脈打つような突進感が物語の心臓部になる作品がある。読んでいる間に全てが前へ進む圧力を感じた経験は何度もあって、『進撃の巨人』はまさにそれを体現している作品だと思う。エレンの突き進む意思は物語を動かす原動力であり、彼の
まっしぐらな行動が世界観をねじ曲げ、他キャラクターの選択や倫理観に決定的な影響を与える。単純な突進だけじゃなく、その結果生まれる葛藤や痛みが物語を厚くしている点が好きだ。
尾を引くように進む群像劇としても興味深い。巨人や壁という外的圧力に対して、キャラクターたちが各々のやり方で突き進む様子は、読み手として感情移入しやすい。時には無謀に見える選択が連鎖的に物語を構築していく感覚は、まっしぐらという言葉が示す勢いと危うさの両方を味わわせてくれる。
最終的に、突き進むことが善か悪かを即断しない構成も好評だ。突進がもたらす光と影を両方描くからこそ、読後にずっしりと余韻が残る。そんな意味でも『進撃の巨人』はまっしぐらの役割を作品全体で担っていると感じる。