最後に、映画『The Talented Mr. Ripley』のガブリエル・ヤレドのスコアを薦めたい。こちらはクラシックとジャズの間を行き来する色合いがあって、イタリアの海辺と都市生活が混ざり合う複雑さを音で描いている。特にテーマのメロディが繰り返される場面では、水辺での人間模様や緊張が音楽を通して浮かび上がる。これら三作はそれぞれ違った手法で“水の都”を音にしていて、聴き比べると表現の幅と深さがよく分かる。
映画音楽に触れてきて、海や運河がそのまま主人公になっているような作品に惹かれる自分がいる。まず真っ先に手に取るのは『The Shape of Water』のサウンドトラックだ。アレクサンドル・デスプラのスコアは、静かな水面の揺らぎと登場人物の内面を同時に照らすような詩的な響きを持っている。楽器編成の細やかさとメロディの柔らかさが、都市というよりは“水そのものの都市感”を作り上げている。
次に取り上げたいのは『The Life Aquatic with Steve Zissou』で、こちらは海洋的なユーモアと哀愁が混ざった独特の音世界が魅力だ。マーク・マザーズボーや劇中での楽曲アレンジが、海に囲まれた共同体や船上生活の音風景を生き生きと描き出す。都市というスケール感とは少し違うが、水と人間の関係性を音で深掘りしたいときに相性がいい。
耳をすませば、音の余白が名曲の輪郭を際立たせる。
僕は長年、映画やゲームのサントラを聴き込んできて、プロの耳が唸るような5曲を選んだ。まず、'Blade Runner'のVangelisによるメインテーマは未来の湿度を音で表現する驚異。続いて、'The Good, the Bad and the Ugly'のEnnio Morriconeが作った"The Ecstasy of Gold"はドラマと高揚を一音で決定づける力がある。
さらに、'Inception'のHans Zimmer作"Time"は単純な反復から深い感情を引き出す技巧が光る。日本からは'千と千尋の神隠し'の"いつも何度でも"が、声とメロディの温度で物語を抱きしめる。最後に、'Shadow of the Colossus'のKow Otani作"The Opened Way"はゲーム音楽が叙事詩になりうることを教えてくれる。どれも聴くたびに新しい発見がある曲だ。