Masuk子供の姿で異世界転生をしてきた主人公が初期設定でチート能力を手に入れ仲間と出会いと別れを繰り返し恋愛や成長をしていく物語です。 最強チート少年となった彼は、森の中で試行錯誤しながら、魔法やアイテムを駆使してサバイバル生活を開始する――! 過酷だけどちょっぴり自由な異世界。少年は果たしてこの世界で生き抜けるのか? 規格外の力で挑む、異世界リスタートの冒険物語!
Lihat lebih banyakブロッサムも優雅な仕草で頷く。彼女の穏やかな表情からは不安の色は見えなかった。
「ご一緒しますわ」
ティナは皆の様子を見て、少し呆れたような顔をしながらも、すぐに了承してくれた。彼女はそらの無謀さを理解しつつも、見捨てることができないのだろう。
「分かりましたよ! ご一緒致します」
ティナのため息交じりの返事に、皆の顔に安堵と喜びが広がった。
♢湖畔でのひととき依頼のあった村の近くに転移し、家畜を放牧している牧草地へとやって来た。空はよく晴れ、牧草の青い匂いが風に乗って運ばれてくる。ワイバーンはこの辺りで家畜を拐っていくらしい。
「この辺りで、隠れて待ってれば現れるんじゃないかな?」
そらの、のんびりとした提案に、ティナはすぐにワイバーン討伐の難しさを思い出し、少し困った顔をした。
「普通の魔法は、なかなか当たりませんよ。ワイバーンは空を飛んでいます。距離がありますから避けられてしまいますし。距離があるので、魔法の威力も落ちてしまいます」
ティナが冷静に問題点を指摘するが、そらは別のことを考えていた。今回は、何かのアニメでやっていた黄色い円盤を投げて、切断する攻撃を試してみたいだけだったりする。射撃だけだとつまらないし……。魔力に光魔法を纏わせて、超高速回転をさせて切断をする。そらの心はすでに、新たな魔法攻撃の想像と遊びへと向かっていた。
「大丈夫だよ」
そらはティナの心配を軽く受け流し、探索魔法で周囲を探ってみた。遠い空の微かな気配。もう少ししたら、こっちを通るはずだ。そらは頭の中で、光の円盤が飛翔し、目標を正確に捉える軌道をイメージしておく……そろそろかな?
そらの手元に淡い黄色の光の円盤が現れ、それをワイバーン目掛けて投げた。円盤は空気抵抗を無視したかのように加速し、追尾魔法が追加してあるので、円盤はワイバーンを追い、その首を正確に切断した。
ワイバーンの巨体が悲鳴を上げる間もなく、遥か遠くの空から地面へと墜落する。
うん。これじゃ、射撃と同じでつまらないよな~。そらはつまらなそうに呟いた。一応、墜落したワイバーンから魔石を回収しておく。
「エルも射撃してみれば?」
そらが隣にいるエルに気楽に提案すると、エルは目を大きく輝かせた。
「え? 良いの!?」
「順番に撃ってみれば良いよ」
そらはエル、ティナ、ブロッサム、アリアの順番で討伐を試させることにした。
少し……ズルをしよう。ズルと言っても、討伐は格闘技のスポーツじゃない。スキルや魔法を使い、自分に有利に戦えるなら使っても問題ないだろう。さらに言うなら、ほぼ反則級でもある『強制的に魔石の回収をするスキル』を使えば、一瞬で討伐が終わる。
そらは探索魔法で周囲のワイバーンの群れを確認した。手頃な一匹を選び、皆が隠れている場所の近くにある牧草地の茂みに一瞬で転移させた。茂みは深く、ワイバーンの巨体が隠れるのには十分だった。
「ワイバーンが来たよ」
そらの声に皆が臨戦態勢を取る。茂みから獲物が飛び出してくるのを待つ。
これは……もはや”接待ハンティング”ってやつだな……。そらは皆の興奮した様子を見て、内心でそう笑った。
皆が順番に、ワイバーン討伐の練習を繰り返していると、ティナが難しい顔をして、そらに耳打ちするように聞いてきた。彼女は事態の不自然さに気づいている。
