漫画家たちは読者を巧みに引き込むために、さまざまな心理的なテクニックを駆使している。例えば、クライマックス直前で突然話を切り上げる『クロスカット』は古典的な手法だ。『進撃の巨人』の諫山創は、戦闘シーンの最中に全く別のキャラクターのエピソードを挿入することで、読者の苛立ちを煽りつつもストーリーの深みを増すという離れ業を見せた。
もう一つの定番は『サイレントコマ』の活用。『ONE PIECE』のワンピース船が初めて空を飛ぶシーンでは、セリフを一切排した見開きページの衝撃で、読者の興奮を最大限に高めた。背景を真っ白にしたり、逆にベタ塗りにすることで、感情の昂りを視覚的に表現するのも効果的だ。
伏線の張り方にも工夫がある。『DEATH NOTE』では些細な描写が後の大事件に繋がることが多く、読者は些細なコマにも敏感になる。一方で『チェンソーマン』の藤本樹は、重要な伏線をあえて荒唐無稽なギャグの中に紛れ込ませることで、予測不能性を演出している。
週刊連載作品によく見られるのが『次週休載』という最終手段。これが重大な展開の直後に告知されると、ファンサイトはもちろんSNSも大騒ぎになる。ただし、この手法は使いすぎると読者の信頼を損ねかねないので、バランス感覚が問われるところだ。