LOGINレオノーラは五人の子を持つ女性だが、その子らと血縁はなく、種族も竜人やエルフなど多種多様だ。『子供達には経験を積んで欲しい』との信念の元、成人までは面倒を見て順々に独立させた。とうとう末っ子カラミタもが独立。その後三年、義兄達よりも先に帰省した彼は、突然「結婚して」と彼女に迫る。さらに「邪魔な実父(前・魔王)と兄姉を討伐し、新たな魔王に就任した」と告げられ彼女は戸惑う。彼は本気で、自身が赤子から育てた子からの執愛にレオノーラは翻弄されてしまう。 【全50話】
View More『デート』は、私の中では『好意を持っている者同士が一緒に出掛ける事』って認識だ。だから最初はすごく身構えていたのだけど、いざ始まってみると案外いつも通りで、正直少し拍子抜けしてしまった。(街の中の見応えがすごくて、もうどこから回ればいいのか迷うくらいだし……むしろこれくらいの方が良かったのかも。初めて来た街なのに、『デート』なんだって意識し過ぎて楽しめないなんて勿体ないもんね) この街は各国の中でも最上位に当たる広さだ。一日で観光ポイントの全てを巡るなんて現実的じゃない。だからまずは手近な所から見ていこうと決め、焼き串やサンドイッチを露店で買って半分こにしたり、雑貨や装飾品を売っている店を見て回ったりした。 その間、いつもの様に手を繋ぐのはともかく、周囲の状況次第では何度も縦抱きされたりもする。人通りが多いから逸れない為だと分かってはいるけれど、一応『大人』としてはやっぱり少し気恥ずかしい。これでは『(書類上の)妻』というより『子供』扱いされている気がしなくもない。 それでも、距離が近い時ほどカラミタが嬉しそうにしているのを見ると、結局何も言えなくなってしまう。 にしても、これが『デート』ならいくらでもどんとこいって感じだ。いつものお買い物の延長みたいなものだから、この先も緊張せずに済みそうだ。「『いつものお出掛けと何が違うの?』って思ってるでしょ」 先ほど買ってもらった世界樹をモチーフにした飴細工を割り、聖獣達と分け合いながら食べていると、カラミタにそう訊かれた。「そうね」と正直に返すと、彼は気分を害する事なく微笑んだ。「ボクはいつだって、レラとのお出掛けはデート気分だったからね。そう大差が無いのは当然だよ」 そう言われて、すぐ腑に落ちた。幼い頃から毎日の様に『結婚しようね』と言われていたのだ。家族との買い出しですら、彼の中ではずっと特別だったのだろう。(……よく考えたら、買い物の時はいつもカラが隣に居て、セリン達はそれぞれ別の事をしていた気がするな) 思い返してみると、セリン達とカラミタでは行動がまるで違う。私への距離も、態度も。みんな人懐っこくて優しかったけれど、カラミタだけは昔からずっと変わらない。(って事は……昔から、ずっと?) 改めてそう認識すると、じわじわと彼の好意が実感として染みてくる。触れている箇所から伝わる体温、近い
お互いを補いつつ発動させた転移魔法により、数秒後にはもう、シルト王国の首都であるラウシュベルの主要な門から程近い地点に到着した。 街を取り囲む高い外壁や守衛達が守る門の近くではありながらも、木々などによる物陰が多いおかげで、転移してきた者が居る事に気付く者はない。 本来ならば転移魔法は気軽に使える様な魔法ではない。だが、魔力の豊富さからそれをメインの移動手段にしているレオノーラの為に、カラミタが事前調査しておいた最適な出現地点である。レオノーラの為ならば何だってする彼の行動に抜かりは無かった。 レオノーラは既に着ているローブのフードを、聖獣達ごと目深く被っているせいで、頭のラインが歪な形になっている。長年使い倒した拾い物のローブではなく、子供達から贈ってもらった物だ。折角の洒落たデザインなのに、これでは色々と台無しだ。 ——そんな姿のまま、そっと物陰から顔を覗かせて周囲の様子を伺った。流石は城下町に繋がる一番大きな門だ。行き交う人が多いせいで少し尻込みしてしまう。「ほら、行くよ」 カラミタに手を引かれ、「あ、うん」と返しつつレオノーラが彼の後に続いた。 彼はフードを被るどころか、『魔族』である事を隠す魔導具すら身に付けずに堂々としている。だからか、すれ違う人々が次々に好奇の目を二人に向けてくる。