脚本の取り回しが最も印象に残ったのは、登場人物の動機説明が映画側で大きく書き換えられた部分だ。俺は原作で綿密に描かれていた罪悪感や成長のプロセスが、映画では一つの決断シーンに凝縮されてしまったと感じた。原作だと段階的に明かされる裏切りの背景や和解までの心理が、映画版では対話の一場面や象徴的なカットに置き換えられ、人物像がやや平坦になっている。
具体的には、原作に存在した長い回想シークエンスが丸ごとカットされ、その情報は台詞で済ませられたり、映像の断片で示されたりしている。これにより上映時間内で物語の速度は上がるが、感情的な積み重ねが薄れる面もある。さらに、ある重要な犠牲的行動の帰結が映画では可視化され、その救済の描き方が原作より明るくなっている。テーマ的には希望を提示する改変だが、原作の暗い余韻を好む者には違和感が残るだろう。
対比として思い出すのは『もののけ姫』が時に劇場版でテーマを直接提示することで物語の受け取り方が変わった例だ。『
タタリ』の映画化も同様に、説明的にすることで観客層は広がるが、一部の重要な場面の重みは失われがちだと俺は思う。