雪に耐えて梅花麗し出張を予定より早く切り上げた私は、ボーナスの大半をはたいて、妹の冬柴杏里(ふゆしば あんり)がずっと欲しがっていたカバンを買って帰った。
だが、ドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、結婚後の新居となるはずの家で睦み合う、杏里と私の婚約者、富永純次(とみなが じゅんじ)の姿だ。
私は涙を浮かべながら、なぜこんなことをするのかと杏里に問い詰めた。
しかし、彼女には罪悪感の欠片もない。あるのは、邪魔されたことに対する明らかな不快感だけだ。
「お姉ちゃん、どうして泣いてるの?この18年間、ずっと何もかも譲ってくれたじゃない。今回も少しくらい譲ってくれてもいいでしょ?」
純次は私から視線を逸らし、小声で彼女の調子に合わせた。
「つい、魔が差したんだ……杏里ちゃんは君の妹なんだから、今回ばかりは許してやってくれないか」
その瞬間、私の心は完全に凍りついた。
18年にわたる尽くしも、七年間の愛情も、泥のように踏みにじられたのだ。
私は涙を拭い、静かに書斎へ向かうと、二枚の書類を印刷した。一枚は不動産売却の委任状、もう一枚は絶縁状。
――許してほしい?あり得ない。
私はただ、あなたたちという汚れた存在を捨て去るだけだ。