だがその視線に恐怖や怒りなどは殆ど無く、すっかり『魔族』は『畏怖の対象』と言うよりも『新たな隣人』という地位を得始めているのだなとレオノーラは体感した。「……すごいね。以前とは、『魔族』に対する認識が全然違う」「あぁ、兄さん達が四方八方色々と手を打ってくれたからね。有能な商人達からは軒並み『賢い』とか『互いにとって有益な種族である』ってじわじわ広がっていっているし、『魔王の討伐』の一件を演劇にして上演したりもして、少なくとも『種族単位で害意ある存在』じゃない事をアピールし続けているんだ」(きっと、アイシャの考えだ!)「な!何それ!私も観たいんですけど!」 「盛りに盛ってるから、ダァメ」と言いつつ振り返り、カラミタがレオノーラの頭をぐりっと撫でた。余程恥ずかしいのか、ちょっと頬が赤い。自分が舞台に立っている訳ではないのだが、舞台向けに随分と崇高な目的の為に先代の“魔王”を討伐したみたいに語られているから、どうにも見るに耐えないみたいだ。「そっか
レオノーラの長い人生の中で初めて得た身分証が無事に完成し、彼らはもう午後にはセリン達が拠点にしている『シルト王国』に向かう事を決めた。身分証が手に入ったのだ、折角なので使ってみたいという気持ち半分。残りは『子供達に会いたい』だけじゃなく、『聖獣達の見せ物になるのは恥ずかしいから』も理由の一つであった。(普段の生活を見られる事は全然構わないけど、流石に、カラとのアレは……) ちょっとそんな事を考えるだけでもじわりと体が熱くなってしまう。見られているかもと思うだけで感じてしまうとかじゃなくて、純粋にひたすら恥ずかしい。 流石に聖獣達も空気を読んでいてそこまでは観察されていないとは知らないレオノーラが顔を真っ赤にしたまま荷造りをしていると、「——そっちの準備はどう?」とカラミタが雑多に荷物の入る籠を抱えながらリビングに戻って来た。「もうすぐ終わる、かな?」 「『かな?』って」と言い、カラミタが笑う。 「だ、だって、泊まりでの外出なんかこれが初めてみたいなものだし、何を持っていけばいいとか、全然わからないから」 「身一つで大丈夫だよ、足りない物は買えばいい。あ、お金の心配はしないでね。兄さん達もボクも、討伐とかでかなりの額の報奨金をもらっているからさ」 そうは言われても、『……現状でも沢山物をもらい過ぎているから、これ以上は流石に』とどうしたって考えてしまう。“子供”に出させてしまうのも、“母親”としてはどうしたって気になるし、足りないからと向こうで買って、戻って来た時に『それらをどこに仕舞えと?』と自室の小さなクローゼットのサイズを頭に浮かべながらレオノーラは思った。「次に家に戻って来る時は、レラのクローゼットにも鞄みたいに収納魔法か空間系の魔法を付与しようか。それか将来の為にも家の増設をしてもいいかもね!」 いつか生まれるであろう自分達の子供の事を考えつつ、カラミタが提案する。だがレオノーラの方には、そういった様子は全くなく、「そうだね、それもありかも」と普通に返した。残念ながらカラミタの言葉の意図は全然伝わらなかったみたいだ。 ◇ 庭仕事や部屋の管理などはゴーレム達に全て任せ、『出発前に世界樹を見納めしておこう』という話になり、レオノーラとカラミタが小さな鞄を持って外に出る。すると—— 何故か家の前に二体の聖獣達がドンッと座り
レオノーラとカラミタの結婚式まで残り二週間に迫ってきた。そんな中でも相変わらずカラミタはレオノーラを愛でてばかりで、婚前のバタバタした感じは微塵も無い。それもこれも、全て自分が手出し出来る範囲の準備に関してはキッチリ終わらせてから帰省したからである。「——あ、そうだ。ねぇねぇ、レラァ。挙式の日が近づいてきたし、そろそろ兄さん達が拠点にしている街に戻ろうかと思うんだけど、レラはどう思う?」「…………っ」 甘い声で突如訊かれ、『今、訊く?』とでも言いたげな瞳をしながら、レオノーラがゆっくり振り返る。彼女は現在、息も絶え絶えといった様子で、頬も赤く、瞳もどこか虚ろだ。小さな体をビクビクと小刻みに震わせ、もじもじと脚を擦り寄せる仕草は、まるでカラミタを誘っている様でもある。そんな姿の彼女を見て、カラミタがゾクッと体を歓喜で震わせた。この表情が見たかったのだと、彼はとても満足気だ。