愛しき日々の果て、余生は安らかに結婚して三年、橘正明は三年間、妻の千里を憎み続けていた。
雅美が戻ってきたあの日、彼の限界はついに訪れた。
彼は「偽装死」を計画し、雅美と駆け落ちしようとしていたのだ。
「一ヶ月後、死んだことにする。
橘家の後継者という肩書きを捨てて、これからはずっと雅美と一緒に生きていく」
手術室でその言葉を聞いてしまった千里は、すぐさま弁護士に連絡し、離婚届の提出を依頼した。
そして、遠く海外にいる兄に電話をかける。
「兄さん、もう、正明のことはあきらめた。
一緒に、海外で暮らすよ」