独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た

独立した末っ子が執愛属性持ち『魔王』になって帰って来た

last updateHuling Na-update : 2026-04-29
By:  月咲やまなIn-update ngayon lang
Language: Japanese
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レオノーラは五人の子を持つ女性だが、その子らと血縁はなく、種族も竜人やエルフなど多種多様だ。『子供達には経験を積んで欲しい』との信念の元、成人までは面倒を見て順々に独立させた。とうとう末っ子カラミタもが独立。その後三年、義兄達よりも先に帰省した彼は、突然「結婚して」と彼女に迫る。さらに「邪魔な実父(前・魔王)と兄姉を討伐し、新たな魔王に就任した」と告げられ彼女は戸惑う。彼は本気で、自身が赤子から育てた子からの執愛にレオノーラは翻弄されてしまう。 【全50話】

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Kabanata 1

【プロローグ】

"I'm sorry, Ms. Walker. You've missed the best window for surgery."

Ariel Walker stood frozen, holding the lab report confirming her endometrial cancer. It took her a long time to gather herself before dialing Colton Zeller, her husband Jayson Larkin's secretary.

The phone rang for ages before Colton finally picked up. His tone was as lazy as ever. "Yes, Mrs. Larkin?"

Ariel curled her stiff fingers into a fist. "Where's Jayson? I need to talk to him."

"Mr. Larkin is unavailable."

"Can you at least pass him the phone?"

Before Colton could answer, a soft voice came through the receiver. "Jayson, what's with all the secrecy? What's the big surprise?"

"Look up."

Ariel heard the familiar, deep voice that held a tenderness she would never receive.

The next moment, Colton hung up the phone.

At the same time, a thunderous explosion echoed across the harbor. Ariel lifted her head, her face drained of color.

Beautiful fireworks burst into the night sky, painting the darkness with dazzling streaks of color, just like in fairy tales.

Outside the hospital, a crowd had gathered.

"Did you hear? The CEO of Bluum Corp, Mr. Larkin, spent over 20 million dollars on this firework show for his girlfriend's birthday!"

"It's Nancy Stanton we're talking about! An Arcadia Tech PhD! Every top company in the country is fighting to hire her. She's smart, gorgeous, comes from an elite family, and her boyfriend is rich and ridiculously hot!"

"No wonder Mr. Larkin adores her. A woman like that is a status symbol."

Ariel stared at the brilliant fireworks for a long time before her fingers slowly loosened. The lab report slipped from her grasp, fluttering to the ground.

She turned and walked away.

Jayson returned home in the early hours to find Ariel sitting alone in the dark living room.

He flipped on the light, frowning. "Why aren't you asleep?"

She looked up at him. His jacket was draped over his arm. His cold eyes met hers, as impassive as ever.

For years, Ariel had convinced herself that he was simply distant by nature. But tonight, she finally understood. The man she shared a bed with was ice, but in another woman's world, he burned like fire.

"I couldn't sleep," she said quietly. "By the way, I went to the hospital today."

Jayson tossed his jacket onto the couch and asked casually, "What did the doctor say?"

Ariel had been complaining about stomach pain for weeks. He had promised to take her to get it checked out but kept postponing it.

Whether it was a multi-million-dollar contract or tricky project issues, something always came up.

Just yesterday, Jayson had told her he'd go to the hospital with her. But Nancy actually hid her birthday from him?

He had rushed straight to Nancy's side, barely making it in time to set off the fireworks.

Ariel, as it turned out, hadn't even crossed his mind.

"Nothing serious. I'll be fine." Ariel lowered her gaze. "What about you? What brings you home tonight?"

Jayson hesitated for a second, then stepped closer.

He pulled her into his arms, his breath warm against her neck. His voice was low and husky as he said, "It's your ovulation window.

"You were the one who agreed to sleep with me on these nights every month to give my family an heir. Have you forgotten?"

The scent of women's perfume on Jayson was so thick that it shattered the last shreds of Ariel's dignity like a bullet.

Jayson was right. In the three years they'd been married, he had never wanted her. The only reason he even came home and slept with her was because of his grandmother, Betty Stewart, who constantly nagged about carrying on the Larkin bloodline.

