白い結婚を言い渡された聖女ですが、むしろ好都合なので神様に離婚届を出しました

白い結婚を言い渡された聖女ですが、むしろ好都合なので神様に離婚届を出しました

last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-23
Oleh:  夢見叶Baru saja diperbarui
Bahasa: Japanese
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聖女リディアは王太子レオンハルトに『愛さない』と白い結婚を宣言され、別の令嬢を本命に据えた政略婚の飾りにされる。国と女神のためと言いながら利用宣言までされ、心も立場も詰みかけた――が、前世は契約書で戦った法務OL。女神と組んで祝福婚姻契約を改竄し、望めば即離縁・暴言は神前公開・次の伴侶は女神指名の最強条項を仕込む。公開処刑される王太子を尻目に、選ばれたのは彼女を密かに守ってきた腹黒宰相補佐セルジュ。溺愛と自由を手に入れる爽快ざまぁ恋愛譚。

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Bab 1

第1話 神前確認式は静かに燃える

 公正契約大神殿の天井には、過去の「大案件」の名前が刻まれている。

 戦争終結条約、王位継承の調停、神殿と王家の和解。

 その一番端に、空いたままの枠が一つ。

(……たぶん、あそこに今日の案件が増えるんだろうな)

 私は祭壇の前で、他人事みたいに思っていた。

 白金の指輪が、左手の薬指でかすかに浮いている。サイズがわずかに合っていなくて、指を動かすたびに、きゅっと皮膚をこすった。

《指輪、やっぱり半号大きいですねえ》

 頭の内側で、聞き慣れた声が笑う。

 公正契約の女神。今日の式の主催者であり、私の上司であり、この世界で一番、条文にうるさい存在。

(今、そのツッコミいります? 女神様)

《大事ですよ? サイズが合ってない指輪って、だいたいこの案件、最初から微妙ですよってサインですから》

(縁起でもないことを、神様が言わないでください)

 私は口元だけを上げて、外からは分からないように息を吐いた。

 祭壇の背後には、光の板が何枚も重なって浮かんでいる。そこに王太子レオン殿下との婚約契約の条文が、ゆっくりスクロールしていた。

「互いの名誉を守ること。王国と神殿の協力関係を維持すること。聖女としての務めを最優先すること……」

 中央の神官が、祝詞のような調子で読み上げていく。

《はいはい、前置きの綺麗なところですね》

(女神様、声、被ってます)

《聞こえるのは聖女様だけですから。安心してツッコミどうぞ》

(……ツッコまないといけないんですか)

《心の健康のためにどうぞ》

 そんなやり取りをしているあいだも、式は進んでいく。

 高い柱には祈りの絵ではなく、細かな文字が刻み込まれている。壁の装飾も、天井のレリーフも、すべて条文の断片で埋め尽くされていた。

(契約に特化した神殿、というか……巨大な契約書ですね、ここ)

《褒め言葉として受け取っておきます》

 祭壇前の床には、円形の魔法陣ではなく、契約書レイアウトの線が描かれていた。見出しの位置、条文の欄、署名欄。

 私と、その隣に立つレオン殿下は、署名欄にあたる場所に立っている。

「……本日は、王太子殿下と聖女リディア殿との婚約契約の履行状況についても、神前にて確認し――」

 神官が言いかけたところで、隣から低い声が割り込んだ。

「形式通りで構わない。その必要はないだろう」

 レオン殿下の横顔は、絵画のように整っている。

「……殿下。『その必要はない』とは、どの部分についてでしょうか」

 台本にはない問いが、つるりと口からこぼれた。

 私は基本的に、波風を立てない聖女として教育されてきたのに。

「実務の細かい確認などだ。ここは祝福の場だろう」

 レオン殿下は、私ではなく前方を見たまま答えた。

「そうですね。ここは祝福の場です」

「ならば――」

「だからこそ、契約の履行状況は、女神様に正しく報告した方がいいと思います」

 正面を向いたまま、私は微笑みを崩さない。

 殿下の視線が一瞬だけこちらに向き、すぐ前へ戻った。

《……ログ的には、なかなか良いツッコミでした》

(褒めても何も出ませんよ)

《分かってますよ。ログが増えるだけです》

 胸の奥には小さな棘が刺さったままだ。

 今さら、細かい確認は不要。

 三年間の自分の生活を、そう一言で片付けられた気がして。

「聖女殿。……王太子殿下のご負担も大きい。式は円滑に進めたいのだ」

 前列から、王様が穏やかな声を投げてくる。

「もちろん、陛下。私は、形式通りで構いません」

 私は一礼し、定型の言葉を返した。

 それが喉を通る間、掌の中で自分の爪が痛い。

《……これは、あとで教材にしましょうか》

(教材?)

