛する幼なじみが所長の娘に婚約指輪をはめる姿を目にした。 …… 三年後、洋子は左脚が折られて、ようやく療養所から脱出した。 目の前の医師は残念そうな表情で穏やかに告げた。「子宮がんの転移が深刻で、これ以上の治療は困難です。残された時間は一ヶ月……どうか、美味しいものを食べて、穏やかに過ごしてください」

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Chapter 1

第1話

鹿野洋子(しかの ようこ)は、十年間愛し続けた幼なじみによって心理矯正同意書に署名され、帝京市で最も有名な療養所に送られた。

初日、彼女は実験台に押さえつけられ、髪を剃られた。

三日目、電気ショック療法のベッドで意識を失った。

十日目、見知らぬ男に押し倒され、片面ガラス越しに、愛する幼なじみが所長の娘に婚約指輪をはめる姿を目にした。

……

三年後、洋子は左脚が折られて、ようやく療養所から脱出した。

目の前の医師は残念そうな表情で穏やかに告げた。「子宮がんの転移が深刻で、これ以上の治療は困難です。残された時間は一ヶ月……どうか、美味しいものを食べて、穏やかに過ごしてください」

洋子はその絶望的な知らせを聞いても、表情は変わらず、まるで糸で操られる人形のようだった。医者は深いため息をつき、「根本的な原因は……度重なる流産によるものです……」

洋子は口元を引きつらせた。思い出したくもない過去が脳裏をよぎったが、彼女はそれを必死に押し殺した。うつむいたまま、かすれた声で「ありがとうございます、先生」と言った。

一ヶ月あれば、十分だ。

死ぬ前に、ただ一度でいいから海を見てみたい。

洋子は一文無しだった。旅費を貯めるため、病院の近くにあるコンビニで臨時のバイトを始めた。そこでは店員たちが介護の仕事も兼ねていた。

訪問介護の仕事にも出るようになり、洋子は少しずつだが、早くお金を貯められるようになった。

その日、外はじめじめとした小雨が降っていた。洋子は夜勤で、店内の商品を整理していた。自動ドアの開閉音が響く。

「いらっしゃいま……」その言葉は喉で詰まり、そこで止まった。

避妊具の箱がレジカウンターに投げ出された。男のスーツは半分濡れており、髪の先からは雨水が滴っていた。しかし、その鋭い眼差しは相変わらず冷たく、まるで時間が彼に何の痕跡も残していないかのようだった。

白野純也(しらの じゅんや)の冷ややかな視線が洋子に注がれた瞬間、彼女は全身が凍りついたように感じ、思わず小さく震え始めた。

「洋子」

彼は低くかすれた声で彼女の名を呼んだ。その声はまるで悪魔のささやきのようだった。

「治療期間はまだ二年残っているのに、誰が外に出ていいと言った?」

圧倒的な恐怖が押し寄せ、洋子は叫びながら逃げ出したい衝動に駆られた。しかし、この三年間で骨の髄まで染みついた服従心が彼女をその場に縛りつけ、彼女はうつむいたまま震える声で言った。「もう……治ったの……」

純也はわずかに目を細めた。ナイフのような視線が洋子の体をなぞるように鋭く走った。どれほどの時間が過ぎたのか、彼女の耳に男の嘲るような笑い声が届いた。

「確かに、お前の目つきはずいぶん澄んだな」

洋子の胸が急に締めつけられ、蒼白な唇がかすかに震える。

だが、純也の瞳には次第に嫌悪と憎しみが浮かび始めていた。彼は突然、目の前の相手にぐっと身を寄せ、歯の隙間から絞り出すような声で言った。

「正気に戻ったんなら、そろそろ俺たちの清算を始めようか」

まるで氷水を頭から浴びせられたような衝撃に、洋子は一気に氷の底へ突き落とされたような気がした。

そうだ、彼女と純也の間には、決して越えられない深い憎しみがある――

あの時、彼の姉を無残な最期に追いやったのは、ほかならぬ彼女だった。

「訪問介護だと?」純也の目には濃い嘲笑が浮かび、彼は名刺を無造作に放り投げ、低く冷たい声で言い放った。「金に困ってるのか?じゃあ今夜はうちに来てサービスしてよ」

「私……」

洋子が言葉を発する前に、自動ドアが再び開き、ミニスカートをはいた華やかな女性が入ってきた。

彼女は純也を見るなり、甘えるように体を寄せ、腕にしなだれかかった。頬はほんのり赤く染まっている。

「純也、なんでわざわざコンビニでこれ買ってるの?家にまだ残ってるでしょ?」

洋子はその女性の見覚えのある顔を見て、目の前がぐらりと揺れた。

江崎朋子(えざき ともこ)は療養所の所長の娘で、所長と顔立ちがよく似ている。その顔は……洋子が深夜の悪夢で見る恐怖そのものであり、彼女を奈落の底へと突き落とした存在だった。
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