She was lost in thought for a moment. Having a baby seemed impossible now.

Ariel had always been submissive. But tonight, something inside her snapped.

"Aren't you worried your girlfriend will be jealous?"

Her eyes gleamed in the dim light like a caged animal's might before it bared its teeth.

Jayson looked at her and noticed the seriousness in her expression as her gaze grew colder.

After a long silence, he let out a cold laugh.

"Why should I be worried? We're in a secret marriage. You're the one hiding in the shadows. You chose to be the side character. So why are you acting like the main one?"
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45 Kabanata
【プロローグ】
 私には五人の子供がいる。 全員血の繋がりはなく、親を失った挙句路頭で生活していた子だったり、元の場所からは逃げて来たばかりだったりと、様々な事情により自活せざるおえなくなった子供達だ。 世界樹・『ユグドラシル』と同じ名を持つ大陸の中央に位置する世界樹近傍の元。数多の精霊や聖獣達とのんびり暮らしてきた独り身の私では、色々な種族の子達の子育てなんて到底務まるとは正直思えなかったのだが、皆とても賢い子達だったおかげでお互いに助け合って日々を過ごした。 そうするうち、一人、また一人と、十五歳という成人年齢になったのを機に子供達は独立していった。いつまでも森の最深部に引き篭もっていては駄目だと思ったから『成人までは面倒を見るけど、それ以降は色々な経験をして』と私が引いた一線だった。一番長く森の奥に引き篭もっているのは他ならぬ私自身なので『どの口が言う』って感じだが、それでも。 三年程前にはとうとう最後の一人も独立し、今もまだ独りきりで暮らしている。もう他の子供は拾っていないし、この先は拾う気もない。私が動かずとも孤児の引受先が今なら多くあるのだから。 『情だけで五人も育て切ったんだ、誇らしくはあれども寂しくない』と言ったら嘘になる。だけど流石に『世界平和』なんて偉業を提げて、末っ子が魔族達の最高権力者である『魔王』になったうえ、『ヤンデレ』としか言いようがない程の執愛属性持ちになって帰省するだなんて未来はちっとも想像していなかった——
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【第1話】『母親』の生い立ち・前編
 この大陸の中央部には太古の昔から皆々に『ユグドラシル』と呼ばれる異常な程に巨大な『世界樹』が存在している。山程に巨大なその大樹の麓には聖獣や精霊、妖精などといった不可思議な生命が数多く棲息し、その他の生き物達の侵入を拒む。そんな地域を取り囲む様にして広大な森林地帯が広がり、更にその森を越えてやっと、一番人口比率の高いヒューマ族、次いで獣人、竜人、エルフなどといった多種多様な種族達が暮らしを営む地域が点在する様になる。そして更に大陸の外輪方向に向かうと危険度の高い魔物達が住まう『外界』もしくは『外輪界』と呼称されている禁断の地へと繋がる。その地域はとても危険で、魔物だけじゃなく、かなり好戦的な『魔族』と呼ばれる種族の生息域にもなり、平和に暮らす人々の生活を日々脅かしている。そのせいで大陸の外輪側へ行けば行く程に治安が悪く、『スラム』と呼ばれる貧民街が多くなっていく。 ヒューマ族の少女・レオノーラが生まれ育ったのも、とある国の外界近くにあるスラムの一角だった。 