潮風が届かない場所野口亮太(のぐち りょうた)は、野口柚(のぐち ゆず)のことを命がけで愛している。周りの誰もがそう言っていた。
亮太は10年かけて柚を口説き落とし、ずっと大事にしてきた。彼女が少しでも眉をひそめると、心配でたまらなくなるほどだった。
それなのに、そんな亮太は、柚を三度も裏切ったのだ。
一度目は、取引先のパーティーでライバルに薬を盛られ、女子大生と一夜を共にしてしまった。
柚が離婚を切り出すと、亮太はその女子大生をすぐに海外へ行かせ、家の前で3日間も雨に打たれ続けた。
「柚、俺が悪かった。お願いだ、今回だけは許してくれ」
亮太の青ざめた顔を見て、柚は結局、彼を許してしまった。