'文豪ストレイドッグス'の与謝野と田口を扱った戦時下の心理的葛藤を描いた作品は、確かにAO3でいくつか見かけます。特に印象的だったのは、与謝野の医療者としての使命感と田口の内面の脆さを対比させた長編です。戦場という極限状態でお互いの弱さを許容し合いながら、少しずつ心を通わせていく過程が繊細に描かれていました。医療テントの中の血の匂いや、銃声が遠くで聞こえる不穏な静けさといった描写が、二人の関係性に深みを加えています。この手のファンフィクションは、キャラクターの背景を深掘りするのに最適で、公式では触れられなかった部分を鮮やかに補完してくれます。
戦時下ロマンスの醍醐味は、平常時とは異なる緊迫感から生まれる感情の爆発にあると思います。与謝野が患者を救えない無力感に
苛まれる夜、田口がそっと肩を貸すシーンなど、小さな仕草に込められた愛情表現が胸に迫りました。生死の狭間だからこそ、些細なことが大きく輝いて見える。そんな普遍的な人間の真実を、この二人を通して学んだ気がします。