テクニックとしては、言葉遣いや文体の切り替えも有効だ。場面が“夢側”に傾くときに語彙を少し曖昧にしたり、短い断片的な文を増やすことで浮遊感を生み出すことができる。一方で世界の固有ルールは、登場人物の小さな失敗や発見の結果として示すのが安全で説得力がある。実例を挙げると、『House of Leaves』のような実験的な手法は注意深く扱えば強力だが、読む側の負担を考慮して節度を保つべきだと思う。最後に、読者に少しの余地を残すこと──曖昧さを完全に解決させないことで、夢の余韻が長く続くようにしている。
細部の選び方も重要で、抽象的な形容を濫用しないことを心がけている。特異なオブジェクトや反復されるモチーフを一つ二つ置いて、その意味を段階的に明かす手法が好きだ。『Alice's Adventures in Wonderland』のように奇妙な出来事を次々に起こす作品から学んだのは、矛盾や不条理そのものを説明するのではなく、登場人物の心理と結びつけることで読者が納得するということだ。対照的に、視覚的に豊かな描写が効果的な場面では、色や質感に重心を置いて読者の想像にスペースを残す。語りのリズムを変え、短い文で感覚を切り取ったり、長めの文章で世界の流れを感じさせたりすることで、夢の揺らぎを文章自体で表現できる。