層構造のように提示される起源描写を読むと、筆者がただ一つの“真実”を提示しようとしていないことが鮮やかに伝わってくる。物語の中では古文書、伝承、当事者の断片的な証言、それに地名や遺物といった具体的な手がかりが交互に現れて、読者は断片をつなぎ合わせる探偵のような気分になる。僕はその過程が好きで、矛盾が残る余地を作ることでキャラクターと世界の奥行きを増していると感じる。
次に面白いのは、作者が意図的に語り手の信頼性を揺さぶっている点だ。ある章では英雄譚めいた伝承が誇張され、別の章では冷徹な記録者の視点が事実を剥ぎ取る。こうした多声性は、起源を単なる出来事ではなく“解釈の戦場”として描く効果を持つ。
比較対象として『ベルセルク』に見られるような宿命的な描写と比べると、
マリアヴェルトの起源はより社会的・政治的な仕組みの産物として読む余地がある。最終的に筆者は、起源そのものを完全に固定しないまま、歴史と記憶の関係性を問う余韻を残して終わらせる。個人的には、その曖昧さが物語の魅力だと感じている。