物心ついた時にはすでに親もなく、一人路地の片隅で生きてきた。痩せたネズミの肉を奪い合い、食い残しのゴミを漁ったり雑草を食らって飢えを誤魔化し、汚泥を啜っての生活はただただ苦しく、心も体も日に日に疲弊していく。何の為に生きているのかもわからず、他人は全て敵に見え、生きているのも辛いが死ぬのも怖い。体調を崩して倒れても、周囲には似た境遇の者達ばかりで余力など誰にも無く、助けなんか当然無いからいつも己の回復力だけが頼りだ。『回復』などといった魔法を覚える伝手もなく、体が丈夫な訳でもない。器用貧乏タイプである『ヒューマ族』の子供はどこまでも無力だった……。 そんな日々が続く中。レオノーラの住むスラムに『救済院』の一団がやって来た。各国の教会に所属しいる回復能力に特化した『聖女』や『神官』達が主体となっている団体で、貧民街での炊き出しや仕事の斡旋、シェルターの建設、生活環境の改善などといった活動を行っている組織である。活動の一環で保護者のいない子供達を保護してもいるのだが、自分が保護対象であった事をレオノーラが知ったのは、残念ながら彼らが次の地域に向かった後だった。 平屋の簡素な造りではあるものの、レオノーラはしばらくの間は救済院の建設したシェルターで過ごす事にした。もう救済院が去った後だったので食事
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【第2話】『母親』の生い立ち・後編
 これは偶然か、あるいは必然か。 どちらかもわからぬまま世界樹・ユグドラシルの麓にまで到達したレオノーラは、この地を逃亡生活の終着地点と決めた。すっかり人間不信持ちと化していた子供にとって人っこ一人居ないこの地は天国にも等しかったからだ。 この付近は外界を巣食う凶暴な魔物どころか普通の動物すらも生息しない地域ではあるが、代わりに聖獣、精霊や妖精といった他ではほぼいない生き物が数多く暮らしている。それらの存在に目の敵にされたとなれば『流石に此処での生活は無理だなぁ』と彼女は不安を抱いていたが、『幼児』という弱者故にか幸いにして敵視はされず、レオノーラはゆっくりと少しづつ、ヒューマ族としてはあり得ない程の長い長い歳月をかけて身の回りの生活環境を整えていった。 最初は近傍にあった木の根元の穴で暮らし、探索中に洞窟を発見してからはそこへ移り住み、聖獣や精霊達の扱う魔法を見様見真似でマスターしていき、風属性魔法を覚えてからは巨大な老木の内部を改装して家造りにも挑戦した。 不安定な『魔力溜まり』をいつまでも頼って移動する事はやめ、転移魔法を自己流で習得してからは自ら進んで『深淵の森』にまで行って、人々が捨てた粗大ゴミ、盗賊や動物などに襲われた結果放置された馬車や荷物を集めて色々な物資を調達し、文字はほぼ読めないながらも本の挿絵から少しの学びも得ていった。 その間。木の実や湧水といった形でユグドラシルの恩恵を受け続け、レオノーラの老化は極端な程緩やかになり、彼女の外見は一応二十歳前後でほぼほぼ止まった。だが子供の頃の栄養失調が災いして彼女の背は百三十センチ程度とかなり低く、胸がそこそこ大きくなければ“子供”と見紛う程である。ゆるふわっとしたクセのあるセミロングの髪は自分で切っているので少し不恰好だが、水色という綺麗な髪色がそれをカバーしてくれている。スラムに居た頃には闇に沈んだような雰囲気だったワインレッド色の瞳はすっかり生気を取り戻して生き生きとしており、最近では土属性魔法も覚えたので、小さいながらも畑を作って農作業もしているからほんのちょっとだけ筋肉質っぽい体型となったが、スラム街で暮らしていた頃の骨と皮だけだった自分の体を思い出すと、『これで良い』と彼女はすぐに思えた。        ◇ 世界樹の麓での一人暮らしはつつがなく営めていたかに思えたが、次第
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【第3話】『長男』との出会い①
