もう一回、希望の花火を打ち上げる御堂凛(みどう りん)が清純な女子大生に夢中になり、蒼海(そうかい)市中の人々が柊音羽(ひいらぎ おとは)が笑い者になるのを待ち望んでいる。
誰かがわざと尋ねた。
「御堂さん、かつては音羽お嬢様を蒼海の美女だと絶賛し、彼女のために父親と絶縁しかけたのに、もう乗り換えるんですか?」
凛はグラスのウイスキーを揺らし、冷ややかな笑みを口元に浮かべた。
「どんなに美人でも、抱き飽きた。もう顔を見るのもうんざりだ」
音羽が片膝をついて顧客に新しい靴を試着させていると、その噂は回り回って彼女の耳にも届いた。
彼女の指はわずかに震え、目尻はうっすらと赤くなったが、それでも品のある笑顔を保っていた。
顧客は周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから身を乗り出し、声を潜めた。
「柊警部、御堂凛のそばに潜入して二年になりますが、何も掴めていませんね。彼が他の女を愛した今、あなたも手を引いて復帰してはどうですか?」
音羽の瞳に浮かんでいた涙の光は次第に引き、冷たく鋭いものに変わった。
「焦る必要はありません。彼の心変わりこそが、局面を打開するチャンスかもしれないのですから」