「おかしくないですか? こんなに都合良く普通、現れます?」
ワイバーンが途切れることなく、近くに転移させられていることに違和感を覚えているのだろう。
「そんな日もあるんじゃない?」
そらは顔色一つ変えず、ごく自然なことのように答える。
「ギルドに何て報告するんです?」
ティナは追求の手を緩めない。
「ちょうどワイバーンの群れが現れた……って」
「そらさんが行く討伐は必ず群れになっていますよ! おかしいですよ!」
ティナは明らかに不満そうだった。そらの非常識さと嘘を吐く軽やかさに呆れと抗議の感情を滲ませていた。
「じゃあ……ワイバーンの魔石をギルドに一個だけ提出で良い?」
そらが少し譲歩したように提案すると、ティナは腕を組み、しばし考えてから言った。
「そうしてください……でも、まあ……4、5個くらいなら……」
その言葉は躊躇いと妥協を含んでいたが、4、5個という数字がそらの耳に飛び込んできた。
怖いですよ、ティナさん。それに、ワイバーン4、5個って、十分に群れだと思うんですけど。ティナの基準はどこかおかしい。でも、俺を心配して言ってくれてるのは分かってるから、その心遣いが嬉しいんだけどさ。そらは内心で苦笑した。
討伐したワイバーンは大量にあった。そらはその全てを魔法で地中に転移させて証拠隠滅した……というか、そのまま放置すると腐敗して迷惑だろうしな。まあ……放置しても、低級の冒険者が素材集めや食料にしているらしいし、残りは猛獣や獣が食べて土に変えると思うけど。無駄にはならないだろう。
「この前に行った湖に行こうか? 時間があるし」
そらの突然の提案に、アリアは嬉しさのあまり飛び跳ねた。彼女の小さな体が上下に弾む。
「わーい! なのです!」
「この先に、ボクの仲間で家族のような獣人の娘がいますが」 そらが告げると、獣人たちは一斉に警戒したような表情を見せた。彼らの視線に敵意が混じる。「お前が捕らえているのか!?」「捕らえてはいませんよ。保護をして面倒を見ています」 そらは冷静に否定した。「だったら連れてきて証明しろ! 直接、本人から話を聞かせてもらって判断する」 リーダーは言い放った。彼の目は全てを見通そうと鋭く光っている。 そらは彼らの視線を受け止めながら、その場で転移魔法を発動した。一瞬の光と風が渦巻き、フィオを抱きかかえるように連れて戻った。「……なに?」 フィオは魚捕りを中断された不機嫌さを隠すことなく、獣人族の人々に向かって素っ気なく答えた。そりゃそうだ……楽しい遊びを邪魔され、ムッとした表情なのだから。彼女はそらにしがみつき、不審な集団を警戒している。 フィオの姿を見るなり、獣人たちは一斉に彼女に詰め寄ってきた。その表情には焦りと心配がにじんでいる。「大丈夫か? 辛い思いをしてないか? 助けに来たぞ」 大勢の大人に囲まれ、剣幕に押されたフィオは少し怯えたようだった。彼女はすぐにそらの後ろに隠れ、そらの服の裾をぎゅっと掴んだ。「つらくない。だいじょうぶ! ほっといて」 震える声だったが、フィオの言葉は力強かった。その瞳には自分を心配するどころか利用しようとした者への拒絶が宿っている。「本当か?」 リーダーの獣人が訝しげに問い返す。「こわい。このひと……」 フィオはそらの服の裾をさらに強く掴んだ。彼女の純粋な怯えと、そらに対する信頼の深さが、獣人たちに伝わったようだ。獣人たちは、その様子を見て、ようやく納得した。フィオが望んでいないことを理解したのだ。「本当みたいだな。悪かった! 近くに来ることがあれば村に寄ってくれ。人間が来たことはないが、獣人の娘を大切に保護してくれているお前は歓迎しよう」 リーダーの獣人は深く頭を下げ、謝罪と感謝の言葉を述べた。 仲間思いだけど、やっていることは危ないな……。助け出されたとしても、魔物や魔獣もいるこんな山奥で解放されてもなぁ……。そらは彼らの状況を察し、少し複雑な心境になった。「俺たちは帰るが、その娘を頼んだぞ」「うん。任せて!」 そらは力強く頷いた。 獣人族の集団が名残惜しそうにこちらを振り返りながら、森