 世界樹をその中心部に有するが故に同名で呼ばれる『ユグドラシル大陸』の北部にある『スノート』という町の郊外にレオノーラは到着した。外界近くにはほぼほぼスラム街がある王都や皇都ではなく、とある王国に属する辺境伯の領地内にある町だ。中規模なおかげで全体的に平穏であり、統治者の手腕故か目抜通りには活気がある。『この規模であれば買い物先には困らないだろう』と期待しつつレオノーラは早速町に足を踏み入れた。——が、最速着ているローブのフードを被り、そっと顔を隠した。長年他人と接してこない間に人間不信からは脱却出来た気でいたが、どうにもまだ他人の視線が少し怖い。『これだけの人が居るんだ、誰も私なんか見ていない』とは思うが、それでも『自意識過剰過ぎるか』の一言で片付けられはしない程、過去の経験が彼女の中で根深く残っていたようだ。(……えっと。買取のお店って、何処にあるんだろう?) 少しずつではあったものの、何とか気を取り直して目的を果たそうとしたが、初めて来た町であり、品物の売却が可能な店はその存在を“知っている”程度の知識なので正直何処に行けばいいのか見当もつかない。旅人達のおかげで活気はあれども、五千人程度が暮らす町となると、そもそも此処には無いという可能性もあり得る。かといって誰かに『買取専門の店は有りますか?』『それは何処ですか?』などと訊く度胸もなく、文字は短くて簡単な単語くらいしか読めず、そそっと道の隅っこに寄って呆然としてしまう。約百五十年ぶりに町にまで来たはいいが、レオノーラはもう既に帰りたくなってきた。(ひ、引き返す?服は……また拾えるかもだし。胡椒以外の“調味料”ってどんな味があるんだろう?って、ただちょっと、ちょーっと気になっていただけの話だし、肌着は……どうせ一人なんだから、まぁ我慢すれば何とか?) 彼女の頭の中で言い訳ばかりが次々に浮かび始めた、その時—— 「何かお困りですか?」と不意に誰かから声を掛けられた。声質的に小さな子供の声だ。そのおかげで条件反射的に警戒する事なく、レオノーラは声のした方へ視線を移した。「何か僕にお手伝い出来る事はありませんか?……もちろん、手数料は頂きますけど」 丁寧な言葉遣いだが、声の主はその声質から察した通りまだ子供だった。しかも『竜人族』の子供だ。空の覇者である『竜』を始祖に持つとも言われて
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【第4話】『長男』との出会い②
「——助かったぁぁぁ!ありがとう!本当にありがとう!」 相手が子供だからなのか、気安い感じでレオノーラがセリンの両手をギュッと握り、軽く上下にブンブンと振っている。余程嬉しかったのだろう。とてもじゃないが根っからの『人間不信持ち』だとは思えないくらいのテンションだ。「まさか、持ち込み品を全部買い取ってもらえるなんて!」 ほぼ空っぽになった革製の鞄の中を覗き込みながらレオノーラが嬉しそうにしている。そんな彼女に「本当ですね、僕も驚きです」とセリンが言った。 ——セリンがレオノーラに声を掛ける少し前。 彼が彼女に抱いた印象は『不審』だった。男性物、女性物とが混じった不恰好な服装、よくよく見るとサイズも合っておらず素人修繕の形跡だらけで状態も良くはない。そんな様相の小柄な女性が、着ているローブのフードを目深く被り、道の端っこで項垂れているせいで周囲の者達も彼と同じ様にレオノーラを少し不審がっていた。だがすぐ後にキョロキョロと周辺の看板などを見渡す姿を見て、やっと『あぁ、ただ困っているだけか』と察したセリンが声を掛けたのだ。町の案内を生業にしている他の大人に任せたら喰い物にされて終わりそうだからという懸念もあったから、我先にと。(そんな女性の持ち込んだ物がどれも最高品質だったとか……普通想像出来るか?) 最初に入った薬屋では回復薬と塗り薬を買い取ってもらったのだが、そもそも本物なのか、薬の状態に問題は無いかなどを『鑑定鏡(簡易版)』と呼ばれる虫眼鏡の様な形をした魔導具で確認してみると『最高品質』との結果が出た。そのおかげで店員から飛び付かれんばかりの勢いで全て買い取ってもらえたのだが、その結果に一番驚いていたのは持ち込んだレオノーラだった。薬学の知識も無い者が積み重ねた経験だけを頼りに作っている物なのだから当然だろう。 次に行った店は雑貨屋だった。庶民向けの安価な物ばかりを置いている店だ。 世界樹をモチーフにした手製の木製プレートであれば此処だろうと持ち込み、それらも全て買い取ってもらえた。こちらも魔導具で鑑定した結果『魔物避け』の効果が付与された物である事が判明して想像よりもずっと高値となった。髪飾りやブローチに加工し、今後は『旅のお守り』として販売されるそうだ。この様な効果が付与されているのは世界樹の木の一部を使っていたおかげなのだが、彼女は
