過去から抜き出した私自分の研究成果が、夫の留学経験のある後輩――仲程雲雀(なかほど ひばり)に盗まれたと知った葉山芙美子(はやま ふみこ)は、彼女を告訴した。
法廷で対峙したとき、夫――陸川夕星(りくがわ ゆうせい)は雲雀の証人を担当し、多額の弁護費用まで負担して守ろうとしていた。
一審の判決は、芙美子の敗訴だった。
法廷を出た後、夕星は彼女を見つけ、冷たい口調で言い放った。
「芙美子、雲雀はもう一編の論文を発表すれば、海外の企業に応募できるんだ。同じ貧しい出身なら、その機会の貴重さは理解できるだろう?」
芙美子は唇を噛みしめ、声を震わせて反論した。
「機会?彼女が帰国した時、あなたはわざわざ平安市のポジションまで手配してあげたでしょう。それでもまだ、彼女の方が私より『機会』を必要って言うの?」
夕星は鋭く遮った。
「雲雀は俺の恩師の娘で、俺の後輩だ。彼女を助けるのは当然だろう」