耳に残るベースラインが心を掴む曲って、そんな単純な理由だけで何度もリピートしてしまうことがある。自分にとって『
まっしぐら』の中で最も印象的だったのは“フルスロットル・ラン”だ。イントロの刻みとドラムの入れ方が、瞬時にスピード感を作り出して、頭の中で景色が動き出すような感覚になる。メロディがシンプルなのに、細かなシンコペーションやギターの空間処理で厚みを出しているのが上手い。ボーカルは入らないインストトラックだが、歌詞が無くても感情を運んでくる力がある。
過剰な装飾を避けつつも、効果的にビルドアップしていく構成は、劇伴として場面の緊張を高める使い方を想像させる。たとえば『カウボーイビバップ』のようなジャズ的な即興感とは違い、こちらは明快に前へ進む歯車の音が主役だ。個人的には車やレースもののシーンよりも、人が決意して一歩を踏み出す瞬間に流れるとグッと来るタイプだ。
最後のリフレインで少しだけ余韻を残すところも好きだ。派手さに頼らず、聴いた後に身体が動きたくなるような熱さを残す――そういう曲を求めているなら、“フルスロットル・ラン”は特におすすめしたい。