思い返すと、背後に流れる音楽の選曲がいつも気になっていた。劇中で
みなとに関連する旋律が短く挿入される場面は、初見では目立たないが再生回数を重ねると明確にパターン化しているのに気づく。私はそのフレーズが別のテーマ曲の断片を引用していると感じ、同作の時間や記憶に関する伏線だと解釈した。
具体例を挙げると、ある短いピアノの動機が重要な告白シーンや関係性の変化の予兆として繰り返される。これは映画界でよくある手法で、例えば『君の名は。』が時間と記憶の交差を音楽で表現したのと同じ発想だ。みなとの過去が徐々に開示されるごとに、その旋律の扱いが変わっていく点も巧妙で、最終的にメロディが完全に回収される瞬間は伏線回収の快感がある。
音の断片に注目するだけで物語全体の構造が読み解けるのが面白く、音楽がテキストの一部として働いている作品は何度でも発見がある。私はそんな細部を掘るのが好きだ。