白く染まる悔恨誰もが、名家である土方家が最も重んじるのは釣り合った家柄だと知っている。
だが土方安雄(ひじかた やすお)は、よりにもよって一般人の如月真白(きさらぎ ましろ)に恋をし、彼女でなければ結婚しないつもりだ。
彼女と結婚するため、安雄は兆単位の財産を捨てることも厭わず、真白と十平方メートルの地下室で暮らした。
彼女に少しでも良い生活をさせるため、御曹司である彼は皿洗いの仕事をするしかなく、毎日手が血だらけになるまで洗い続けた。
彼女の無事を願う一心で、彼は千回も地に額をつけ、仏様に彼女の一生の安泰を祈り続けた。
真白は、彼らがこのままずっと、平凡でも幸せに暮らしていけると思っていた。
しかし彼女が重い病に倒れ、命の危機に瀕したとき、一度も頭を下げたことのなかった安雄は土方家に助けを求めた。
その日、安雄が戻ってきたとき、顔色は極度に青白く、立っているのもやっとだったが、それでも彼は彼女に安心させるように微笑んだ。
「真白、もうお金はあるから安心して、きっと治れるんだ」
後になって彼女はようやく、安雄が金を得るために雪の中で百回もの鞭打ちを受けていたことを知った。
そのうえ、安雄は土方家の仕組んだ政略結婚に屈し、金井瑠花(かねい るか)を妻として迎えることを強要されていたのだ。