焦らしのテクニックが巧みな作品といえば、『
ハーレクイン』シリーズの恋愛小説がすぐに思い浮かぶ。登場人物たちの感情が交錯する瞬間を長く引き延ばすことで、読者の期待を巧妙に操る。特に主人公同士がお互いの本心をなかなか口にしない場面では、ページをめくる手が止まらなくなる。
スリラージャンルでは『Gone Girl』が圧巻の焦らしを見せる。あの有名なプロットツイストに向かうまでの伏線の張り方と、真実が少しずつ明らかになる構成は、まさに焦らしの芸術と呼べる。読み進めるほどに、次の展開が気になって仕方なくなる仕掛けが随所に散りばめられている。
日本のライトノベルでは『ようこそ
実力至上主義の教室へ』が、主人公の真の能力を最後まで明かさない手法で読者を惹きつける。学校を舞台にした日常の中に潜む駆け引きや策略が、じわじわと核心に近づいていく過程がたまらない。特にクライマックスに向かう途中で散りばめられたヒントが、全体像が見える直前で巧妙に遮られるあの感じは、何度読んでもゾクゾクする。