皆が思い思いの場所で寛げるように、テーブルと椅子を何箇所かに作って設置した。川の近く、テントの近く、焚き火の近くにも快適な椅子を設置した。これで、誰もが、自分の好きな場所で景色を楽しんだり、語り合ったりできる空間が完成した。 そらが川の近くに設置した椅子に座って、流れる水を眺めていると、ブロッサムが静かに来て隣に座った。彼女は普段の優雅さの中に、どこか言いたそうな感じが伝わってきた。「どうしたの、ブロッサム?」 そらが声をかけると、ブロッサムは少し間を置いて、落ち着いた声で切り出した。「このキャンプが終わったら、私は家に帰ろうかと思いますの」 ブロッサムの言葉に、そらは内心で少し驚いた。彼女が旅を続ける理由は曖昧なままだったからだ。「家に問題は、なかったんだ?」 だからさっきティナと一緒にいる時に隣に座ってきたのか。そらは彼女の意図を今、ようやく理解した。「はい。他の領地にお茶会に誘われまして、その移動中に盗賊に襲われ、拐われてしまいましたの」 ブロッサムは一点を見つめながら静かに語り始めた。その口調には深い溜息が含まれているように感じられた。「そうだったんだ。家に問題があって帰らないのかと思ってたよ」 そらは相槌を打ち、ブロッサムの話の続きを促す。「じつは私は……貴族でしたの。貴族の暮らしが窮屈で退屈で、逃げ出したいと思っていましたの」(うん。知ってた) そらは心の中で同意する。ブロッサムの立ち振る舞いや言葉遣いは、平民のそれではなかった。「身なりや仕草と言葉遣いで、なんとなく分かっていたよ」 そらが正直に答えると、ブロッサムは丸い目を見開いて、少し驚いたようだ。「え? そうだったのですか!」 彼女は自分の秘密が既に見破られていたことに気付き、戸惑いの表情を浮かべた。「しばらくは、ここに滞在するつもりだから、帰りたくなったら言ってね」 そらはブロッサムの決意を尊重し、優しく声をかけた。「では、皆さんに挨拶をして、明日にでも帰りますわ」 ブロッサムは少し寂しそうに俯き加減で言った。自由な旅が終わることへの名残惜しさを感じているようだった。「うん。分かった。寂しくなるよ」(急に家族が恋しくなったのかな……?) そらは彼女の心境を慮る。「また、お邪魔しに来ても良いでしょうか?」 ブロッサムがそらを見上げ、少し不安
一応、「ドキドキを味わいたいんだよ」と説明をした。獲物が罠にかかっているかの期待感を込めて。「ドキドキですか? 私、今ドキドキしてますよ?」 ティナはそらを真っ直ぐに見つめ、少し顔を赤らめながら言った。 いや、違うから! そのドキドキではないよ、ティナさん。え? ドキドキしちゃってるの? 俺も別の意味でドキドキだよ。ティナの可愛い告白めいた言葉に心臓が跳ねる。でも、今求めているのは、このドキドキではないよ! どうやって誤魔化そうか……誤魔化す必要はないんだけど。「ドキドキが分かってくれた?」 そらは微妙な空気を流すまいと努めて明るく尋ねた。「はい……」 ティナはまだ顔がほんのり赤いまま、控えめに頷いた。「明日が楽しみだなー! 獲物が捕れてれば良いなぁ」 そらは話題を強引に罠に戻した。「明日が楽しみですね。私は毎日が楽しみですよ」 獲物は俺ですか!? ティナさん。