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【第5話】『長男』との出会い③
 ヒトは驚き過ぎると言葉を失うらしい。——まさにセリンは今その状態に陥っているのだが、もう見慣れ過ぎてもはや『そんなモノ』は背景の一部でしかないレオノーラは彼の背中を両手で押し、「ほらほら、此処まで来たんだからもう遠慮はしないで」と言って強引に家の中に押し込もうとしている。「いや、ホント、ちょっと待って!」 遠慮だなんだとか、もうそれ所ではないセリンが足を踏ん張りレオノーラを止める。そして北方向に振り返り、問題のモノを指差しながら「——アレって、まさか、『世界樹だ』なんて言いませんよね⁉︎」とクソデカボイスで訊いた。(おぉー。この子って、こんな声も出るんだ) 竜人族だとしても、それにしたってとてもじゃないが四歳児とは思えぬ真面目で落ち着いた話し方ばかりだったセリンの子供らしい驚き方を前にして、レオノーラが口元を綻ばせた。「その『まさか』だよ。アレがこの大陸名の由来にもなった、かの有名な『世界樹・ユグドラシル』です!」 そう言ってレオノーラが絵画の紹介でもする様な仕草をする。するとセリンはまた言葉を失い、ゆっくりとした動きで世界樹を仰ぎ見た。 北方向の一面が完全に世界樹のみで占領されている。大陸内にあるどの山脈よりも遥かに高い世界樹があまりに近くて、もはや万里の壁だ。無数の人々が暮らす地域からでもその片鱗が見える程に巨大な世界樹を間近で観た経験なんかセリンにはあるはずがなく、圧倒されるばかりで感想すらも出てこない。世界樹と彼らが立つ位置の間にはレオノーラが作ったであろう畑や庭っぽいもの、そして少しの森があるとはいえ、それでもかなり近い。そのせいで北方向にだって当然茜色に染まる美しい空があるはずなのに欠片も見えず、常識を超えた太過ぎる幹や生い茂る枝の力強さにただただ目を奪われるばかりだ。「明日、明るくなったら改めてまた眺めると良いよ。まずはほら、夜ご飯を食べたり、お風呂にも入ろうか」 セリンはまたレオノーラに背中を押されたが、今度は素直に従った。『もしかして……僕はとんでもない人について来てしまったのか?』と彼は思ったが、久方ぶりに子供らしい扱いをされている事がちょっと嬉しくもあった。        ◇ 「すっきり出来た?」 レオノーラが、露天風呂からあがって来たばかりのセリンに声を掛けた。鱗のみで覆われたセリンの肌にはまだ水滴が残ってはいるが、
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【第6話】《回想◇現在》半年前の出来事(セリン・談)
 あの日も始まりはいつも通りだった。日の出と同時に親に起こされ、食事を摂り、家族総出で畑仕事に取り組む。高い山の上にある僕らの村では大きな畑は作れないので何処も段々畑になっている。そんな畑を分担して手入れし、羊などの面倒を見たりもしているうちに昼になり、夜になったらまた皆でゆっくり休む。そんなルーティンが今日も繰り返されて一日が終わるはずだったのに—— 突如出現した一体の『魔族』のせいで、全てが一瞬のうちに塵と化した。 我ら『竜人族』の住む村は始祖となる『竜』に守られていると巷では言われているが、アレは嘘だ。ただ単に『魔族』には単独で飛行能力がある者がこれまでにはいなかった事と、そもそも竜人族だけでも『魔物』くらいまでならばその腕っぷしと屈強さで充分対応出来ていたと言うだけの話なのだ。 だがあの日現れた魔族は突然変異種か何かだったのか、単独での飛行能力を有していた。 子供並みに小さな体に蝙蝠の様な翼を持ち、空から急に、しかも奴は一方的に竜人族を惨殺していった。青かった空は同時発生した火災による黒煙で闇夜のように染まり、動物の鳴き声や風音くらいしか流れぬ村には僕の家族や親戚、隣人達などの怒号や悲鳴などが響き渡った。先祖代々直しながら暮らしていた家は残らず焼け落ち、崩れ去り、瞬く間に小さな村が焼け野原になっていく。 魔族の到来は、もはや天災だ。 