「あぁぁぁっ。イキたいのにイケないから苦しいねぇ、辛いねぇ。あ、でもね、あと二週間もしたら、たっぷりと、ココ、弄ってあげられるよ?楽しみだねぇ……奥とか、敏感なところを硬ったいのでスリスリゴリゴリされたら、一気に飛んじゃうかもね」 自分の膝の上に座るレオノーラの脚の間にそっと指を添え、下着越しにくりくりっと優しく撫でた。レースだけで作られた卑猥なショーツ越しであろうが、小さな肉芽が快楽を欲して勃起しているのがわかり、カラミタの顔が卑猥にニヤける。 奥からとろとろと愛液が溢れ出ているせいで、濡れたショーツがずっと気持ち悪いのだが、カラミタの指先がその上で動くと、すぐに『気持ちいい』と思ってしまうのが何だか悔しい。なのに嬉しそうな顔をされると、胎の奥から嬉しくなってしまい、レオノーラは随分と複雑な心境の様だ。(すっかり絆されるっ) そんなヌルい言葉ではなく、もう完全に『調教済みである』と言った方が正しいくらいの状況なのだが、そういった単語をそもそも知らない為、レオノーラはそのくらいの感覚で現状を受け止めているみたいだ。「……あんまり弄るとイッちゃうかもだから、今日もこのくらいにしておこうか」 すっと指先の熱が遠退き、ホッとするよりも先に切なくなった。だが『今日も根比べには勝てたぞ』と、どうにかこうにか気持ちを切り替えていく。 着崩れ過ぎて、もう腕や足首に引っかかっているだけの状
「——えっと、つまりは、だ。これが正しい『伝承』なら、この世界は一回滅亡してるって事?」 「ただの妄想じゃないんだったら、そういう事になるよな」と、アイシャの推測にリトスが言葉を添えた。 「小説めいた空想を、わざわざ何カ所ものダンジョンの最奥にある壁に書いて、厳重に保管はしないんじゃないかなぁ。魔王討伐前までは、この壁画の部屋は、サーチ系の魔法ですら感知出来ていなかったみたいなんだし」 「うん。レラの言う通り、間違いなく、これはこの星の歴史の一部だよ」と、いつの間にかレオノーラを膝の上に座らせてご満悦状態にあるカラミタが頷いた。 「それって、魔族達が『継承してる記憶』のおかげで得た確
……『冒険』って、何だっけ? そんな事を考える日が来るとは数十分前までは全然思ってもいなかった。未婚のまま五人の子持ちになった頃よりも深く考えてしまうのは、全て目の前の光景のせいだ。 ——四人で未踏破ダンジョンの攻略に挑もうと、『深淵の森』にある古代遺跡の入り口から揃って潜った。 一、二階層目はもう聖獣達と攻略済みだった為敵が少なく、出ても何処にでもいる様なクマネズミくらいなものだったおかげで比較的安全に通過する事が出来た。 完全なる未踏破エリアである三階層目まで潜ったと同時にアイシャが私と手を繋ぎ、周囲にドーム型の結界を展開したのを合図にして、カラミタとリトスの二人が先陣を切って
朝食を食べ終えて一時間後。いつもならまだまだ色々と忙しい時間帯なのだが——(困った。……暇だ) アイシャがカラミタに持たせてくれた十体ものゴーレム達のせい……もとい、おかげでもう家事の大半が終わってしまったのだ。五人もの食べ盛りな男の子達の腹を満たせていた程に広大な畑に行くと、既に手早く雑草は抜かれ、収穫可能なものは魔導具でもある保存庫の方に運び終わっていた。 庭の花の手入れも、洗濯も、室内の掃除なんかも終わっている。 なら『普段はちょっとサボりがちな風呂場の掃除を』と思って足を運ぶと、そこもゴーレム達が掃除し終わった後だった。 洗濯物は流石にまだ乾いていないから、畳んで片付ける
昨日、十五歳で独立した末っ子が執愛気質持ちになって三年ぶりに帰って来た。 ……だけど改めてちゃんと思い返し、『あれ?カラの昔の様子を振り返ってみたけど、元々そう、だったのかも?』と今更気が付きながらベッドの上で怠い体をゆっくり起こす。昨日の出来事を全て『夢だった』と思いたいくらいの気分なのに、食卓テーブルで擦れて床擦れみたいになってしまっている背中の傷の痛みと、普段しない可動域を強要された股関節がギシギシと悲鳴をあげていて、『現実』だったと残酷なまでに突き付けている。(……にしても、私達がもう既に『結婚した』って本当なのかな) 渡された書類に流れ作業的にサインを書いた『だけ』なせいで