あの人は、遠い時の中に結婚式まであと五日。林詩織(はやし しおり)はパソコンで「結婚式のサプライズゲーム」を調べていた。そのとき、画面の右下に、LINEの新着通知が表示される。
【私、もうすぐ結婚するんだ。後悔してる?】
【綾香、今の俺はお金も地位も手に入れた。もう一度俺を見てくれ。
君さえ望めば、新婦なんて今からでも替えられる】
……
どのメッセージも、全部彼女の婚約者――瀬川湊(せがわ みなと)が送ったものだ。
しかも、その送り相手は他でもない。
彼女の義姉――林綾香(はやし あやか)。
たぶん湊は、まだ自分のLINEがノートパソコンでログインしっぱなしになっているのを知らなかったのだろう。
詩織は、そのやり取りを呆然と見つめている。
自分より七つ年上で、いつも自信に満ちて落ち着いた湊が、別の女性の前では、まるで子どもみたいに執着と未練をぶつけている。
画面いっぱいに並ぶ長文のメッセージは、婚約者が義姉に抱いてきた、報われない愛と苦しみのすべてを語っていた。