必死に抗うが無駄に終わり、高山地域では他に逃げられもせず、攻撃される理由も何もかもわからぬまま僕らの全てが『無』と化していく。……家族からの指示と誘導で崖の隙間奥に隠れていた僕だけが生き残ったという結末を知ったのは、魔族の出現から三日後の事だった。 風音以外には何も音が無くなり、強大な存在の気配も消えた事を確認し、のっそりとした動きで崖の隙間から這い出て村だった場所に戻っても……もう、何も生きてはいなかった。焼け焦げた塊としてだけ点々と残っているだけだ。近づいても元は誰だったのかもわからない。そっと触れれば崩れ落ち、強い風の中へと消えていってしまった。 現実味の無い景色だった。  そのせいで涙も出ない。 ただ茫然と、知らない景色の前で立ち尽くして、虚無感に支配されたまま一日が流れ去っていった。  四日目。僕は墓を掘り始めた。灰となり、塵となり、風にその身が消え去っていこうとも、家族と同族達の弔いをし
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【第7話】予想外(レオノーラ・談)
 あの時、誰がこの、『目の前の光景』を想像しただろうか……。 少なくともセリンと出会った頃の私は『今の状況』なんか微塵も想像してなどいなかった。「——母さん!早く早くー」 「いやいや。アイシャが待て、急かすな。あんまり焦らせると母さんが転ぶだろ」 「そんなに先に行きたいなら、俺と行こうぜ!アイシャ」 「母さんは焦らずに僕と一緒にいきましょう。ね?」と言って、セリンが私に手を貸してくれた。「……う、うん」と返した私の前を、今では四人の子供達がほぼほぼ走る様に先を行く。 子供が四人。 そう。四人も、居るのだ。 セリンと親子関係になったあの日からもうかれこれ十二年。その間に私は四人もの子持ちになってしまった。今でも当然夫はおらず、全員と血は繋がっていない。だけど仲は良い方だと思う。私には比較対象が無いから断言は出来ないし、内心では我慢させているだけかもしれないけど……。       ◇ 家族全員で日用品の買い出しに町にまで行こうとしているところだ。 我先にと前を走り、『早く早く』と私を急かした茶色い髪の子の名前は『アイシャ』。 一年前の年初め頃、こことは別の町で保護した『エルフ族』の子供だ。まだ五歳だったのに『手先が器用で賢いから』という理由で錬金術師の弟子として働いていたのだが、随分前に私が売った回復薬の出来に感銘を受けていたとかで、ずっと私の事を探していたらしい。 初めて会うなり、『見付けたぞ!ウチを弟子にしてくれ!』と強引に引っ付いてきたので仕方なく保護した。結局『弟子』なんて名ばかりで、家にある本を片っ端から読んで独学で錬金術をマスターしていっている所謂『天才』だ。なので結局彼も私の『子供』という体で落ち着いた。 私を急かすアイシャを宥めた黒髪の子の名前は『テオドール』という。 実家は既に没落してしまったが、元は貴族の三男坊で、スラム街の様な場所に流れ着いてしまっていたところを私が自主的に保護した。セリンとの出会いからは四年後の事なので、この子は我が家の次男坊に当たる。当時はまだ三歳だったのに路地で暮らす彼の姿を過去の自分と重ねてしまい、『赤い実のくだものがあるんだけど、食べる?』と自分から声を掛けた。結局そのまま捨て置けず、本人の同意を得て連れ帰った。 セリンと同じく魔族に兄達を殺されたらしく、他に頼る先も無
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【第7話・こぼれ話】母の知らぬ裏側(セリン・談)
 年に二度、春の終わりくらいと、冬が始まる少し前頃の時期で半年分の日用品をまとめ買いする為、僕らは皆で町に出る。最初の四年間は僕と母だけで、次男となったテオドールを保護して以降の四年間は三人で買い物に行く様になり、去年の春の終わりに我が家の三男となったアイシャを連れて同年の冬近くに町に行き、一歳歳上のセリンを保護した事でアイシャは三男から四男になった。 僕らが買い物に行く町はいつも違う町だ。 辺境伯に一時的に保護されていた僕、生まれた当初はまだギリギリ貴族だったテオドール、去年までは錬金術師の弟子だったアイシャには身分証があるのだが、スラム育ちだった母には身分証が無い。