まず外せないのは『The Name of the Rose』(邦題:『薔薇の名前』)です。中世の修道院を舞台にした古典的傑作で、修道士ウィリアム(ショーン・コネリー)とその弟子が連続死の謎を追う物語。暗く湿った回廊、秘密の図書館、宗教的議論が絡み合う知的な謎解きが魅力で、推理だけでなく時代背景や思想的対立まで濃密に描かれています。映像美や音楽も作品世界を強力に支えていて、ミステリーファンだけでなく歴史ドラマ好きにも刺さる一本です。
また個人的に推薦したいのが『Agnes of God』(邦題:『アグネス』)です。これは修道院を舞台にした法廷的なドラマ兼心理ミステリーで、若い修道女を巡る出来事の真相を精神科医と検事が解きほぐしていきます。超自然的な解釈と医学的・法的な視点がぶつかり合う設定が秀逸で、登場人物の内面描写や演技の強さ(メグ・ティリー、ジェーン・フォンダほか)が重く胸に残ります。結末をめぐる道徳的な問いかけが余韻を長く引きます。
結局、修道院ミステリーは求めるもの次第で楽しみ方が変わります。謎解きの理詰めが好きなら『The Name of the Rose』、人間心理と倫理の揺れを味わいたいなら『Agnes of God』、映像の美しさと不穏さを味わいたいなら『Black Narcissus』が特におすすめです。どれも独特の余韻が残る作品なので、気分に合わせて選んでみてください。
中世の修道院を描いた作品で最も忠実だと感じるのは、やはり'The Name of the Rose'だ。表面的にはミステリー小説として読めるものの、物語の骨格を支える細部描写が実に緻密で、写本制作、典礼の時間割、修道士たちの階級と権力関係、書物が持つ宗教的・政治的価値までが有機的につながっている。図書室の描写や写字作業の描写は、単に舞台装置として技能描写に留まらず、知識を巡る権力闘争という中世の文脈を浮かび上がらせている点が秀逸だと感じた。