さらに『Drawing on the Right Side of the Brain』のようなベストセラーが一般大衆の言語としてこの二分法を補強した。実際には機能の偏り(lateralization)は存在するが、脳は多数のネットワークが連携して動く統合系であり、左右で完全に役割が分かれるわけではない。こうして誤解は科学の断片と大衆文化の翻訳過程で育ち、現在の神話になったのだと私は考えている。
本格的な評価は神経心理学的検査や脳イメージング、専門家による解釈が必要で、誤解や過剰な単純化を招きやすい。『The Man Who Mistook His Wife for a Hat』のような症例を読むと、脳の局在性は奥深く、素人判断が及ばない複雑さがあると感じるだろう。だから、興味本位で試すのは構わないが、それを根拠に性格や能力を決めつけるのは避けたほうがいいと思う。