三年ぶり、夫と息子と共に帰還婚姻届を提出する当日、伊藤涼介(いとうりょうすけ)は私を戸籍課から追い出させ、幼馴染を連れて中へ入っていった。
彼はまるで他人事のように私を見て言った。
「石井梨央(いしいりお)の子どもは戸籍登録が必要だ。俺たちが離婚したら、あなたを迎えに行く」
誰もが涼介に想いを寄せ続けてきた私は、もう一ヶ月くらいは素直に待つだろうと思っていた。
何せ、私はすでに七年も彼を待ってきたのだから。
だが、その日の夜、私は家族の勧めに従い、国外でのビジネス結婚を受け入れた。
そして、彼の世界から跡形もなく消え去った。
三年後。
私は夫に付き添って帰国し、先祖の墓参りをすることになった。
ところが夫が急な用事で外れ、国内支社の人が私を迎えに来ることになった。
そこで、三年ぶりに涼介と再会するとは思いもしなかった。
「もういい加減、こんな茶番はやめてもいいだろ……梨央の子どもが幼稚園に入るんだ。送り迎えはお前がやれ」