母さんに『飼ってくれ!』なんて声を掛けてきたセリンもそうだ。魔族に婚約者を惨殺されたせいで闇落ちした錬金術師の実験体だったセリンは試験管の中で作られた『キメラ獣人』である為、そもそも身分証なんてあるはずがなかった。(……保護した時のセリンの体内はそこかしこが壊れ掛けていてボロボロだった。母さんが押し負けて保護し、世界樹からの恵みを得ていなければもうとっくに死んでいただろうな) 連れ帰り、僕がセリンに回復魔法を施した時にポツポツと話してくれた事なので、母さんはあの子が『キメラ獣人』であるとは知らない。多分珍しい色をした『豹の獣人』くらいに思っているだろう。 そんな二人は王都のように身分証が無いと入れない街には行けない。なので身分証がなくても入れ、ある程度の活気があり、品物の買取もしている店がある町を事前に選んでから買い物に出る。毎度違う町に行くのはほぼほぼ老化の止まっている母の為だ。何年経っても若いままとか、『エルフ族』ならば普通でも、母が『ヒューマ族』であるというだけで『バケモノ』扱いになりかねないから。 小さな村では半年分にも及ぶ物資の購入は出来ないから、対象となる町の数は自然と限られてくる。なのでいずれは僕と出会った町に、また向かう日も来るだろうな。 「——母さん!早く早くー」 「いやいや。アイシャが待て、急かすな。あんまり焦らせると母さんが転ぶだろ」 「そんなに先行きたいなら、俺と行こうぜ!アイシャ」 「母さんは焦らずに僕と一緒にいきましょう。ね?」 「……う、うん」と言って、僕が差し出した手を母が取る。先を行くセリンとアイシャはまだ小さい為、かなり賑やかな状態になりながら
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【第8話】運命的な出逢い
 転移魔法を発動させ、レオノーラ一家は世界樹の北側に広がる深淵の森の深部近くに降り立った。 「ちゃんとみんな居る?大丈夫?」  彼女が問い掛けると、四人の子供らはそれぞれが無事を伝えた。 世界樹を中央部に抱くこの一帯には様々なタイプの飛竜やフェンリルなどといった高位種の魔物が数多く棲息している。その中でも最も力強い特殊個体は『聖獣』とも呼ばれ、世界樹を守護していると“古代史”や“伝承”でも語られている。世界樹に近づけば近づく程に強い個体が多くなるが、それらは往々にして“善性”が強く、外界に生息する魔族、ゴブリン、オーク、コボルトやゴルゴンなどといった魔物達とは一線を画す。だからか“強い悪意”を向けず、尚且つ世界樹に近付きさえしなければ、基本的には襲っては来ない。 だがそれは、あくまでも『基本的には』であり、『絶対』では無いので結局は近づかないのが最善だ。 人々の暮らす地域に近づいていくと、『深淵の森』は、徐々に、恵みをもたらす『母なる森』と化ていく。『冒険者』などといった職に着く者達ですら入って来るのは中間地点辺りまでで、こんな深部にまで来るのは彼女達くらいなものだ。世界樹の恵みを存分にその身に染み込ませている彼女らはもう、聖獣達にとっては『世界樹の一部』であるため襲われない。 だがしかし、レオノーラの魔力残滓だけを辿って転移して来た者達であれば、その先の運命は……火を見るよりも明らかである。「……此処まで来そうかい?」 セリンがそう問い掛けながらそっとリトスに近づくと、彼はぶんっと首を横に振った。 「大丈夫。テオとアイシャがわざと魔力を散らして、沢山わかんなくしてくれてたから」とリトスがセリンに小声で伝える。セリンも一応周囲を確認したが……特異な者の気配が一つあるだけで、気配や臭いに過敏なセリンの言う通り、町からの追尾者達の姿は何処にも無かった。「……テオ」 「えぇ。僕も気が付いていますよ」 追尾者の心配はせずに済んでも、別の特異な気配の存在が気になり、セリンがテオドールを呼んだ。気配が漂う位置は低く、どうやらかなり近い。でも周辺には聖獣どころか高位の魔物すらも居ないみたいだ。「——ぅ、ぁぁ」 か細くて小さな声が微かに五人の耳に届く。どうやらすぐ近くに生き物が居る事は間違いないようだ。 声の正体が気になり、それぞれが周りに目を
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