過去の恨みと心中した日私は、業界にその名を轟かせる超一流のボディーガードだ。
唯一の任務は、財閥の御曹司、菊川渡(きくがわ わたる)を護衛すること。
渡は傲岸不遜で、私が彼のために死線を潜り抜け、無様な姿を晒すのを何よりの愉しみとしていた。
かつて、私は渡に放たれた銃弾を胸に受け、生死の境を彷徨ったことがある。だが彼は、愛しい幼馴染を抱き寄せ、病室の外で冷ややかに言い放った。
「ただの犬だ。死んだら替えればいい。躾のいい犬など、いくらでもいる」
その後、私は自ら「事故」を演出し、渡の前から完全に姿を消した。
後になって、私は耳にした。渡が狂ったという噂を。
世界中を血眼になって探し回っているらしい。死んだはずの、あの「忠犬」を。