ふと古い地図をめくると、街の端に忘れられた路地がいくつも記されていた。僕はその地図を手に、
場末と呼ばれる場所をどう観光資源に変えられるかを考え始めた。
まずは“物語化”だと思う。単に古い建物を並べるのではなく、その場所ごとに小さなストーリーを作る。昔の商いの写真や住人の証言を収集して短い解説をつけるだけで、通りが記憶の保管庫になる。歩くルートをいくつか用意して、テーマ別に回れるようにすれば、散策が目的になる。
次に地元の人たちを巻き込むことを重視する。空き店舗を短期で貸し出して若手が試作販売するポップアップや、職人のワークショップを定期開催すると地域に賑わいが戻る。さらに、映画ロケ地としての魅力を磨くのも手だ。例えば作品の名前を掲げて巡るマップを作れば、’シン・ゴジラ’のようにロケ地巡礼が観光ルートを生むことがある。
最後に持続可能性を考える。観光者を一時的に増やす施策ではなく、地元の収入源や雇用を生む仕組みをつくる。僕は実際に小さな商店と連携してプロモーションを試みたが、最も効果があったのは“地域の誇り”を共有する場を作ることだった。結果として場末が、単なる廃れた場所から訪れる価値のある町へと変わっていった。