視線の扱いで読者の感情を動かすことが多い。コマの大きさや余白、登場人物の視線をどう配置するかで、
憐憫は自然に湧き上がる。たとえば大きなワイドパネルで孤立した人物を描き、周囲を白く抜くとその人の存在がページ上で浮かび上がる。小さなインセットを重ねることで時間の引き伸ばしが生まれ、読者はその間に感情を噛みしめるようになる。
僕は物語の吐息のような“間”が好きで、セリフを極力省く手法に心を奪われることが何度もあった。『ワンピース』の別れの場面を思い出すと、無言のコマが続くことで喪失感が増幅される。背景を削ぎ落とし、手や表情のクローズアップを連ねるだけで、読者は登場人物の痛みを自分ごとのように感じるようになる。
感情のクレッシェンドはページ全体のリズムで作る。縦長のコマで視線を下に誘導し、最後の横長フルページで解放する――そんな波の作り方を意識するようになったら、憐憫を誘うコマ割りがより自在に見えてくる。