《形式通りで構いませんと言っている人ほど、だいたい限界のログが溜まってるって話です》

(女神様、そういう本気の分析を式の最中にしないでください)

《仕事中なので》

 光の板の端には、私の横顔が映っていた。理想的な角度で首を傾け、微笑む聖女の顔。

 前の世界よりはずっとマシだ、と自分に言い聞かせてきた三年間の気配が、淡く胸に浮かんで消える。

「聖女リディア」

 名前を呼ばれ、私は意識を現在に戻した。

 神官がこちらを向き、厳粛な声で告げる。

「これより、公正契約の女神の御前にて、婚約契約の確認を行う。異議はあるか」

「異議は、ありません」

 反射的にそう言いかけて、私は一瞬だけ言葉を飲み込んだ。

 頭の奥で、女神が「おや」と小さくつぶやく。

《一応、聞きますけどくらいのニュアンスでいいですよ?》

(……女神様。異議、出していいんですか)

《契約確認ですよ? 異議を出してはいけない契約確認って、すでに破綻してませんか》

(なるほど)

 喉の奥で笑いを押し込む。

「……契約内容の確認、よろしくお願いいたします」

 少しだけ言い回しを変えて、私は答えた。

 神官がうなずき、祭壇に向き直る。

《では、形式通り。ログの確認から入りましょうか》

 女神の声が、頭上から本堂全体に染み込むように響いた。

 光の板が一斉に切り替わる。

 王太子婚約契約・履行ログ。

 淡い文字が浮かび上がり、過去三年間の記録が、薄い光の頁になって重なっていく。

「ログ……?」

 前列の重臣の誰かが、小さくつぶやいた。

 隣でレオン殿下が、わずかに眉をひそめる。

「本日の式は、祝福の再確認だけではありません」

 女神の声が、静かに告げる。

《三年間のログをもとに、この契約をどう扱うかを確認する場でもあります》

(どう扱うか……)

《はい。続行するのか、条件を修正するのか、あるいは――》

 女神は、そこで言葉を切った。

「女神よ」

 王が、わずかに前のめりになって声を上げた。

「本日は、内外に向けて婚約を示す儀のはず。……その、ログとやらを読み上げる必要があるのか?」

《ありますよ、陛下》

 女神は即答した。

《契約というのは、祝いたいところだけを拾っていても、公平とは言えませんから》

 その言葉に、広い本堂の空気が、少しだけひやりと変わる。

 王妃が、扇を持つ指先に力を込めたのが、ここからでも分かった。

「では、まず三年前の、婚約締結当日のログから」

 光の板の一枚が、すっと前にせり出す。

 夜の回廊。高い窓から差し込む月光。

 見覚えのある風景が、薄い光の中に浮かび上がる。

(……ここから再生します?)

《もちろん。シリーズ的に、とても大事な一言がありますからね》

(女神様、その言い方やめてください)

《大丈夫です、まだ単語しか出しませんから》

 女神が楽しそうに言う。

 私の胃が、きゅっと縮む。

《お前を――》

 あの夜、彼が口にした、最初の二文字が、頭の内側でくっきりと蘇る。

 でも、光の板の映像は、その瞬間でぷつりと切れた。

《……と、いうところまでが、本日の事前ダイジェストです》

 女神の声が、さらりとオチをつける。

 本堂のあちこちから、安堵とも困惑ともつかない息が漏れた。

「……続きは、読まないのか」

 レオン殿下が、小さく問う。

 彼の声には、わずかな苛立ちと、ほんの少しの不安が混じっていた。

《本番は、もう少し後でまとめて読みましょう。今日はまず、この三年間が契約としてどう扱われるかの全体像からです》

 女神は柔らかくかわす。

《聖女様》

(はい)

《三年前のあの夜のこと、少しだけ振り返っておきますか》

(……ここでですか)

《ええ。国のための契約に自分を合わせ続けた三年間の話ですから》

 女神の声が、ほんの少しだけ真面目になる。

 私は、わずかに顎を引いた。

(分かりました。……では女神様。最初のログから、お願いします)

《承りました。では、あなたの朝にまだタイムカードも、私の声もなかった頃の話から、ゆっくり再生していきましょう》

 天井に刻まれた無数の契約名が、光に縁どられる。

 空いていた最後の枠が、淡く輝いた気がした。

 三年前の、自分の選択。

 それが今日、ここで「私のために終わらせる契約」に変わるかもしれないことを、このときの私は、まだ自覚していなかった。

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