彼女の満面の笑みに、そらは冷や汗をかく。「皆のところに、戻ろうか!」「はい」 ティナの視線から逃れるように、そらは早足でキャンプ地へと向かった。無事に合流できそうだ。 皆が水辺に合流すると、フィオが目を輝かせながら駆け寄ってきた。浅瀬に転移させた魚を、彼女は小さな手で夢中になってたくさん捕まえていた。近くのバケツには元気に跳ねる魚が何匹も入っている。「お魚、いっぱいー♪」 フィオは嬉しそうに、そらが捕まえた魚を指さした。水で濡れた顔に無邪気な笑顔が弾けている。「後で焼いて食べようね」 そらが優しく言うと、フィオは期待に満ちた声で繰り返した。「やいて、たべるぅー」 フィオの無邪気な笑顔に、そらの顔も自然と緩む。皆で食べる美味しい魚の味を想像した。♢露天風呂と別れの予感 そらはさらに快適な空間を提供するため、川辺の少し奥まった場所に露天風呂を作り始めた。魔法で自然の岩を組み上げ、深すぎない浴槽を形作る。湯気を上げるほどの温度に調整したお湯を満たした。木々の緑と流れる川が見える景色は最高で、川で遊んだ後に温まれて気持ちが良いだろう。のぞき見防止の結界も完璧に張ってあって、プライバシーも安全も確保されている。 そらの言葉を聞くやいなや、エルは一瞬の躊躇もなく身につけていた下着を脱ぎ捨てて、そのまま露天風呂に勢いよく飛び込んだ。バシャッと大きな水音が響く。恥じらいが無
そうして安全を確保すると、そらは指を鳴らした。とりあえず休める場所として、白くて大きなテントをイメージして一瞬で作り出し、中にはふわふわのベッドも用意した。さらに屋外には、機能的な屋根付きのキッチンと、異次元収納魔法が施された食材保管庫を作り出した。近くには石を積み重ねたような、立派なかまども作って火を焚いた。パチパチという音と共に、薪が燃える香ばしい匂いが漂う。 一通りの準備を終え、そらはステフに目配せをした。「あとはステフに任せたよ」「は、はいっ」 ステフは任されて嬉しそうに、きゅっと口元を引き締めた。彼女は早速、テキパキとした手つきで昼食の下ごしらえを始めた。これから始まるキャンプ生活に、皆の顔に期待と喜びの色が満ちていくのを感じた。 フィオが遊べるように、川の一部を魔法で浅くするように流れを変え、小さな水たまりのような浅瀬を作り、そこに魚を数匹転移させた。魚はキラキラと鱗を輝かせながら泳ぎ回る。(うん、よし!)「私は、何をすれば良いですか?」 ティナがそらの隣に立ち、不安げな声で尋ねてきた。「自由時間だよ?」「自由時間って何するのですか?」 ん? ああ、毎日依頼を受けていないと不安になるって言ってたし……「自由」という感覚が理解できなくて不安なのかな? ティナは真面目だから、依頼を受けていない時は魔法の練習でもしていそうだ。「好きなことを、すれば良いんじゃないのかな?」 ティナは少し考え込むように首をかしげ、眉を寄せた悩んだ表情で逆に聞き返してきた。「……好きなことですか……?」 ティナさんの好きなことを、俺に聞かれても困るんだけど? ティナは、何が好きなんだろう? ティナが遊んでいるところを想像ができないかも。「遊びに行かないの?」「遊ぶより、そらさんの隣に座っていたいので大丈夫ですよ」 ……え!? そんな笑顔で言われると緊張するじゃん。そらは内心でドキリとした。と内心思っていると、ブロッサムも優雅な仕草でそらの隣に座ってきた。「わたしも、ご一緒しますわ」 ブロッサムはティナとそらの間に静かに腰を下ろし、穏やかな声で言った。「ブロッサムも、遊ばなくて良いの?」 そらが少し不思議に思って尋ねると、彼女は余裕のある笑みを浮かべた。「大丈夫ですわ」 ティナとブロッサムが隣に並ぶと、そらは途端に居心地の悪さを感じ